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成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

北河千尋氏プロフィール

(きたがわ・ちひろ)愛知県出身。日本企業勤務時代にハワイ移住を決意。ワシントンDCで美術を学んだ後、ハワイで翻訳、通訳の仕事に就く。その後、PR会社でセールスを担当した経験を活かして独立。現地企業や日本企業をクライアントに持つ広告会社の代表として活躍。

北河千尋氏がハワイに移住、仕事をするようになった経緯

 

ワシントンDCからハワイに移住、翻訳の仕事に携わる

イゲット:千尋さんがハワイに住むようになったきっかけと経緯を教えてください。

北河:日本で某企業に勤めていたとき、サーフィンをしにハワイへきたんですが、その時に「ここに住むな」って思ったのがきっかけです。それで、帰国してから英語を勉強して、段取りを考えました。

アメリカのお洋服やサーフボードなどを輸入している企業に日本で勤め、買い付けでハワイに来るようになりました。時期を見計らい大学に入ろうとも思っていたので、お金を貯めて留学ビザを取りました。

イゲット:語学学校でしょうか?

北河:語学学校でビザを取って、ワシントンDCの美術大学に入りました。本当はニューヨークに行こうと思っていましたが、ハワイで仲の良かったローカルの女の子が当時ハレクラニホテルで働いていて、仕事の都合でワシントンDCにトランスファーになったんです。彼女が「千尋、ワシントンDCにおいでよ、ニューヨークに近いから、一緒に住んで通えばいいじゃん」と言われたのがきっかけです。

イゲット:それで美術の勉強をして美大に行ったのですか?

北河:美術の勉強をしていたんですけど、学生結婚をしました。

イゲット:ワシントンDCで結婚したのですね。

北河:1人目の子供はワシントンDCで生まれているんです。子供を育てるのはハワイと決めていました。

イゲット: ワシントンDCにはしばらくいたのですか?

北河:3年くらいました。ハワイに来て仕事をしようと思ったのですが、2人目を妊娠していて、下の子が1歳半くらいになるまで待ってから仕事を始めました。

イゲット:最初ハワイでどんな仕事をしていたのですか?

北河:翻訳とか通訳とか。弁護士のクリスティーン久保田さんのところで翻訳をやっていました。

でもやっぱりセールスができるから、それを使わないともったいないかなと思ったんです。

ハワイのPR会社でセールスの仕事を担当

北河:ある日本人男性が始めたばかりのPR会社に入りました。彼はPRの仕事の経験が無く1人で経営していて、そこへ私が1人目の社員でセールスとして入社しました。

イゲット:独立したのは26年前になるのでしょうか?

北河: そうです。独立のきっかけは、日本人男性の社長が、女性社員の子供が体調を崩すと苦言を言う人だったこと。もう1つは、そのころ社長が日本人男性を雇ったのですが、私の倍くらいのお給料だったことです。そこで、他の会社を探そうと思っていたところ、クライアントから「あなただからサインをしたのに、辞めるんだったら責任とって自分で始めて頂戴」と言われました。クライアントにプッシュされて独立したというのが経緯です。

 

ハワイにおけるPRという仕事と経営のポイント

 

独立後1番最初に携わったPRの仕事は航空会社のキャンペーン

イゲット:クライアントはどのような企業だったのでしょうか?

北河:ローカルの企業で、その後、日本の企業からもこちらでのコーディネーション依頼を受けて広がっていきました。

イゲット:コーディネーションってどんな仕事をするのですか?

北河:1番最初にきたコーディネーションは、航空会社のキャンペーンです。取材などをコーディネーション、手伝ってくれと言われました。デザインはフリーランスの人に頼んでいましたし、私は当時1人でやっていたため他の会社を紹介しようとしたのですが、日本のクライアントが、「千尋ちゃんに頼みたいんだよ、千尋ちゃんが人雇えば良いじゃん」と。

イゲット:最近はどういう依頼が多いのですか?

北河:イベントが多いですね。グランドオープニングのイベントとか、周年のイベントなどです。

会社によって違うのですが、基本的にリリース出すときは、新聞記者が書くような書き方でメディアに送ると、そのままコピペして使ってもらえるからそれでやっていました。でも、日本の企業は、「こういうものが出ましたのでお願いします」みたいな、企業側からのご挨拶みたいな形をよく使います。それも良いのですが、取り上げられやすいのは第三者が見て、書いているような形式のものですね。

業種や職種によって異なるPRの仕方 

イゲット:日本企業とローカル企業のクライアント比率はどのくらいなのですか?

北河:半々くらいですが、ローカルの方が多いですかね。

イゲット:業種や職種によってもPRの仕方は変わるんでしょうか?

北河:多少変わりますね。レストランならこうしよう、アクティビティならこうしよう、という感じで。

イゲット:アクティビティとは?

