マネジメント

【動画有り】尋常でない今夏の暑さ。エアコンが効いていても、通勤ラッシュ時の電車内では、吹き出す汗と混雑で、ビジネスパーソンたちのストレスもピークに達している。大げさではなく、生命の危機を感じる瞬間すらある。こうした状況を踏まえ、社員を守るべく「猛暑日在宅勤務制度」を導入したのが、大学生向け広告業を営むユーキャンパス。社員が働きやすい制度を次々と取り入れる同社の方針を、渡部陽社長に聞いた。(吉田浩)

 

ユーキャンパスの猛暑日在宅勤務制度とは

渡部陽・ユーキャンパス社長

 

 まず、2015年8月より導入された制度の概要は以下の通りである。

1.天気予報を元に東京の最高気温が35度を超える猛暑日を在宅勤務対象日とする。
  対象日はフレックス制度は機能せず、9時半~18時半を定時とする。
2.気が付いた人がサークルアップ(*大学団体専用のアプリ)で気象庁のURLを貼り付けて、在宅勤務制度対象日の発信をする。
3.原則は前日夜の連絡を推奨するが、深夜の連絡は迷惑なので、期限は当日の朝7時までとする。当日朝7時を過ぎても誰からも発信がない場合は、猛暑日になっても出社を義務とする。
4.自宅にPCやSkypeをできる環境がない場合は、前日にPCを自宅に持って帰る。その環境が作れない場合は、通常(9時半)出社。
5.始業時間となったら、有給を除く全員でSkypeミーティング。
  アポイント等は通常通りこなす。電話営業は会社の携帯から。
6.終業10分前の18時20分になったらメールにて報連相。

 現在、7~9月の3カ月間にわたり上記制度が導入されている。

 

ユーキャンパスが社員に優しい勤務制度を導入した経緯

 

 ユーキャンパスではもともと、大雪の日を対象に在宅勤務制度を導入していた。制度導入の経緯について渡部社長はこう語る。

 「以前、大雪の日に社内メールで遅刻や自宅に帰れないといった報告が相次ぎ、その時間が無駄だなと思ったんです。弊社の社風は『休みは多く残業は少なく』なので、自宅で仕事ができて、効率を高められればいいなと」

 8人いる社員は、渡部社長以外は全員営業職で外回り中心。経理や人事などのバックオフィス業務は渡部氏自ら行う。在宅勤務をはじめとするテレワークは、働き方改革で大企業を中心に導入が進んでいるが、経営に余裕がない中小企業ではなかなか進んでいないのが実情。ユーキャンパスでは、少数精鋭で勤怠管理がしやすい利点を生かし、社員に優しい働き方を積極的に導入している。

 猛暑日在宅勤務制度を導入した効果は、意外なところにも現れているという。

 「たとえば、今年入ったばかりの新人は、上司が隣にいないことでプレッシャーが減ってアポイントが多く取れたりしています(笑)。また、通常は共有カレンダーにスケジュールを書き込んでも、あまり他の人のことは見ていないものですが、猛暑日には細かく何時から何時まで何をするということを細かく記入するようになったため、結果的に仕事の効率が上がっています」

 加えて、社員から最も評判が良いのが2015年から導入している「疑似フレックスタイム制度」だ。もともと恒久的な遅刻防止のために採用された制度で、事前申請しなくても前後30分出社時間をずらせる仕組み。出社時間が30分遅れたら退社時間をそのぶん後ろ倒しに、逆に30分早ければそのぶん早く退社してOKだという。

 「仮に遅刻の理由が寝坊だったとしても、それを報告するのも嫌だし報告を受けるのも時間の無駄ですよね。それなら、申告しなくても自分で労働時間を管理したら良いんじゃないかと」

「時給換算なら電通よりも高い会社」を標榜する渡部氏は、当初は労働時間に対する給与面の待遇を良くすれば、人が辞めないと考えていた。ところが、退職者が相次いだ時期があり、「条件が良くても居心地が悪ければ人が定着しない」ということに気付いたという。

 「おそらく仕事の効率の良さを強調しすぎて、それが逆にプレッシャーになっていたのではないかと思います。そこから、営業ノルマを最初の1年間は半分にしたり、同じ上司とばかり一緒では負担になるので月替わりで上司を交代させたり、いろいろとやり方を工夫しました。社長の自分以外は、基本的にフラットな組織にしています」

