政治・経済

 小沢一郎・自由党代表が表舞台で動き出した。夏の参院選に向けて野党が一つになって戦えるのかが大きなカギだが、小沢氏は国民民主党と国会での電撃的な統一会派に踏み出し、党の合流も視野に入れている。その後目指すのは立憲民主党なども含んだ野党の大結集だ。長く続く安倍1強が生んだ政治課題も多々ある。

 小沢氏は、特にアベノミクスが生んでいる国民の生活不安や、見せかけ外交などに危機感を募らせる。それもこれも、選挙で野党が協力し政権交代させるしか解決の道はなく、その最大のヤマがこの参院選だと決意を固めている。小沢氏が動くと、相変わらず永田町ではネガティブキャンペーンが展開されるが、始動した本意と決意は果たして……。直撃した。聞き手=鈴木哲夫(ジャーナリスト) Photo=幸田 森

 

小沢一郎・自由党代表プロフィール

小沢一郎議員

おざわ・いちろう 1942年生まれ。岩手県出身。慶応義塾大学卒業後、日本大学大学院を経て69年、27歳で衆議院初当選。現在17期目。議院運営委員長、自治大臣、官房副長官、自民党幹事長を歴任。新生党代表幹事、新進党党首、自由党党首、民主党代表、生活の党代表、2016年自由党代表。

 

小沢一郎氏が見る安倍政権の問題点とは

 

安倍外交はなぜ失敗するのか

―― 安倍政権は長期政権の成果として外交を挙げているが。

小沢 安倍首相くらい世界を回った首相はいないんじゃないですか。でも残念ながらそれで結果が出ないっていう首相もまたいない。北朝鮮、中国、ロシア、韓国の問題、どれを取ってみても蚊帳の外。何の成果も挙げられないし相談にも預からない。異常なくらい相手にされていない。

 なのにアメリカのトランプ大統領のノーベル平和賞を推薦したなんて恥ずかしいことですよ。安倍首相は、ただお金を配り、話題と微笑外交で何とかなると思っているのかもしれませんが、世界はそう簡単には信頼しない。

 北方領土問題も、少なくとも4島はポツダム宣言受諾後にソ連が不法に軍事占拠したという事実は変わらないわけだから、そこだけは絶対に認められないし、4島はロシア以前から、日本の領有権というのは事実。とにかくポツダム宣言以後の軍事的不法占拠の状態を認めることになっていいのかということです。ただ、たとえ2島であってもロシアは絶対に返してこない。

―― 安倍首相はアメリカのトランプ大統領との親密さをアピールしているが、日米関係はどうあるべきか。

小沢 日本にとって日米関係は外交の基軸だということは間違いありません。ただ、考えなくてはならないのはトランプ大統領というのは異質の人。アメリカ国内でもそうだし、同盟国やヨーロッパにも損得勘定で喧嘩を売る人。それと親しくなって信頼関係をつくるためにはよほど金儲けさせてやらなくてはダメだろうし、そうしたからって彼は約束を守るかどうか。要するに政治をビジネスと同質的なものとして考えているんでしょう。

 もちろん根底の日米関係は維持しないといけません。トランプ大統領よりも、アメリカを事実上動かしている指導層とのきちんとした信頼関係を築かないとダメだと思います。

―― 議員外交も弱くなってはいないか。かつては日韓関係の悪化などのときに日韓議連が活躍した。

小沢 自民党の議員に、そういう能力を持った人がいるかいないかという以前に、安倍首相が何でもかんでも「俺が、俺が」と自分でやって失敗してしまうんじゃないでしょうか。

 実は、僕はこの前韓国に行ってきました。会ってきたのは向こうの政府の関係者。日韓関係は相当深刻です。今の韓国にとっての最優先事項は南北関係だから、どうしても日韓関係が二の次になる、決して日本を無視しているわけではないと弁明はしていましたけどね。

 ただ、安倍首相と文大統領はいろんな会合の際に、非公式で内々に会っているとも言っていました。でも、文大統領は安倍首相に非常に不快感を持っていると言うんです。なぜかというと、自分の言いたいことを短い時間に一方的に喋って、そのまま別れていると。まずは、先方の主張をじっと聞くぐらいの大きく構えた外交ができないのかということです。

競争原理のみに集中したアベノミクスの間違い

―― アベノミクスについての評価や問題点は?

