政治・経済

訪日客の増加が日本経済に好影響を与えている。なかでもドラッグストア業界は小売業界で最も恩恵を受けているといわれる。繁華街のドラッグストアが観光客でごった返すのも見慣れた光景だ。しかしその成長にも陰りが見え始めた。ドラッグストア業界の再編は進むのか。文=和田一樹 (『経済界』2019年8月号より転載

 

ドラッグストア業界再編へ第2幕が始まる

 

 業界再編の第2幕が始まった。ココカラファインは6月1日、スギHDと経営統合に向けた協議を始めると発表。両社はかねてから業界再編についての意見交換を重ねていたとみられる。

 実現すれば、売上高でイオン系のウエルシアHDを抜いて業界トップに躍り出る。売上高9千億円規模、店舗数2500店以上の巨大チェーンの誕生だ。

 ドラッグストア業界はこれまで、業界全体の好調さが影響して、コンビニや総合スーパーに比べてそれほど大規模な再編が起こらなかった。しかし、ここにきて一気に業界大型再編の機運が高まっている。

 これまでのM&Aブームを業界再編第1幕とするならば、ココカラファインを巡るスギHDとマツモトキヨシHDの争奪戦は、大手同士の再編という業界再編第2幕になる。

 これまで起きてこなかった大手同士によるココカラファイン争奪戦は、業界の成長に陰りが見えてきたことの表れだ。

 しかしココカラファインといえば、今年4月26日にマツモトキヨシHDと資本業務提携に向けた協議を行うと発表したばかり。今のところ3社で提携や経営統合にむけて協議をするということはなく、あくまでスギHDとの経営統合と、マツモトキヨシHDとの資本業務提携のどちらが自社の成長につながるか、慎重に判断し、両社からの提案をそれぞれ別の組織で検討するという。

ココカラファイン

ドラッグストア業界再編の台風の目になりそうなココカラファイン

 

現在のドラッグストア業界の勢力図は

 

 現在ドラッグストア業界で売り上げ第1位に君臨するのはウエルシアHD。2019年2月期の売上高は7791億4800万円、営業利益290億4500万円だった。

 対して渦中のココカラファインは、19年3月期の売上高が4005億5900万円、営業利益129億1500万円で業界7番手につける。

 そして同社が“連合”を模索している2社については、マツモトキヨシHDは、19年3月期の売上高が5759億9100万円、営業利益360億2800万円で業界4位。スギHDは、19年2月期の売上高が4884億6400万円、営業利益258億1700万円で5位となっている。

 仮にココカラファインがどちらの企業と提携したとしても、売上高は8千億円を超え、ドラッグストア業界で最大の企業連合誕生となる。

 これまでドラッグストア業界は、インバウンド需要の影響や、食品から日用品まで品揃えを拡充する戦略で、市場全体が順調に拡大を続けてきた。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の推計によれば、18年度のドラッグストアの市場規模は17年度比で6.2%増の7兆2744億円。3年連続で5%以上の伸び率をみせた。

 2年前に逆転を果たした全国百貨店の18年度合計の売り上げは5兆8870億円であり、さらに突き放した格好だ。18年度売り上げ10兆9646億円のコンビニエンスストアの背中を猛烈に追いかけている。

 その好調さは店舗数にも表れる。18年度の店舗数は、17年度比で694店増え、2万228店。これは、第1回の調査が行われた00年度比で、7割増という数字だ。

 

出店競争の激化で業界の先行きに不安

 

 しかし店舗の増加は良いことばかりではない。店舗数が増えた結果、店舗間の競争が激化した。

 過去を振り返ってみると、03~10年度までの8年間で、ドラッグストア1店舗当たりの売上成長率は3.6%増だった。ところが11~18年度になるとわずか0.5%増にとどまる。業界全体でみると活況なのは間違いないが、店舗ごとにみると苦戦を強いられている状況だ。

 個別店舗の成長率鈍化を受けて、ドラッグストア各社は梃入れを行ってきた。

 業界2位のツルハHDは07年にくすりの福太郎、15年にレデイ薬局、17年に杏林堂薬局を買収。

 首位のウエルシアHDも15年にシミズ薬品、18年には一本堂、そして今年3月には金光薬品を相次ぎ買収した。

 一足早く出店競争が激化したコンビニ業界をみてみると、ファミリーマートとサークルKサンクスが16年に統合するなど、大規模な業界再編が起こっている。現在は、上位3社で業界シェア9割を占める状況だ。

