政治・経済

電機大手の2013年度第3四半期決算が好調な中、ソニーが通期で赤字転落になる見通しと、PC事業譲渡およびテレビ事業分社化を発表した。「独り負け」に見える状況だが、構造改革の成功を背景にソニーの平井一夫社長はあくまで強気だ。 (本誌/村田晋一郎)

赤字転落の一方で構造改革は進展

平井一夫・ソニー社長

平井一夫・ソニー社長

 ソニーは2月6日、2013年度第3四半期決算を発表し、2年振りに通期赤字になる見通しを明らかにした。

 第3四半期は連結の売上高、営業利益ともに前年同期に比べ大幅な増収増益となった。しかし通期の見通しは、昨年10月時点での想定を大きく下回った。その理由としては、第3四半期に一部の事業で減損や評価減を計上したことや、収益改善のために追加の構造改革費用を200億円積み増したこと、さらに一部の資産の売却計画を見直したことが挙げられる。これらにより、当期純損益が約1100億円となる見込みだという。

 同じ弱電メーカーであるパナソニックやシャープが2期連続の巨額赤字から黒字に転じる見込みを発表しているだけに、ソニーの赤字転落が目立った格好。特にエレクトロニクス事業で13年度の黒字を必達目標に掲げていたが、その達成の見込みが立たないことがまずマイナスイメージとなった。課題事業と位置付けるテレビ事業については、目標未達の理由として、先進国向けで高付加価値モデルの投入が遅れたこと、新興国向けには市況の悪化や通貨下落の影響を受けたことを挙げた。

 さらに赤字見通しに加えて、PC事業の譲渡とテレビ事業の分社化を発表。グループ全体で14年度末までに約5千人の人員削減を見込んでいるという。一見すると、ソニーが苦境を露呈したかのように見える。しかし、平井一夫社長はこれまでの改革が成功裏に進んでいることを強調。強気の姿勢を崩していない。赤字転落も、「第3四半期に一部の事業で減損や評価損を計上したことを除けば、決算内容はほぼ10月時点の想定通り」(平井社長)とイレギュラーな要素が大きいとしている。

 エレクトロニクス事業のコア事業と位置付けるモバイル、ゲーム、イメージングの3事業については、それぞれスマートフォン、ゲーム機、CMOSイメージセンサーのビジネスが順調に拡大。14年度以降もこれらの3事業が利益の押し上げ要因となるという。

 一方、テレビ事業についても、11年度の1475億円の赤字から、13年度は約250億円まで改善。当初の6分の1まで圧縮してきており、事業再生の道筋が見えてきたとしている。

成功事業に倣いテレビ事業を分社化

 今回発表した2事業の変革についても、構造改革の成功を背景に平井社長はあくまで強気に攻める姿勢だ。

 PC事業については、「VAIO」ブランドとして運営しているPC事業を日本産業パートナーズが設立する新会社に譲渡する。7月の事業開始に向けて、3月末までに正式契約を締結する。新会社はVAIOブランドのPC事業を企画から製造・販売まで全体にわたって運営。経営陣はVAIO&Mobile事業本部本部長の赤羽良介氏を中心に構成するという。

 映像・音響技術にITを組み合わせたVAIOは、一時はソニーを象徴する事業でもあったが、既に歴史的使命を終えたという見方もできる。VAIOは個人向けに強いPCだが、個人向けPCで行っていた用途の多くは、今やタブレットやスマートフォンで対応できるため、個人向けPCの市場は縮小傾向にある。また、タブレットやスマートフォンなどのモバイルは現在のソニーのコア事業の1つ。ソニーの復活の象徴的商品がスマートフォン「Xperia」シリーズであることを考えると、ソニーがPC事業を続ける意義はなくなっている。

 今回のPC事業の譲渡は、ソニーのエレクトロクス事業にとっては初めての事業切り離しとなる。「事業譲渡は苦渋の決断だった」と平井社長は語るが、ソニーの成長を考えると業態変化は必須であり、今回の事業譲渡は当然の帰結と言えるだろう。

 奇しくもこの発表の1カ月前、平井社長は、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「インターナショナルCES」において基調講演を行った。その内容は、ソニーの歴史を振り返り、ベータマックスなどの過去の製品を失敗例として挙げ、失敗を恐れず失敗を繰り返しながらも前進する姿勢を強調するものだった。今回、VAIOが「失敗例」に加わってしまった格好だが、この基調講演は業態変化への強い意気込みの表れだったと理解できる。

 テレビ事業については、7月をめどに事業を分社化し完全子会社として運営する。新会社の社長はホームエンタテインメント&サウンド事業本部長の今村昌志氏が務める。

 事業の分社化と言うと、その後の売却が前提となるケースがあるが、ソニーの場合は、現在の屋台骨であるスマートフォンをソニーモバイルコミュニケーションズ、プレイステーションをソニー・コンピュータエンタテインメントと完全子会社がそれぞれ手掛けている。分社化した事業会社で経営の独立性を高め、事業を効率化し、意思決定のスピードを上げていることが好業績につながっており、テレビ事業もそれに倣う方針だ。

 テレビ事業自体は10期連続の赤字を計上しているが、大型の4Kテレビをはじめ高付加価値製品へのシフトが着実に成果を挙げている。4Kテレビは13年12月末時点の日本市場で75%以上のシェアを獲得、米国市場でも13年の年間トップシェアを獲得している。こうした流れをさらに加速するとともに収益構造を改善し、14年度のテレビ事業の黒字化を目指すという。

 平井社長は「テレビは引き続きリビングルームにおける視聴体験を実現する上で重要な役割を果たす」としており、あくまでテレビ市場を強気に攻めていく考え。

 その一方で、テレビ市場の環境は決して良くはない。これから中国市場をはじめ4Kテレビ市場が立ち上がってくるが、その分、収益性は乏しくなる。高付加価値製品というだけで、どこまで成長できるかは疑問が残る。分社化で構造改革を進めるだけでなく、成長に向けた仕掛けが必要になるだろう。

 

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