政治・経済

地銀をはじめとする地域金融機関の再編問題が話題になっている。その背景にあるのは経営環境の厳しさであり、監督官庁である金融庁もさまざまな形で再編に向けたプレッシャーを強めている。 (ジャーナリスト/山下勝昭)

構造不況に人口減少が追い打ち

地銀再編で注目される足利銀行の宇都宮市本店(写真:時事)

 地銀再編が大きな焦点となった局面は過去にもあった。1990年代に発生した金融危機の際もそうだ。当時は不良債権処理コストの増大から経営悪化した銀行の救済合併というパターンの再編だったが、今、ジワジワと拡大している再編の土壌はより深刻とも言える。

 不良債権処理コストは低水準で落ち着いているものの、肝心かなめの基本的収益である粗利益が先細りになってしまったからだ。要するに、構造不況業種への転落である。その事情をある地銀関係者はこう説明する。

 「地元企業の資金需要は乏しく、それを補うために拡大させてきた長期国債運用は日銀による超金融緩和で長期金利が歴史的な低水準となったことで、利息収入がわずかになってしまった」

 その上、本来、銀行のコストである預金は流入し続けて、経営の首を絞める形になっているというのだから、いわば、三重苦の事態が深刻化しているわけだ。加えて、次第にその影響が出始めてきたのが人口減少にほかならない。地方型の地銀では、地元地域の高齢化が著しい。若者の都会への流出と相まって、人口は減り続けるしかない事態に陥っている。

 さらに、高齢者が亡くなれば、その預貯金などの資産は都会で暮らす子どもたちが相続するため、預金も減少せざるを得ない事態になりつつある。「預金はコスト」とはいえ、銀行が貸し出しや投資を行うための原資である以上、やはり、預金減少はその銀行の先行きを怪しくせざるを得ない。

 そんな深刻な事態の中で、再編による生き残り問題が取りざたされるようになることは火を見るよりも明らかだったと言っていい。

 こうした中で、現在、注目の的となっているのが栃木県が地盤の足利銀行だ。2003年に経営破綻した同銀行は公的資金投入を経て再生され、13年12月19日に東証に再上場を果たした。その株式の約37%を保有しているのが野村ホールディングスだが、野村にとって、同銀行株を保有し続けるビジネス上の意味は乏しい。したがって、「いずれ、好条件を提示した先に株式譲渡することは間違いない」(大手銀行筋)というのが銀行業界の大方の見方だ。

 しかも、同銀行の再生過程で国が資金スポンサー(出資者)を募集した際には、横浜銀行など複数地銀によるグループが名乗りを上げた経緯もある。最終的に足利銀行のスポンサーに選定されたのは同グループではなく野村グループだったが、この経緯から、地銀業界の中に足利銀行を取り込みたいという思惑があることが如実に読み取れる。

 そうした中で、足利銀行をめぐって取りざたされている存在が群馬銀行と、茨城県の常陽銀行だ。「北関東の雄」と呼ばれるこの2つの大手地銀が北関東自動車道でつながった北関東経済圏の中核銀行になるには、その中間地域にある足利銀行の地盤を確保する必要があるからだ。この地域では、足利問題を契機に第二地銀を巻き込んだ広域合併が実現する可能性も否定できない。

 一方、九州地域でもキナ臭さが増している。こちらは、福岡経済圏に多くの地銀が向かっている中で、九州の最大銀行である福岡銀行を中核とした広域銀行化の思惑が浮上しつつある。さらに最近、注目度が高まっているのが四国にほかならない。金融庁が横串的な検査を四国の地銀に行っていることがその背景にある。実は、四国地域の地銀では前述のような「預金減少の傾向が次第に強まりつつある」(地銀関係者)という。

 そうした中での検査実施と平仄を合わせるかのように、2月中旬、金融庁の幹部が地銀経営者の前で「今後、多くの地域で人口減少が進み、これによって預金がピークアウトしていくことが見込めると発言し、個々の地銀に、先行きの経営ビジョンを明確化することを求めた」と語る。ある地銀経営者は「われわれは、当局が合併を要請しているのだとあらためて受け止めた」と、率直な感想を述べている。

金利低下でも反転でも苦境に

 水面下で再編の蠢きが始動しているのは何も地銀だけではない。地域金融の一端を担っている信用金庫でも同様だ。むしろ、利ザヤ縮小による収益力の著しい低下という構造問題は、こちらのほうがより深刻と言って間違いないだけに、信金業界の再編はもはや、「待ったなし」というムードにすらなってきているのが実情だ。

 たとえば、関東圏においては、「各都道府県で合併の動きが始まっている」と信金関係者は指摘している。比較的、経営環境が良好であるはずの東京ですら、「複数の合併交渉がある」ようだ。

 安倍政権による経済政策、アベノミクスの主柱は、何といっても「異次元緩和」と名付けられた日銀による大規模な量的緩和だ。今のところ、同政策がこの1〜2年の間、さらに拡大することはあっても縮小することはないだろう。とすれば、長期国債の金利は一段と低下する可能性がある一方で、ある日突然、金利反転ということになるシナリオが描ける。

 そのいずれのシナリオが現実化しても、大量に国債を保有している地域金融機関にとってはネガティブでしかない。なぜならば、一段の金利低下は利息収入の減少という収益力の脆弱化をもたらし、金利反転は保有国債の評価損失拡大という形で銀行に突発的な巨額損失を生じさせかねないからだ。

 つまり、企業向け貸し出しが本格的な回復とならない限り、厳しい事態に萎えていくか、あるいは、劇症的な痛みに襲われるかの二者択一ということになりかねない。

 その厳しい事態をコスト削減、効率化による経営体力向上で打ち返そうとするには合併、経営統合という手法しか考えられないのは厳然たる事実かもしれない。少なくとも、今年、地銀など地域金融機関の再編話がさらに高まる環境であることは間違いない。

 

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