政治・経済

2020年の東京オリンピックまでに構造を変える時期に来ている

 本連載も今回で最終回となりました。本稿では、これまで主張してきたことの総括をしてみたいと思います。

 これからの日本を救うためには何が必要か。以前も述べたとおり、2020年の東京オリンピックを迎えるまでに、後世にプラスの影響を与えるような投資や仕掛けが行えるかが、その後の日本の運命を決めていくでしょう。

 それと併せて、今の日本に足りないものは一体何でしょうか。このまま人口減少のスパイラルに入ると、国力が衰えていくのは誰の目にも一目瞭然です。やはり、根本的な構造を変えないといけない時に来ているのは間違いありません。

 とはいえ、一体何を変えるのが一番大事なのかということについて、明確に提唱している人はほとんどいないのが現実です。1つ言えるのは、既存のやり方では立ち行かないということです。結局のところ、一番大事なのは「お金と人の流動性を〝ものすごく〟高めること」に尽きるのではないでしょうか。

 具体的には、新しく起こるイノベーションや新しい付加価値に対して、潤沢に、かつ円滑に資金が提供されるようにすることです。なぜなら、これからも経済成長をしていこうとすれば、今までと同じことをやっていては到底無理、経済はどんどん縮小していく一方です。どの産業においてもどの企業においても、新たな付加価値を継続的につくりだす仕組みをつくらなくてはなりません。

 つまり、付加価値に対して資金がきちんと回る仕組みをつくるということ。企業の場合は内部留保を貯めこむのではなく、将来の成長につながる部分に大きく投資していくということですし、公共事業に関しても将来的に価値を生み出すものに投資していくということです。社会全体で言えば、いわゆるリスクマネーと言われる部分、新興企業やアントレプレナーに対して、より多くの資金が流れるようにすることだと思います。

 これらはすべて、日本ではなかなか行われてきませんでした。しかしこれからは、お金を人間の血液のように、社会の隅々まで十分に回るような仕掛けをつくり、マネジメントをしていかざるを得ません。個人金融資産が1600兆円以上あり、上場企業の内部留保だけで300兆円あるわけですから、それがあるうちに必要とされる分野に十分にお金が回っていくようにするのです。

日本の産業界に適材適所が実現できる仕組みを

 一方で、お金だけ回ってきても、それを有効に使うことができなければどうにもなりません。そこで重要になるのが人の流動性です。

 成長が止まった産業から、成長が必要な産業へ、あるいは人手が余っている産業から人手が足りない産業へと、円滑に人が移っていく仕組みをつくらなければいけない。ところが日本の企業では、高度成長期につくられた終身雇用、年功序列、新卒一括採用がそのまま続けられていることが明らかな障害になっています。

 年代、性別に関係なく、あらゆる人々が流動することが当たり前の社会を構築し、社会全体としての適材適所を実現していくことが非常に大事になってくるのです。

 環境の変化は今まで以上に激しくなっていきますので、1つの会社にいても必要とされる能力はどんどん変わっていくでしょう。その時に新たに同じ人材に別の分野の教育をし直したり、企業ぐるみで人材開発をするといった悠長なことはできなくなっていきます。

 それよりも、即戦力となる人間をその時々で集め、1つの任務を終了した人材は外部にリリースし、違う産業や違う会社で能力を発揮できるようにすることが、個人にとっても組織にとっても必要となってくるのです。

 こうしたことが実現できなければ、あらゆる企業、あらゆる産業、あらゆる社会の中で能力を発揮できない人材が遍在することになり、社会全体の効率がどんどん悪くなっていきます。それに輪をかけて、労働力そのものが少子高齢化で少なくなってくると、そこから全く抜け出せない非効率な国になっていくに違いありません。

 人の流動性を高める仕組みとは、具体的に言うと、本連載を通じて述べてきた公務員の任期制、人材募集の際の年齢制限の違法化、性別による差別の違法化、同一労働同一賃金制の導入といったことになってきます。今まで日本の産業界が経験していないことばかりですが、これらができるかどうかに日本の将来は懸かっています。

 この連載を通じて、僕が一貫して主張したかったのは結局こういうことなのです。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る