文化・ライフ

中小企業向けコンサルタントとしてカリスマ的人気を誇った船井幸雄翁の後を継いだご子息、2代目社長の舩井勝仁さん。同じく弊社創業者・佐藤正忠より事業承継した私。通じ合うものの多い場となりました。

舩井勝仁・船井本社社長プロフィール

(ふない・かつひと)1964年大阪府生まれ。88年船井総合研究所入社、98年常務取締役。金融部門を経て、船井キャピタル、船井情報システムズ代表に就任。2008年船井本社社長就任。勉強会「にんげんクラブ」を主宰。著書多数。

船井幸雄のマネではなく身の丈に合った経営を実践したい

 

佐藤 先日は北海道でお会いできてうれしかったです。あの後、弊社では札幌支局開局30周年記念パーティーを開催し、皆さんのご尽力もあって出席者200人超の華やかな会になりました。

舩井 さすがですね。北海道はバブルの後遺症がまだありますが、私の生まれ故郷の大阪はバブル後、インバウンド効果で景気が戻ってきました。北海道も近い将来、観光事業を軸に景気が戻るとみていますが、御社のようなイベントも地域活性化につながりますよね。

佐藤 そうなればうれしいですね。ところで勝仁社長が船井本社を継がれたのは、「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが自分の役割だ」というご尊父の理念に共感されたからだそうですね。ご尊父の意志を後世に伝えたいという強い思いがあるのですか?

舩井 ガッカリされるかもしれませんが、私が5年間社長をやりながら考えてきたのは、「父が始めたことをいかに終わらせるか」でした。

 流通業界のコンサルタントとしてそれなりの評価を得ていた父が船井総合研究所を退社した後に始めたことは、摩訶不思議な世界を説くものまで含め、多くの人に支持されてきました。

 しかしそれらは父個人の人間性や力量によるところが大きく、私が身の丈を超えて触れていいものでもありません。

 それでも船井総研のアイデンティティ、父の根底にあった考え方は後世に遺したい。義理の弟が熱海の自宅を舩井幸雄記念館「桐の家」に改装し運営しており、父の本の読者や友人が多数来館され、「舩井先生に人生を救われた」と感謝されるのはありがたいことです。

 このように、事業の形でなくても、考え方を遺していけたらいいですね。

佐藤 2代目の役割を果たしていますね。事業承継すると、もっと大きくしなければとか、倒産させてはならないというプレッシャーが生まれます。

 でも大切なことは、時代に即したサイズで事業を継続すること。現代は小サイズでも、名前が残るほうが親孝行になることもあります。

 私も社長になって18年経ちますが、当初は父の経営を引きずっていました。しかし何も変えないことが良いわけではありません。

 それで2011年にスタートしたのが、起業家を発掘・支援する「金の卵発掘プロジェクト」です。経済界の看板に照らしても、これなら父も喜んでくれるだろうと思っています。

舩井 最近は2代目を継がない一族の方も多いものですが、同族にしか継げないDNAもあります。ただし2代目として違う個性で会社を伸ばしていくことも大事。現代の経営に求められるものは昔と違いますし、経済界は誌面やプロジェクト等を通して柔軟に対応されているのは立派だと思います。

 

舩井勝仁氏が2代目社長として取り組みたいこと

 

佐藤 勝仁社長ご自身がこの先やりたいことはありますか?

舩井 「金の卵」と同じで、幸せな次世代を創る人を育てることに貢献したいですね。

 友人が「これからはオタクの時代だ」と言っていました。スティーブ・ジョブズは典型的なベジタリアンで、お風呂にも入らない変わり者でしたが、新しい考え方で世の中に多くの変革を生み出しています。昔のように官僚的な人が権力で組織や人々を引っ張っていく時代は終わりました。変わり者が世の中で活躍できるような考え方を広めていけたらと思っています。

佐藤 ワンマン経営者が上から目線で、あれはダメ、これはダメと注意する時代ではないですしね。キラキラした目で次世代を語る若い人たちを見ていると応援したくなります。

舩井 40代の友人に仕事をお願いすることがあるのですが、お金が尽きると仕事をして、貯まるとすぐに世界に放浪に出てしまう。

 「日本にいてくれないと困るよ」と話すと、「どうしてですか? 今は海外にいてもスカイプやチャットを使って会議はできますよ」と言われ、目からウロコが落ちました。

 確かに海外にいても支障がない。これが現代の若者の働き方なんですよね。

 さらに彼はLCCを乗り継ぎ、バックパッカーが集まる宿に泊まるため、私が同じ行程で海外旅行をする10分の1程度の費用しかかけません。

 私たちの感覚からするとニートや失業者のようですが、そうではない。彼らをもっと積極的に評価してもいいですね。

佐藤 私の社長仲間にも元バックパッカーが何人かいます。海外のさまざまな経験が経営の底力を育んでいるのでしょうね。

舩井 海外に出ると、視野も広がりますしね。経営者はあらゆる物事に臨機応変に対応できなければ務まらないので、視野の広さは重要です。多様な視点や考え方を持つ若い人を受容できる社会にしたいです。

佐藤 そうなると、平均的な人を育てようとする日本の教育制度を変えなければなりませんね。大きな話ですが、私たちの世代がそういう意識を持って、次世代を創る若い人たちのサポーターになりたいですね。

船井勝仁(左)と佐藤有美

船井幸雄氏の写真の前で。

 

似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=佐藤元樹

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