マネジメント

2007年から講談社『モーニング』で連載中のサッカー漫画「GIANT KILLING(ジャイアントキリング)」の主人公は弱小プロサッカーチームETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)の監督。選手の埋もれていた能力を引き出し、チームの意識改革を行いながら成長していくストーリー。プロ社会の厳しい現実や困難を乗り越えた先にある希望を描き、現役プロサッカー選手のみならず、ビジネスマンにもファンが多い。その著者であるツジトモさんに、主人公である達海猛たつみたけし監督に込めたリーダーとしての人との向き合い方、考え方を聞いた。聞き手=古賀寛明 Photo=山内信也

 

ツジトモ氏プロフィール

ツジトモ

(つじとも)1977年北海道生まれ、東京育ち。『GHOST』で『モーニング』(講談社)誌デビュー。2007年より、『GIANT KILLING』連載開始。単行本51巻が発売中。

「ジャイキリ」主人公、達海猛の魅力とは

 

「観察力」が達海猛を生んだ

―― なぜ、監督を主人公に。

ツジトモ じつは、監督を主人公にした企画が既にあり、それを振られたのが始まりです。ちょうどイビチャ・オシム監督が登場して、日本のサッカーも監督によって変わるんだ、という雰囲気が出てきた頃で、企画として純粋に面白いと思いました。

 ただ、サッカーや監督の経験がそもそもなかったので、描くのは難しいかなと思いましたが、原作者もいるならいいかと決めたのです。

 でも、すぐにストーリーはもちろん、設定も何もかも自分でやらなきゃダメだと気付いて(笑)、その日から今日までサッカー漬けの日々が続いています。

―― 主人公の達海監督は選手の迷いに気づき、絶妙のタイミングで気づきを与えたりするのですが、監督のモデルはいますか。

ツジトモ 特定の人物はいないですね。でも、立ち姿や襟を立てるところは、当時、チェルシーで注目を集めていたジョゼ・モウリーニョ監督を参考にしましたし、元カリスマ選手が古巣の監督として戻ってくる設定は、のちに現実になりましたが、ドラガン・ストイコビッチ選手が名古屋グランパスの監督として戻り、チームを強くすると面白いだろうな、というイメージで描いていました。

 ただ、性格的な面のモデルはいないので、自分がこう言われたらうれしいとか、やる気になるといったことを意識しながら描き入れていました。

―― 当初はベテラン選手たちから反発された監督が信頼されるようになった理由はどこにありますか。

ツジトモ 達海がチームの仲間に対して嘘をつかない、選手たちに正直でいるというのはあると思います。

 もちろんゲームでは相手を欺く、出し抜くことが必要ですけど、仲間には自分の気持ちを正直に話しています。そうしないと、ピンチの時に達海という存在が揺らいでしまうのです。

 それは、作者である自分自身も仲間に対し嘘をついて嫌な思いをするくらいなら、情けなくても正直なほうが良いと思っているところもあるんですよね。

 現実のサッカー監督たちも、選手ともっと話したいと思っていても、時間が取れないとか、人数が多くてキリがないといった理由でできないのかもしれませんが、こちらはマンガなので。そういう意味では、選手のこと、周囲の環境のことを達海は誰よりも観察していて、そこが選手から一番信頼される理由だと思います(笑)。

シーズン終盤に向けてチームはどう成長していくのか

―― 観察力の他に達海監督について行こうと思う魅力は。

ツジトモ 人の気持ちに敏感なところでしょうか。夏の合宿シーンで、達海が自分のチームではなく対戦相手の指揮を執るシーンがありますが、似たようなことをJリーグのチームでも行っているようです。

 紅白戦でレギュラー組ではなく、サブ組の指揮を監督が執れば、サブ組にとっては監督へのアピールの場になりますし、レギュラー組には緊張感が生まれる。

 欧州のトップチームでは、控え選手もスターなので、彼らのマネジメントをどうするかが監督のいちばんの難しさらしいですからね。監督はどうしたって、すべての選手に好かれることはないので。僕自身、昔の『モーニング』の編集長が作品を全然載せてくれなかった時に、他所の雑誌に行こうかと思ったことがありましたからね(笑)。

 後はコミュニケーション。例えば達海も怒る時はありますが、怒ったからといって人は変えられないとも思っている。だからこそ、選手によって言い方を変え、その人に合わせたコミュニケーションを考えているのでしょうね。

―― 今後の優勝争いの行方は。

ツジトモ 達海が選手たちを変化させる段階は既に終わって、次のステージに向かってどうチームをまとめ、どう勝負に徹するか、そんな段階にきています。

 シーズンも終盤にさしかかった中で、現実の大変さや組織の厳しさみたいなものは入ってきますが、それよりも「こういう立ち直り方があるよね」、「こういう風にめげないでいたいよね」とか、そういった人々の姿を描きたいですね。

 これからのETUは勝つクラブにならなければならないので、どうしたら弱かった頃に戻らずに済むのか、タイトル争いといった緊張状態をいかに普通の状態としていられるように自分たちでコントロールしていくのか、そこが大事になってきますね。

 サッカーって半分以上が運に左右されると思いますが、残りの部分に、どれだけゲームに臨む準備、努力や思いといったものを込められるかだと思っています。

 それができるようになれば、最後、タイトルを手に入れるにしろ、逃がしてしまうにせよ、選手たちは、成長できるんじゃないでしょうか。

 

【マネジメント】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る