政治・経済

昨年10月に東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルが経営統合し、東急不動産ホールディングスが誕生した。今年は統合効果を発揮し、本格的な成長フェーズに移行するタイミングと位置付けており、事業会社の社長交代を発表した。 (本誌/村田晋一郎)

事業子会社2社で社長交代し成長を加速

左から金指潔・東急不動産社長、三枝利行・同社常務、岡本潮・同社副社長、中村元宣・東急コミュニティー社長

左から金指潔・東急不動産社長、三枝利行・同社常務、岡本潮・同社副社長、中村元宣・東急コミュニティー社長

 東急不動産ホールディングスは、事業子会社2社の社長人事を発表した。4月1日付で、東急不動産は会長の植木正威氏が相談役に退き、社長の金指潔氏が会長に、常務の三枝利行氏が社長に就任する。また、東急コミュニティーは社長の中村元宣氏が会長に、東急不動産副社長の岡本潮氏が社長に就任する。

 東急不動産と、その子会社だった東急コミュニティーおよび東急リバブルの3社は、昨年10月からホールディングス制に移行。それぞれ東急不動産ホールディングスの完全子会社となり、東急不動産社長の金指氏がホールディングスの社長を兼務している。ホールディングス制により経営基盤を強化することで、成熟した経済状況下においても持続的な成長を目指していくプラットフォームを実現したという。

 今回の社長人事の経緯について、金指氏は次のように語った。

 「今年からホールディングスによる統合効果を発揮して、本格的な成長フェーズに移行するタイミングにある。この節目に、将来を見据えた変革を確かなものにするため、事業子会社の世代交代を図り、新体制でグループ総合力の最大化を目指す」

 なお、金指氏は、引き続き東急不動産ホールディングスの社長にとどまり、ホールディングス全体の舵取りを続けるという。ホールディングスの組織・人事については、また機会を改めて発表する予定。

 今回の人事が注目されるのは東急不動産新社長の年齢だ。東急コミュニティーは、65歳の中村氏から64歳の岡本氏への交代であるが、東急不動産は68歳の金指氏から55歳の三枝氏に一気に若返ることになる。

 金杉氏は三枝氏を社長に抜擢した理由をこう語った。

 「三枝氏には経営者に必要な粘り強さはもちろんのこと、豊富なネットワークを総動員して成果を導き出す力がある。特に、周りの者を一瞬に前向きにし、インスパイアできる雰囲気があり、多様な個の力を組織の力にまとめることができる人材。あくまで人物本位の選択で、結果的には若返りになった」

 一方、東急コミュニティーの社長となる岡本氏については、「東急コミュニティーは、経験の深い人物に舵取りをお願いしたほうが良い。グループ全体にかかわる東急コミュニティーの重要さ、東急コミュニティーが対応している顧客の重要さを十二分に理解している人物に社長になってもらって、新たな事業展開をしていく」と語った。

 岡本氏は副社長として、グループ全体の経営統合を金指社長の下で進めてきたが、その手腕が買われた格好だ。

積極かつ柔軟な事業展開を図る新社長

 経営が若返ることになった東急不動産だが、三枝氏は社長就任の抱負を次のように語った。

 「東急不動産は今年60周年の節目を迎え、第2の創業と位置付けている。当社のDNAであるモノづくりに原点回帰するとともに、今まで継承している顧客目線に注力し、時代の変化に柔軟に対応する。『ノーアタック、ノーチャンス』をモットーに、さまざまなことに積極果敢にチャレンジしていきたい」

 この積極的な姿勢が、三枝氏の持ち味のようだ。

 「5〜6年間一緒に仕事をしてきて、厳しい状況に置かれた時に、ハードルを超える役割を彼自身が身を持ってやってくれた。彼が持っているアグレシップな姿勢が他にはないと判断した」(金指氏)と社長に抜擢された理由にもなっている。

 「新社長には思い切って権限を任せる。グループの経営戦略に沿いながら、事業を積極的に展開し、『三枝色』に染まった企業体にしてもらいたい」と金杉氏の信頼も厚い。

 三枝氏は、住宅、特にマンションの開発事業に従事。直近では、経営企画担当を経て、事業創造本部においては、新規事業の開発や海外事業を手掛けてきた。こうしたバックグラウンドそれぞれの展望を語った。

 住宅事業については、業界内の過熱感に伴い建築費が高騰している。同社では中期経営計画で、2014年3月期にマンションの計上戸数を3千戸程度に増加する方針だが、「戸数にこだわると収益が落ちるところもあるため、戸数よりは収益を確保できる基盤整備をしていく」とし収益重視の姿勢を示した。

 新規事業については、「金指社長の6年間で、かなり会社の雰囲気は変わってきたが、まだ、ホールディングス内での会社間の壁があると思う。これを打破してコミュニケーションを良くすることにより、いろいろ部門間の力を合わせれば、新たな事業が生まれてくる」

 一方、海外事業については、「日本の人口が減少していく中で、日本だけにわれわれの資産を置いていて良いのかという疑念があり、何とか海外に資産をアロケートできないかということで積極的に展開をしてきた。現在は、中国とインドネシアに加え、米国にも投資を少しずつ始めており、今後伸ばしていきたいと考えている。グローバル化はドメスティックな不動産業にとっても避けて通れない。積極果敢に行くべき事業だと認識している」と注力していく方針。

 東急不動産の現在の事業環境については、住宅事業も含め各セグメントで好調な状況だという。しかし、今後は消費税の駆け込み後の反動、建築費高騰や用地取得競争の激化などが予想されることから、三枝氏は一本調子では行かないと警戒する。

 「その時々の情勢に対応できるように柔軟に、自分たちの頭と心を備えておくことで、事業展開を継続的かつ安定的に図れる」と積極果敢の一方で柔軟に取り組む姿勢を示している。

 硬軟併せた三枝氏の手腕が注目される。

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