テクノロジー

食と健康は現代人の大きな関心ごとの1つ。数年前までIT企業に勤務しながら農業の世界に身を投じた、日本パイ技術総合研究所副社長の昆野昌俊氏の話をもとに、化学肥料を使った既存の農業や有機農業の問題点、それらを解決するために同研究所が普及に取り組むπ(パイ)農法について紹介する。(経済界電子版編集部)

情報提供者

昆野昌俊・日本パイ技術総合研究所副社長。
 
 
 
 
昆野昌俊(こんの・まさとし)日本パイ技術総合研究所副社長。1967年東京生まれ1967年東京生まれ。大手システム会社で管理職を10年務める。専門はシステムインフラ管理。在籍中にパイウォーターの世界に魅せられ、2015年に退職。同年、(株)日本パイ技術総合研究所入社。現在、パイシステムと、それを利用した無農薬野菜栽培の普及に努める。

 

 

この記事の監修者

篠浦伸禎・都立駒込病院脳神経外科部長

 

篠浦伸禎(しのうら・のぶさだ)都立駒込病院脳神経外科部長。1958年愛媛県生まれ。1982年東京大学医学部卒業、同年医師免許取得。東京大学医学部付属病院、国立国際医療センター等に脳神経外科医として勤務し、1992年東京大学医学部の医学博士号を取得。シンシナティ大学分子生物学部留学後、都立駒込病院勤務。

 
 

横堀幸一・ひふみ農園赤城オーナー
 
 
 
 
横堀幸一(よこぼり・こういち)1956年、群馬県生まれ。ソフトウェア販売企業勤務などを経て、2010年7月、群馬県赤城山麓に、ひふみ農園赤城をオープン。現在13反(約4千坪)まで拡大。パイウォーターの資材を使った無農薬野菜の栽培と、農法を広めることに取り組んでいる。無農薬野菜である、「ひふみ野菜お任せセット」を販売している。
 
 

 

農業の現状と課題―有機農業の作物は本当に健康的なのか

 

有機農業の問題点はどこにあるか

 現在、農作物の栽培には、化学肥料と呼ばれる、薬品や無機化合物などを含む肥料の使用が主流となっている。化学肥料は効果に速効性があり、成分量も明確で使いやすいといったメリットがある一方、使い過ぎによって土壌が劣化してしまうといった問題点が指摘されている。

 また、土壌の劣化によって作物の害虫に対する抵抗力が弱まるため、これを防ぐために使われる農薬が人体に悪影響を及ぼすとして、しばしば批判の的にもなっている。

 そこで注目されるのが無農薬農法だ。有機農業と混同されがちだが、日本では有機JAS規格に沿って、有機農業においても27種類の農薬が使用可能となっているのが現状。つまり、有機農業=無農薬というわけではない。

 また、有機農業に使われる有機肥料は化学肥料と違って人体に悪影響はないようなイメージが一般的にあるが、昆野氏は次のように語る。

 「有機肥料には牛糞や鶏糞が使われていますが、牛や鳥が食べるエサ自体に成長ホルモンや抗生物質などが入っていて、決して安全とは言えません」

 有機農業が盛んなある地域では、糖尿病や腎臓病の患者が多いというデータも得ており、「これは有機肥料に含まれる硝酸態窒素の影響ではないか」と昆野氏は指摘する。

農業における流通システムの問題点

  化学肥料を使った農法が廃れないもう一つの理由が、農業全体のシステムの問題だ。農業協同組合(JA)は肥料の安定供給や低価格化の名目で推奨する化学肥料を定めている。このため、JAに卸す作物には化学肥料を使い、自家栽培用の作物は無農薬で作る農家もあるという。

 「そういう農家が多いので、たとえば、若者を中心にIターンやUターンで農業を始めようという人が増えていますが、農薬を使わない農法を実践することに対して、心理的、システム的な障壁が高くて難しいんです」と、昆野氏は言う。

 

パイ農法による無農薬農業で課題解決を目指す

 

無農薬農業に取り組むひふみ農園の事例

  こうした農業の問題を解決すべく、新たな農法を実践しているのが、群馬県前橋市にあるひふみ農園赤城だ。同農園では、今から50年以上前に、名古屋大学の山下昭治博士が発見したπ(パイ)ウォーターを使って農業を行っている。