小沢 完全に失敗したということは事実です。GDPでさえ、統計の数字をいじって作り上げ得意げに喋っていたことが分かりましたしね。国民はその実態を肌身で感じてきたと思いますが、それが実証されたのが統計のごまかし問題です。本当は実質所得も下がっていたということです。アベノミクス、新自由主義と言われる考え方は破綻しています。

 国民所得、実質所得は下がっているから財布の紐がきつくなるのは当たり前。いくら超金融緩和なんてやっても、お金をどれだけ印刷しても、金融機関の中で余っているだけで全然国民には回ってこない。安倍首相は基本的な考え方が間違っているんです。新自由主義というのは、すなわち競争第一主義。競争で勝った者が生き残ればいい、強い者が生き残れば、そのうちその利益も滴り落ちて回っていくということですよね。落ちてきやしないんです。

 今、400兆円以上の企業の貯金があるのに国民所得は下がり続けている。それを見ても競争最優先主義というのは間違いです。新自由主義というのは、実は200年も前の初期資本主義の原理なんです。それで貧富の差が拡大して格差ができて社会全体がおかしくなってしまった。

 だからこれじゃダメだと社会保障を作り、種々のセーフティネットを作りあげて、民主主義として資本主義は生き残ってきたんです。それをまた元に戻すという話だから、格差がどんどん拡大するのは当たり前です。

―― 地方などを取材すると、格差の定着を実感することも多い。

小沢 社会保障では、年金も医療も負担は増やして給付は下げる。雇用は非正規をどんどん大きくする。戸別所得補償などの農林漁業の手当もなしにする。子ども手当もなしにする。基本的に国民生活を支えるための規制や制度を、自由競争の名のもとにどんどんやめてるんです。

 だから、国民の生活は競争にさらされ、からっ風にさらされて寒さに震えてる。この経済政策の大転換をしないと、国民の生活はよくならない。アベノミクスは根本的に間違っていたんです。富の配分の公平を政治は考えるべきだというのが、私の持論です。それを全くなしにして、競争原理にのみに集中したのがアベノミクスの最大の間違いです。

―― 国民はそれをどこまで意識しているか。

小沢 日本の場合は現在は何とか食べているから、他の国に比べるとまだいいのかもしれませんね。アメリカではトランプ大統領が、プア・ホワイトと呼ばれる人たちの支持を集めたからこそ当選した。フランスでは黄色いベストの運動が続いている。理由は、格差がものすごく拡大しているからです。

 マクロン大統領というのは新自由主義者。金融の出身ですから、それに対する反発が強くなってきている。イタリアでもイギリスでも。サッチャー、レーガンに始まった新自由主義的な経済政策は、完全に世界的に破綻してきているんです。それにもかかわらず、日本だけはまだやっている。悲劇ですね。

「国民の生活が第一」は単なるキャッチフレーズではなく政治の基本

小沢一郎氏

「個人の暮らしを安定化させなければ、絶対に景気は良くならない」と語る小沢氏

―― 小沢流の経済政策は?

小沢 個人の収入を増やし、暮らしを安定化させることです。典型的な例で言えば、日本社会の安定と経済の発展は、終身雇用制だという指摘をする人が多くなっている。もちろんプライマイナスはあります。でもやっぱり、生涯ちゃんと働いていけるからこそ、家庭をつくり、子どもを育て頑張っていくということになる。

 今の若い人たちの最大の問題は、まさにその逆であるという現実です。非正規でいつクビになるか分からない。給料も少ない、社会保障もない、これじゃ結婚もできないし、たとえしても子どもをつくれない。暮らしを安定化させなければ、絶対に景気は良くならない。