 ドラッグストア業界は統合が進んだとはいえ、最大手のウエルシアHDでさえ売上高は7791億円。売上高で第10位のクスリのアオキHDは今期の売上高が2570億円になるとの見込みを発表しており、上位10位までがひしめき合っている混戦状態だ。

 

スギとマツモトキヨシがココカラファインを統合相手に選んだ理由

 

 しかし、なぜスギHDとマツモトキヨシHDはココカラファインを統合相手に選ぶのだろうか。それは現在の業態にポイントがある。

 スギHDは本社を愛知県に構え、中部地方で強く、郊外型店舗が多い。対して、関西で都市型店舗を多く展開するココカラファインは、店舗展開エリアで補完関係にあるのだ。

 一方でマツモトキヨシHDは、業態の類似性にポイントがある。マツモトキヨシもココカラファインも、化粧品やサプリメントなどヘルス&ビューティー関連商品の構成比が非常に高く、食品の売上構成比は10%程度。こうした類似性は、物流の共通化やプライベートブランドの共同開発など、統合のメリットを大きくする。

 しかし、大手同士が手を結ぶ一番の理由は、深刻な働き手の不足が原因だ。業界が成熟しつつあるなか、拡大し切った店舗網を維持するためには、薬剤師の確保や運営効率の向上は避けられない。人件費の上昇もあり、大手でさえ中長期では薬剤師などの確保が難しくなるといわれている。

 ドラッグストアのこれまでの売り上げモデルは、医薬品が全体の3割以上を占め、日用品と化粧品がそれぞれ2割程度といった比率。低価格の食品を目玉にして集客し、利益率の高い医薬品や化粧品で稼いできたのだ。しかし、薬価改定による医薬品価格の押し下げはこうした売上比率に変化をもたらす。

 実際、ドラッグストア各社は食品の販売拡大に注力している。最近は薬だけを扱う薬専業店ではなく、飲料や食品、お弁当からサンドイッチまで幅広く食品を扱うようになった。

 消費者が何を欲し、どこで買うのか。それは店舗ではなく消費者自身が決めること。近年、小売業はネットにシェアを奪われてきており、各業態がそれぞれにシェア奪回を模索中だ。

 例えばコンビニは、書店、道の駅、フィットネスジム、コインランドリー、そしてドラッグストアなど、異業種との融合により、新たな消費者ニーズの発掘をすることで顧客の拡大を図る。

 新たな動きは異業種とのコラボだけではない。ファミリーマートがドンキホーテと共同でオープンした実験店舗では、商品陳列、売り場づくり、品揃え、運営手法などにドンキのノウハウを活用したコンビニの「ディスカウントストア化」で好調な結果を出している。

 他にも、セブンイレブンは売り場面積を従来よりも拡大した店舗を増やしている。その大型店舗では、調理の手間がかからない総菜や冷凍食品、日用品を拡充させる「スーパー化」で、増加する共働き世帯や高齢世帯の顧客を取り込む狙いだ。

 スーパーマーケット各社も、土地の余裕が少ない駅前などにコンビニサイズの「ミニスーパー」を出店させ、新たな顧客の獲得に取り組む。

 

小売業界大再編の中で立ち位置を探るドラッグストア業界

 

 これまでドラッグストア業界は、24時間営業の導入や処方箋薬・化粧品など利益率の高い商品を売り場に並べることで商品販売力の強化にもつなげるなど、さまざまな施策で攻勢をかけコンビニやスーパーのシェアを奪ってきた。

 しかしここまでみたように、業態ごとの垣根は無くなりつつある。小売業界全体が大再編真っただ中なのである。

 そしてドラッグストアはその大再編の中で、立ち位置を確保しようとしている。

 高齢化が進むこの国にとって、調剤機能を有するドラッグストアは地域医療の拠点にもなり得る。潜在的なニーズは十分にある。ドラッグストア業界の大再編が、ココカラ始まる。

 

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