政治・経済

 2020年の東京オリンピックが昨年決定して、年末年始のテレビ番組で50年前の1964年に開催された東京オリンピックの特集番組を懐かしく見た。50年前、私は大学生で、新宿駅南口で見た甲州街道を走るアベベの顔は哲学者のようであり、走る姿は完成された芸術作品のようで鳥肌がたった。円谷幸吉がヒートリーにオリンピックスタジアムで抜かれるシーンは今も瞼に焼き付いている。大松博文監督率いる女子バレーボールも日本人を熱狂させてくれた。

 その頃、下宿で寝ていると群発地震かビルを建てる槌音の響きか分からないほど連日振動があり、凄まじい勢いで東京の街は変貌していった。モンペ姿や着物で応援する沿道の人々や背景の木造建築、未舗装の道路は瞬く間に消えていった。池田内閣の国民所得倍増計画の真っただ中で高度経済成長の始まりを誰もが信じられた時代であった。

 遠い存在であった外国人もぐっと身近になった。64年の流行語は「金の卵」で高度経済成長を支えた。今は銀の卵と言うそうで、それはシルバー人材を指す。当時と今を比較すると人口が9700万人と1億2700万人で3千万人増えている。平均寿命は男性が17歳伸びて80歳、女性が14歳伸びて86歳となり、合計特殊出生率が0・6ポイント下がって1・41になった。その結果65歳以上の高齢化率は6・2パーセントから24・2パーセントと約4倍に増え、世界最速で高齢社会となった。当時の老人ホームの平均年齢は70歳代で、今日では90歳代だそうである。オリンピックを目指して一千日道路と称されて突貫工事で高速道路が整備され、東海道新幹線もできた。長寿が夢であり、高度経済成長のためには公共施設の整備は不可欠であった。

 東京オリンピックの成功という敗戦国の悲願であった目標があったからこそ、短期間でいろんなものを完成させることができた。成功の結果、少子高齢社会になり50年間に3千万人増えた人口は、増えたスピードより早いスピードで減少する。医療、介護、年金問題は待ったなしである。一気に作り上げた公共施設は耐用年数がきて、維持費に膨大な費用が掛かるようになった。成長時代を通じて広がった所得、地域、職業、教育、世代間等の格差の是正も喫緊の課題だ。

 ネット時代を迎えて世界は狭くなり政治、経済の抜本的な構造改革が迫られ、50年間歩んできた成長モデルが方向転換の時を迎えている。高度成長を支えた中央集権体制の時代は考えられなかった総理大臣経験者が都知事選に立候補した。地方分権改革が進んで、中央と地方の関係が上下から対等に近づき社会が成熟してきた証左だ。

 あと6年で2回目の東京オリンピックを迎えるという絶好の目標ができた。50年前の東京オリンピックが成長の象徴になったように6年先の東京オリンピックを成熟の象徴に導いて、次の世代にバトンタッチしていかなければならない。

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