政治・経済

  今年のノーベル経済学賞受賞者は、米シカゴ大のファマ、ハンセン、そして米エール大のシラーの3氏の共同受賞となった。資産価格の決定要因が3人に共通する研究テーマだが、これはノーベル経済学賞が革命的に大衆化したことを示している。

 なぜなら、受賞分野が、現代ファイナンスや行動ファイナンスといった専門家によるカテゴリーに対応せず、現実の世の中のトピックになっているからだ。資産市場の価格形成の謎に切り込んだということだが、学者の側から見ると、シラーとファマという組み合わせはあり得ない。この2人のアプローチは決定的に異なっており、2人は生涯にわたって論争を続けているからだ。しかし、学者の側の常識ではなく、社会の側のトピックがそのまま設定されるところが、大衆化の証しなのだ。

 しかし、自然科学とは3つの点で経済学は大きく異なっている。第1に経済学は未熟な学問だ。資産価格の変動の理由はまだ決定的な理論はない。だから、今回のノーベル賞は、現時点での2つの有力説のそれぞれの代表、効率的市場仮説を中心とした現代ファイナンス理論のファマと、投資家行動がすべてを決める行動ファイナンス理論のシラーが同時に受賞することになった。

 第2には、自然科学において原理は動かない。不変の真理がある。しかし、経済は動く。社会も動く。リーマンショックの前後で資産市場は明らかに異なった動きをしている。前後の動きをつなぐのは、どちらでも主体である経済主体、金融機関であり、それを動かしている人間であるが、人間自体の行動原理も動いている可能性がある。そうなれば、その動いている人間が複雑に絡み合う社会や市場の動きも、原理そのものが変わっていくだろう。そして、そもそも原理があるのか、という問題まで正当な疑問として生じてくるのだ。

 第3には、経済や市場というものが、分かっていない状態でも、何らかのヒントをつかみたいというニーズがあまりに大きいということだ。経済や金融市場の社会的影響力が圧倒的であるために、まだ未熟な経済学に期待が集まるのであり、未熟なままでノーベル賞を与えても、さらなる発展を促すということを社会の側がニーズとして持っているということだ。

 したがって、アベノミクス論争に見られたように経済学者はいろんなことを言う。信頼できるのか不安になった人々も多いと思うが、経済学は未熟なのであり、だからこそ、今後さらなる発展が期待できるのであり、経済学の未来はあるのである。

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