文化・ライフ

老眼が克服され、血液検査がなくなる!?

イラスト/坂本浩子

イラスト/坂本浩子

 2007年にスタートしたこの連載も、今回で最終回だ。そこで今回は、アンチエイジング医学の未来について予想してみたいと思う。未来といっても何百年も先の未来ではない。66年後の2080年だ。

 アンチエイジング医学と出合って以来、僕は生物学的な寿命の限界といわれる125歳まで生きてみよう! と考え、アンチエイジングを実践してきた。その僕が125歳になり、死ぬ予定の年が80年だ。

 まず、眼科の未来を考えてみよう。

 老眼は画期的な目薬の開発によって、40歳から1日1回点眼するだけで、80歳くらいまで普通に近くが見えるようになっている。この目薬はアンチエイジング薬なので、老眼だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性にも効果がある。ドライアイも完全に治る。白内障を完全に予防することはできないが、80歳くらいだと「お若いのに、あの方はもう白内障になって」などと言われる。

 もちろん、この目薬はその頃には世界的に有名になっている〝チーム坪田〟が開発したものだ。

 さらに、21世紀前半まで行われていた血液検査は陰をひそめ、涙液検査と眼底検査だけで、目ばかりでなく、ほとんど全身のパラメーター測定ができ、全身の健康管理に大きく貢献している。

 平均寿命も100歳を超えている。まさか! と思うかもしれなが、1947年(男50歳、女53歳)から2010年(男79歳、女86歳)の約60年間で30歳以上寿命が延びたのは事実であり、戦後直後の寿命増加10年分を差し引いても、20年は伸びた計算だ。現在も寿命の延長スピードは変わっていないし、今後も同じ速度で寿命が伸びないと言い切れる人はいないだろう。

 だいたい経過時間の3分の1の寿命延長が起きていると仮定すると、66年後には、22年歳寿命が延びる計算だ。すると、80年の平均寿命は女性108歳、男性101歳。

 僕はその頃125歳なので平均寿命より24歳上だが、平均寿命が80歳代の現代でも100歳以上長きする人はたくさんいる。80年の世界では125歳はそれほど珍しくないのだ。

ごきげんな終末に向かって生きていこう!

 さて、80年には、がん、心臓病、糖尿病なども克服され、再生医療が当たり前になっている。そのため、医療産業は14年の50兆円から500兆円に伸び、人類の産業のほとんどが健康関連産業となっている。

 長寿遺伝子もサーチュイン以外に多数同定され、長寿遺伝子を自由に活性化できる飲み薬が当たり前になる。

 生まれた時から飲ませるとほとんど無限の寿命になる薬剤も開発され、子どもに飲ませるかどうか、飲ませられるのはお金持ちだけという格差に対して社会では大きな議論になっている。

 一方、死は避けられないものでもなく、運命でもなくなったが、個人の尊厳を大事にしながら人類という種の生存確率をいかに上げていくか大きな議論が数十年にわたって行われ、死を受け入れるかどうかは個人の選択にゆだねられることになった。その結果、興味深いことに、一生に満足して死ぬ人たちが増え、今のところうまくいっている。

 一番大切な予想は〝人類は今よりずっとごきげんになり、エネルギー問題、人口問題、温暖化問題も解決の方向に向かっている〟ことだ。

 実は僕ももっと生きようと思えば生物学的には生きられるのだが、以前から125歳で死ぬと言ってきたし、十分ごきげんな人生を送ったので、ここでみんなとお別れをすることにした。

 このお別れパーティーは、人生最大のパーティーであり、結婚式よりずっと大きなビジネスになっている。とはいえ、地球に今まで生存してきた生物種の平均寿命は約1千万年。人類は誕生からまだ100万年しかたっていないので、まだまだ頑張らないといけない。「子どもたちよ、頑張れ。僕はほんとうにごきげんで好きな人生を送ることができてみんなに感謝している。天国から人類を応援しているよ!」と人生を閉じる。

 これは決して奇想天外な話ではない。そして、そんな人生の終末を想像することを可能にしてくれるアンチエイジング医学に喝采を送りたい。アンチエイジング医学は「死ぬタイミングを受け入れる医学」であり、そこから「どう生きるか」を考えさせる医学だなあとつくづく思う。長い間ご愛読いただいた皆さま、ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!

★今月のテイクホームメッセージ★

アンチエイジング医学の目覚ましい進歩に、これからもご注目を!

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