政治・経済

 冷え込んでいた消費もアベノミクス効果で底を打ち、小売業の多くが業績を回復させている。そんな中にあってファッションビル大手パルコの好業績は、ひときわ目を引く。要因を探った。

パルコ・牧山浩三氏が語る 旺盛な新規事業欲

牧山浩三・パルコ社長

牧山浩三・パルコ社長

 「パルコは全体が新しいことをやっていこうというムードに満ちている。消費増税を控える今期も悲観的な見方はしていない」と語るのはパルコの牧山浩三社長。

 同氏の言葉を裏付けるようにパルコの業績は絶好調そのものだ。昨年12月25日に発表した2013年3〜11月の連結決算によればカード会員の増加と新業態「ゼロゲート」が好調に推移、純利益が対前年比26%増の47億円と過去最高を記録した。

 好調の源泉となったのは、牧山氏の言葉にもあったように新規事業への挑戦だ。前述した「ゼロゲート」とは同グループが事業戦略の肝に据える都心型中低層商業施設のこと。都心1等地という好立地に中低層商業施設を設け、その事業規模に応じた効率的運営を実施するという新しい事業モデルである。外資系ファストファッションなど集客力のあるブランドを施設に誘致し、同社は家賃収入を得るという仕組み。昨年4月道頓堀店を皮切りに、業態転換を含め出店を加速、現在までの短期間に4店舗をオープンさせている。

 「そもそもゼロゲートは、既存事業に加えテイストの違う事業を展開したいという意向から始まっています。ビル・土地所有者とテナントさんの真ん中に弊社が入ることで、長期間にわたりウィンウィンの関係の構築が可能となり、運用方法に頭を悩ませていたオーナーさまからもご支持を頂いております。たまたま外資系ファストファッションから始まっていますが、日本で最大でも10店舗程度の展開と考えているテナントさんには最適な施設だと自負しています。これをパルコのそばで展開すれば、相乗効果も十分に期待できると考え参入しました」と牧山氏は述べる。

 同社の狙いは的中したようだ。不動産運用としての定期的な家賃収入を見込めるのは当然のこと、何より各施設のテナントも想定以上の売り上げを確保しているという。パルコ内では歩合制にしたほうが良かったのではないかという意見も出ている。

 だが牧山氏は、「こういった事業は、売り上げがいい時も悪い時もある。悪くなった時にパルコがバックアップするという補完関係をオーナーさまは期待していますので、そこは割り切らなければいけません」と慎重に続けた。

 一方で、昨年10月31日から国内最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を展開するスタートトゥデイが仕掛けた新サービスのスマートフォン新アプリ「WEAR」にも当初より参加し、業界内外を驚かせたことも記億に新しい。このサービスにはバーコードスキャン機能がある。リアル店舗で商品のバーコードをスキャンすれば商品情報はもちろん、コーディネート画像までもが簡単に入手できるのだ。店頭であれこれ悩むことなく、自宅でゆっくりと商品を吟味できる上、24時間いつでも購入できるというメリットから、スタート以来ユーザーは拡大の一途をたどる。

 しかし、このサービスは店頭売り上げの減少を招くという危惧、いうなれば「〝ショールーミング化〟を加速させるのでは」という懸念から「WEAR」導入に慎重なテナントも少なくない。

 「そもそも弊社ではオムニチャネル化を推進していました。これはウェブ会員を増やすとともに、われわれとテナントさまがイコールパートナーとしてさまざまのサービスを構築し、関係性を密にすることで相乗効果を上げていきたいという意向がありました。そんな考えを持っている中で始まったのが新サービス『WEAR』です。タグをスキャンするという行為はお客さまも勇気がいるし、販売スタッフも戸惑うでしょう。そういう点でわれわれが期待しているのは、むしろコーディネートニーズです。素晴らしいコーディネートをしている人には、当然、アクセスが集中します。例えば販売スタッフにそういう人がいれば必然的に店舗に足を運ぶことになるでしょう」と同氏は「WEAR」参加の経緯を語る。

 一方、懸念される〝ショールーミング化〟に対しては、「ショールーミング化を言うなら、もう1段先の話になると考えています。そういう意味で、当面は便利なツールとしてお客さまに利用していただければいい。将来的には24時間どこでも欲しい商品を購入できる時代が到来します。その中央にパルコが常に立っていることで、パルコファンを増やすことができるのです」と、将来的な成長戦略上での必要性にも言及した。

 同社の強さは、これら常に新しいことに果敢にチャレンジする姿勢にある。前述2つの取り組みは、ほんのさわりにすぎない。これ以外にも自主編集売場の構築やパルコ劇場を利用したさまざまなイベントにも積極的。日本の情報発信基地として一時代を築いたDNAはいまだ健在ということだ。

経営安定化も後押ししたパルコ

 パルコと言えば11年、筆頭株主の森トラストとの確執が表面化、当時社長だった平野秀一氏が退任に追い込まれる事態に見舞われた。

 さらに、このゴタゴタに乗じてイオンがパルコ株を大量取得、森トラストと共同歩調を取り経営権が奪われそうになった苦い過去がある。

 最終的には、森トラストがパルコ株を百貨店大手のJ.フロント リテイリングに譲渡、子会社化されたことで事態は収束。経営の独自性を認めるJ.フロントの下で今やグループの中核企業へと成長した。

 仮に、森トラスト・イオン連合軍に経営権を奪われていたら独自性が失われ、今のパルコの好調はないだろう。

 経営陣が安定したことは、間断なく新規事業に挑戦できる素地となっているのだ。

 パルコの本拠地渋谷も再開発で大きく様変わりする、街の風景が変わっても、その主役にいるのはパルコなのかもしれない。

(本誌/大和賢治)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る