―― 現政権の働き方改革は、一見非正規の待遇改善のように見えるが、正社員化せず、そのまま非正規を増やせる環境になる恐れもある。

小沢 雇用の問題は、若い人には一番大きいでしょうね。非正規を政府はもっと増やそうというんですから。所詮、大企業の人件費削減の論理なんですよ。企業が一番節約するのは人件費ですが、そんなことをやっていたら若い人たちの人生設計は立たない。社会的に非常に不安定な状況がつくられてきている。だからこそ、個人の暮らし、生活を安定させるために年金も医療もつくり、終身雇用という日本的なものを政治と民間でつくってきたんだけど、みんな取っ払おうとしているわけです。

 僕がずっと言ってきた「国民の生活が第一」というのは単なる選挙のキャッチフレーズじゃない。政治の基本です。仁徳天皇の話に遡れば、「民のかまどから煙がたたない」というのでは、社会は安定しないということです。

 

野党結集の鍵と今後の見通し

 

―― 参院選までカウントダウン。ポイントの野党結集はどうか。

小沢 自民党は公明党と合わせて3分の2を取っていますが、その得票数は増えてないんですよ。大体、1800万〜1900万票前後。ということは、2016年の参議院選挙でも野党の比例票を合わせれば自民党より多い。それなのになぜ、ということです。

 09年の総選挙のときは投票率が70%くらいにまでなって民主党一党だけで3千万票。自民党はそのころからずっと同じぐらいの票しか取れていないんです。自民党は同じ票数しか取れていないのに、それでも選挙に勝てて政権を維持している。つまり、野党がまた一緒になれば、黙っていても勝つんです。

 ただ選挙というのは、自民党に代わるグループがいないとどうしようもない。本当はなくても投票所に来て、何でもいいから野党に入れればいいんだけど、投票する有権者にしてみれば、どうせ政権が変わらないと思えば行かないし、投票率が下がる。票が分散されて、結局自民党が勝つ。このまま行けば野党は絶対勝てません。しかし、逆に一体化すれば絶対勝つ。実に簡単な話なんです。

―― 自由党は国民民主党と会派を組み、今政党としても合流を目指しているが。

小沢 本当なら、野党の第一党が動けばいいんです。僕は、立憲民主党の枝野幸男代表を首班指名しました。枝野代表がみんなで一緒にやろうと言えばみんなそうなるんです。国民の玉木雄一郎代表もそれでいいって言っているんですから。

 でも、今のところ枝野代表は独自路線と言っています。だから、まずはできるところから自由党と国民民主党でまとまろうと。その先にはもちろん立憲民主党とも一緒にということです。選挙が近づけば立憲民主党の中にもみんなで一緒にやるべきという声も上がってくると思いますよ。枝野代表も分かっているんじゃないかな。

 共産党も、もう一歩踏み出してほしいですね。今回の天皇陛下の在位30年の記念式典など出席すればいいのに。イメージが変わるいい機会なんです。野党がみんな変わってインパクトを持って一つになれば、道は開けます。

―― 野党結集への役目は大きい。

小沢 この7月の参議院選挙で、一つの政党に合体させることが難しければ、連帯の「オリーブの木」をつくって、国民が自民党に代わる受け皿が何とかできたようだなというイメージを持ってもらえば、選挙に臨めば圧勝しますよ。

 12年ごとの亥年選挙。地方選挙と一緒だからまさに選挙の年みたいになる。国民の関心も高まる。経済が悪いということなら、なおさらです。だからこそ野党は一体化しないと。何とかしてそれを作り上げようと思っています。

 

剛腕・小沢を感じさせたのは、自由党と国民民主党が合流する動きと同時に発表した、アントニオ猪木参議院議員の国民民主党会派入りだ。マスコミは「立憲民主党との参院での野党会派第一党の数争い」と報じるがそうではない。小沢氏の野党結集の第一歩だったのだ。小沢氏は猪木氏と膝詰めで話して説得した。35万票も獲得する人気の猪木氏は、今後立憲民主党に選挙協力を迫る際、「こんないい候補がこちらにいる。一緒に抱えて戦えばお互いの票の開拓にも底上げにもなる」と示せば立憲が乗って来やすいというわけだ。既に、第二、第三の猪木の説得に当たっているかもしれない。(鈴木哲夫)

 

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