 

ユーキャンパスの起業の経緯と現在の業務は

 

 社員に優しい制度を次々に導入するのは、業務の性質上、大学生との接点が多く若者の声を日々聞く機会があることも無関係ではない。渡部氏が起業したのは2001年。旅行会社で大学生向けに合宿所のあっせん業務を担当していた経験から、学生のデータベースを活かした事業を行いたいと考えたのが起業の動機だ。

 当時はITベンチャーブームの真っ盛り。当初は大学生のコミュニティサイト運営を手掛けようと考えたが、大学側からキャンパス内での営業許可を得るのが難しく、大学生協に学生向け広告パンフレットなどのラックを置かせてもらうところからスタート。ITではなく、リアルメディアが業務の中心となった。

 ウェブ関連では学生のたまり場のようなサイトを構築したが、個人情報保護法の影響や、ミクシィをはじめとするSNSが活況を呈してきたこともあり、伸び悩んでいた。そこで、2013年に電通が大学サークル向けに立ち上げたアプリ「サークルアップ」に合流する形で現在は展開している。

 サークルアップは、ユーザーが獲得したポイントを換金してサークル活動の運営費にしたり、イベントのチケットなどに変換できるようになっている。企業側は学生を対象としたマーケティングツールとして活用するほか、採用活動、ブランディングなどに役立てているという。

大 学生向けの広告ビジネスは、たとえば卒業シーズンなら旅行、就職シーズンなら採用、春先であれば金融機関の口座開設の案内やアルバイト情報など、時期によって安定的な広告収益が見込めるのが強みだ。こうした事情も、社員の労働条件をフレキシブルに改善できるだけの余力をもたらしている。

 

ユーキャンパスが今後導入する社内制度と勤務体制

 

 今後の課題として渡部氏が挙げるのが、社員のキャリアパスをしっかり作ることだという。

 「若い人たちは、いつまでこの仕事をやるんだろうとか、ウチみたいな専門職集団だとつぶしが効かないのではないかとか、働きながらも漠然とした不安を抱えがちです。そこで、別会社を作ってアプリ系事業と大学生向けマーケティングは30代くらいまでに担当してもらって、40代以降はそれらの役員にならない限り、ユーキャンパス本体でB to Bの仕事に従事してもらうようにしたいと考えています」

 別会社での勤務と言えば、ともすればネガティブなイメージがあるが、年齢で区切ってグループ会社へ転籍してもらうことで、社員にステップアップしてほしいと語る渡部氏。

 「私もずっと大学生たちとお酒を飲むのはキツイですから(笑)。自分の身の置き所も踏まえて、年齢を見合った人たちと商談できるような環境を整えていきたいと思います」

 

 

【マネジメント】の記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

 企業経営者にとって「理念」や「志」が大事とはよく言われるものの、今一つピンと来ない向きも多いのではないだろうか。成功した経営者がいくら精神面の重要性を説いても、日々の現実と格闘している経営者にとっては、ただの綺麗ごとに聞こえてしまうかもしれない。 それでも、ビジネスを成功させるために最も大切なのは「志」だと…

立志財団

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年3月号
[特集] 令和女史のリーダー哲学
  • ・元谷芙美子(アパホテル社長)
  • ・石黒不二代(ネットイヤーグループ社長)
  • ・小巻亜矢(サンリオエンターテイメント社長)
  • ・石渡美奈(ホッピービバレッジ社長)
  • ・戸田泰子(理化電子社長)
  • ・吉本新喜劇で初の女性座長は「イキらず、驕らず、高ぶらず」の支えるリーダー
  • ・敏腕ヘッドハンターが語る リーダーに求められる力は使命感に裏付けられた勇気
  • ・本と映画に学ぶ女史たちの生き様
[Special Interview]

 橋本聖子(女性活躍・東京五輪・男女共同参画担当大臣)

 女性が輝く新時代へ 政治家もOne Team

[NEWS REPORT]

◆CESでコンセプトカーを発表 ソニーが自動車メーカーになる日

◆アマゾンと提携したライフ 新規顧客獲得は成功するのか

◆ゴーン被告逃亡の影響は? 内田誠・日産新社長の前途

◆血液によるがん診断で日本の医療費は高騰する

[特集2]

 スタートアップ!関西

 日本の起業家たちが関西に注目する理由

ページ上部へ戻る