政治・経済

景気の腰折れが懸念される中、4月1日から消費増税が断行される。増税負担を真っ先に被ることになるのは日常性の高い食を中心とした生活必需品であるだけに食品スーパーの動向は注目される。 (聞き手:本誌/大和賢治)

岩崎高治氏の懸念は、客単価の下落

-- 来年4月から消費税が上がります。

岩崎高治・ライフコーポレーション社長

岩崎高治・ライフコーポレーション社長

岩崎 消費増税が売上に与える影響は不確定要素もあるので数字的なものは何とも言えません。ただ、われわれが扱っている商品は生活必需品ですから駆け込み需要はほとんどないと考えています。一方で、導入後は真っ先に節約の対象になる商品を扱っていますので短期的には厳しい局面になると想定しています。ただ、それも前回の税率アップ時のケースから見ても3カ月、長くても半年を経過すれば戻ってくると思っています。また、今回は国、各省庁を挙げて景気浮揚を命題として掲げていますので、希望的観測を含めてそれほど悪くはならないと思います。

-- 客単価の下落も懸念されますが、対応策として必要なことは

岩崎 ここ1年間でかなり進んでいますが、例えば惣菜ではこれまでアウトパックだったものをインストア製造に切り替え、手間ひまかけたおいしい物を提供しています。アウトパックとインストア製造をうまく組み合わせて、出来立て感や味にこだわった商品作りに注力しています。また、夕方の時間帯も強化しています。夕方の人員を増やし製造能力を上げて出来立てを提供する。これを実践した店舗の売上は上がっています。

-- 消費増税に伴い総額表示義務が廃止されます。本体価格と税額が併記される外税方式を導入しますが、これには賛否両論ありますね。消費者に値上げしたような印象を持たれることを敬遠したのですか。

岩崎 そういう面があることは否定しません。しかし一番大事な点は、日本では消費税導入後、しばらくは外税方式だった訳で、そういう意味では、元のあるべき姿に戻すということです。お客さまに本体価格を表示し、商品そのものの価値と税額をしっかり認識して頂くことが重要です。また近い将来、税率が10%へ再び上昇することが予想されますが、その時にも本体の価格は変わっていないことをご理解頂くことも同様に必要です。

-- レストランや百貨店で食品の表示違反が続出しています。同じ食品を扱う立場からの見解をお聞かせください。

岩崎 トレサビリティーを重要視してきた経験から言えば、正直まだそんなことがまかり通っていたのかと驚愕しました。食品スーパーでは、ずっと以前から偽装は絶対にいけないもの、順守できなければ、会社がなくなるということを徹底してきました。外食分野では、そういったルールが明確化できていなかったことが要因ではないでしょうか。もう1つ言わせていただくと、誤認識だった点と、意図的ともとれる問題が混同されていますね。「本当のケアレスミス」や「知識不足から発生した誤表示」と「悪意をもった偽装」は別次元です。全部を区別なく「偽装」というのは違和感があります。

岩崎高治氏の戦略 ヤオコーとの提携

-- ヤオコーと共同開発したプライベートブランド(PB)「star select (スターセレクト)」を9月から発売しましたが、両社の提携という部分では、もう少し踏み込んだ展開をすると考えていました。

岩崎 もともとヤオコーさんも弊社もPBを持っていましたので共同PBはできるところからやろうという話でした。これは一貫した考えで、何としても、共同開発PBを大型展開するんだというものではありません。よい意味で「肩の力を抜いて」、実質的にお互いにメリットのあることをやって行きましょうというスタンスです。そういう点では、個人的には良いスタートを切れたと思っています。

-- 発表時(2012年5月)の記者会見では、並々ならぬ意気込みを感じたのですが。ヤオコーのトップが代わったことで、両社のスタンスに温度差が生じたのかと思いました。

岩崎 (提携の)話を頂いたのは当時の川野清己社長ですが、近く退任されるという意向を既にその時お持ちだったと思います。ですから、当時、副社長だった川野澄人現社長も同席した上の両社の提携交渉を進めて来ました。トップが代わって心変わりした等ということは全くありません。「温度差が生じたのでは?」とはっきり口に出して聞かれたのは今日が初めてですが、そういう見方もあるんですね(笑)。

-- 資本関係のない提携は責任の所在がはっきりしないという指摘もありました。

岩崎 提携の発表直後から、上手く行くと言う人もいる一方で、破談になるという声も聞こえていました。お互いが協力してメリットを享受しましょうということですから、資本云々の話は全くの別問題です。皆さん、資本提携から合併というストーリーを作りたがる。それが念頭にあったから、そういう表現になるんですよ(笑)。資本提携が未来永劫全くあり得ないと、お互いにその可能性を閉ざす必要はありませんが、それありきの提携は止めましょうと当初から握っていたことです。

-- 提携の本丸はプロセスセンターの共同活用にあると考えていたのですが。

岩崎 確かに提携の骨子5項目の1つに入ってはいましたが、もっと言えば、発表と弊社がプロセスセンターの見直しに着手しているというタイミングが合致したので、最後に加えた項目なのです。本丸はあくまで商品・資材の共同調達にあります。「スターセレクト」の商品群の中では10%以上の原価引き下げに成功したものもあります。

-- 将来的にアイテムを増やす意向もありますが、今後の展開の中では、売り場で埋没しない品揃えは必須です。

岩崎 担当役員レベルで話し合いは続けており、かなり踏み込んだ商品展開までを考えています。弊社は他にも「スマイルライフ」(自社PB)、「くらしモア」(ニチリウグループPB)を展開していますし、さらには、ナショナルブランド(NB)もありますから少し考え方を整理する必要があるかもしれませんね。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る