北河:アクティビティというのは、マーケティングの人たちと話しあって進めていくスタイルです。うちはメディアに記事を書いて貰えるよう、いろんな所に働きかけます。

イゲット:日本のメディアに向けてということでしょうか?

北河:クライアントによっては、日本のメディア向けのみのこともありますし、日本語と英語の両方のときもあります。日本市場向けと、ハワイの日本人メディア向けの両方ともやっていますので。

イゲット:仕事で大変だったことはありますか?

北河:広告費を踏み倒して夜逃げされたことがあります。そこは結構有名なお店で、4店舗か5店舗を運営していたのに、一気に閉めて夜逃げしたんです。10年後、ほとぼりが冷めたころに戻ってきて、「きみのところのPRが凄く良いって聞いたんだけど、頼めるかな」って。「あなたたちには、何万ドルか、踏み倒されているので、それを払ってくれなければできない」と言うと、「いやあの会社はもう無いからもうできない」と。娘の名義か何かで他の店舗やっているらしいのですが、あの時は本当にびっくりしました。

イゲット:また同じ会社にお願いしようと思うところがすごいですね。

北河:私の経営の甘さだったなって思います。でも、それからは気を付けるようになりました。やっぱり支払いを貯めさせないようにすることが大事ですね。1か月支払いがなかったら、次からは出せませんよ、という具合に。

 

ハワイのPR会社経営者として北河千尋氏が意識すること

 

ハワイで頻繁にくる不況に持ちこたえられる会社に

イゲット:御社にはどのようなフィロソフィーがあるのでしょうか?

北河: 「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、国際社会の調和と発展に貢献する」。基本的には京セラ・稲盛和夫さんのところと一緒ですが、ちょっと変えてあります。経営者が自分のためにやっていると誰もついてこないので、経営者が儲けるために従業員を使っているのではなく、従業員のために経営しているということです。

イゲット:スタッフさんにはどんな部分で物心両面の幸福を実現しようとしているのでしょうか。

北河:まず、お給料がちゃんともらえるということ。まだまだですが、なるべく多く支払えるようにしたいです。ただ、ハワイはよく不況が来るので、不況が来た時に持ちこたえられる会社にならないといけません。そのために、うちはしっかり資金を貯めておきますよということも先に伝えています。

イゲット:9・11の時はどうされたんですか?

北河:クライアントが広告を出せなくなるし、逃げる人もいました。その他リーマンショック、津波、震災などのときはまず最初にイベントやPR、広告がストップしました。そうした場合、幹部はやっぱり給料を下げざるを得なかったのですが、一生懸命乗り越えました。

 ハワイの環境問題についてクライアントの意識を高める

イゲット:将来の目標や夢はありますか?

北河:やっぱりハワイの環境問題についてでしょうかね。例えばレストランのクライアントには、「絶対に発砲スチロールを使うのはやめてください!PR的にも良くないですよ」と伝えています。「でも安いから」と返されることもありますが、「イメージでダウンですよ。ハワイの環境のことを考えたら使えないでしょう?」と説得します。

イゲット:プラスチックのストローも環境に良くないですよね。

北河:うちのクライアントは早くからストローレスにしていたり、紙のストローを用意していたりします。世の中の環境のためにすることが、結局自分たちのためになるということを伝えて、変えて貰っています。

イゲット:ハワイに住んでいる人達には、ハワイの環境を守る、海をきれいにするといった社会貢献や地域貢献の考えがベースにあって、その上で何か企業として行動しないと消費者に応援されませんよね。

北河:そこに気づいてもらうのも、私たちの役目だと思っています。

ハワイで伸びるのは「聞く耳」のある会社

イゲット:私のイメージだと、千尋さんは静かで、遠くからそれぞれのクライアントさんとの距離感を保ちながら、応援しているという感じで、グイグイいくのとは違う感じでした。

北河:すごく口出しますけどね。「こういうことしましょうよ!」って言ったら「いいね!」って言ってバッと乗ってくれる人達は伸びていきます。例えば店舗のオープニングの時は、その前からお会いして、お店の名前から口出ししますね。「英語圏の人が聞いたらその名前絶対変です」とか。そこでも「いや!もううちはこれなんですよ!」って言う人もいますし。

イゲット 稲盛和夫さんの盛和塾に入っておられると聞きました。

北河:盛和塾の勉強として、週に1冊本を読んで、感想文を書いて、それを送りあうということを塾生同士でやっています。機関誌があって、そこにいろんな塾生の体験発表が書いてあります。稲盛さんの講話も書いてあるので、それを読むと、経営面や失敗談、成功談など、自分に当てはまるところが絶対にあるんですね。

イゲット:生涯勉強という感じですね。良い話を聞けました。これからもハワイのことを応援していってください。

 

(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

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