 職と生活習慣病の観点から、パイウォーターを推奨する篠浦伸禎・都立駒込病院脳神経外科部長は、著書でパイウォーターの特徴を以下のように述べている。

 

人間は日々の仕事や生活で活性酸素が発生して身体が酸化し、それが病気につながっていきます。パイウォーターは、この二価三価鉄塩によって人間や動物、植物の酸化してしまった身体を、元の酸化していない状態に戻す還元作用を持っているのです。そのパイウォーターを農業で使うことで、作物の正常な成長や再生能力を促進し、有害イオンや病原菌を阻止し、環境を浄化することにもつながっています。(『現場から始まる医療革命 統合医療の真実』(きれい・ねっと))より抜粋

 

 人間の体内の水分には鉄分が入っており、体内で錆びることはないが、体外に出ると酸化して錆びてしまう。そこで体内と同じ状態の水を人工的に作ることで酸化を防ぎ、生活習慣病の元になる活性酸素を除去する作用を促す、というのがパイウォーターが体に良いとされる根拠だ。

 山下博士はもともと体内の水について研究していたわけではないが、花がどのような条件なら咲くかを調べる研究から、水の中の酸や鉄分のバランスの重要性を発見したという。

 ひふみ農園ではパイウォーターを用いた無農薬、無化学肥料、無畜産系肥料で野菜を育てている。 

 参考までに、ひふみ農園の野菜と、化学肥料を使って育てた野菜の酸化、還元に関する比較データを記す。還元状態が長いほど、生活習慣病の原因となる活性酸素を除去する作用が強いとされる。

ひふみ農園の土

農薬使用の畑とひふみ農園の土の還元力比較(データはひふみ農園提供)

 

 

パイ技術でつくった農業資材を提供する日本パイ技術総合研究所

 この、ひふみ農園での取り組みを支援しているのが、昆野氏が副社長を務める日本パイ技術総合研究所だ。同研究所では、腐葉土や魚粉、液体資材など、パイウォーターの技術をもとにつくられた農業資材を提供。ひふみ農園と土づくりの取り組みをスタートさせて既に8年が経ち、実績を積んでいる。

 当初は苦労することもあったが、今では初年度から野菜作りを成功させるノウハウを得ているとのことだ。化学肥料や農薬を使わない分、生産コストが低くなることも確認できている。

 発見から50年以上経つパイウォーターだが、これまで普及が進まなかったのは、農業システムの問題が大きいからだと昆野氏は言う。また、農家の側も心理的に従来の栽培手法に慣れてしまい、パイ技術を用いた無農薬野菜について説明しても、実際の導入には腰が重いのが実情だ。

 このため、昆野氏らは、生産者に対して健康的で美味しい野菜づくりという原点を見直してもらうための活動を続けている。

パイ農法の導入による農業の6次産業化を後押し

 パイ農法の拡大によって昆野氏らが目指すのが農業の6次産業化だ。

 農作物を作るだけだと、農家は経済的に苦しいのが実情。そこで、パイ技術を導入した農業資材を使って苦労少なく無農薬野菜をつくる方法を広めると同時に、企業による農業分野への進出も促していく。将来は生産者団体を作って、加工食品などの分野への展開も進めるつもりだという。

「現在、約180万人の農業従事者いますが、そのうち6割が65歳以上の高齢者で、10年後にはもっと減っているでしょう。日本の農業が壊れる危機にあるにもかかわらず、参入障壁が高い。だから金と人と社会的信用がある企業に参入してもらい、そこで無農薬農法にチャレンジできる環境が作れないかと考えています」

 と、昆野氏は語る。

野菜セット詰め合わせ

パイ農法で作られた野菜セット詰め合わせ

 

消費者の意識変化も重要に

 

 世界一品質にうるさいと言われる日本の消費者だが、たとえば野菜の形が曲がっていたり、虫食いが少しでもあったりすると買わない。あるいは1円でも安く買いたいという考えの人も相変わらず多い。

 しかしこれからは、健康の観点から本当に目を向けるべきポイントはどこか、という意識を持つ人がもっと増えてくると予想される。化学肥料を使った農業や現在の有機農業の問題点が広く知られるようになり、無農薬農業への関心がさらに高まれば、パイ農法はもっと注目される存在になるかもしれない。

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