文化・ライフ

台風ヨランダの被害視察でレイテ島へ!

台風ヨランダで甚大な被害を受けたフィリピン・レイテ島の被災状況。(写真:坪田一男)

台風ヨランダで甚大な被害を受けたフィリピン・レイテ島の被災状況。(写真:坪田一男)

 2014年の年明け、米国中西部では大寒波が続き、3500以上の航空便に遅延や欠航が出たとか。一方、その頃僕は、気温30度以上のフィリピンにいた。

 残念ながらビーチでバカンスというわけではない。昨年11月にフィリピン台風30号(=台風ヨランダ)で甚大な被害を受けたレイテ島を視察するためだ。

 この誌面でも報告したが、僕は3年前の東日本大震災の時、被災地を巡る眼科医療支援車両「ビジョンバン(Vision Van)」を米マイアミ大学の友人から借り受け、3カ月間、被災地で移動診療を行うというプロジェクトを実行した。実に3700人の方へ眼科医療を届けることができたことは、本当にうれしく思っている。

 災害時には、生死を分けるような大けがや症状を救うための医療が最優先される。これは当然のことだ。しかし、被災から一定の時間がたち、環境が落ち着いてくると、「見る」ことができないことの不便さを痛感するようになる。

 例えば、被災によって眼鏡やコンタクトを失った人は、日常生活でもいろいろと不便を感じるだろうし、復興活動はもちろん、新聞やテレビで情報を得ることさえ難しいだろう。

 実際、僕たちが届けた老眼鏡を掛け、震災後初めて新聞を読んだおばあさんの笑顔を忘れることはできない(この活動記録はYouTubeにもアップされているので、ぜひご覧ください。 http://www.youtube.com/user/MissionVisionVan)。

 この活動の実績を受け、日本眼科医会では国家予算を獲得し、日本製のビジョンバンも完成。今も東北の避難所を回って活動を続けている。これは、アジアでの災害時には医療支援に派遣することを視野に入れて開発された車両だ。  そこで、11月の台風ヨランダの被害報告を受け、さっそくビジョンバンの活用をフィリピン側に打診していたのだが、やっと救急医療の時期は終わり、眼科にもその需要がありそうだということで、視察に行くことになったわけだ。

現在、現地で活動中の眼科医はわずか1人

 マニラから、飛行機で約1時間。レイテ島で僕たちを出迎えてくれたのは、アメリア先生というフィリピンの女性眼科医。耳鼻科の旦那さまと一緒に車で島のあちこちを案内してくれた。

 被災前は11人いたというレイテ島の眼科医は、現在1人。他の先生はマニラやセブに一時移住してしまい、唯一残った眼科医が、アメリア先生だ。彼女1人だけでは、避難者すべてに十分な眼科診療を届けるのが難しいのは明らかである。オペ室のある病院にも足を運んだが、施設にしても、医師の数にしても、全く足りてはいない。

 僕たちのビジョンバンは、高度な検査機器もしっかり搭載している。ぜひ、レイテ島でも活用してほしいと心から思った。

 そして、実際に現場に足を運び、自然が起こすパワーの大きさに、またもや言葉を失った。10㍍くらいの波が沿岸部に押し寄せ、木造建築はすべて押し流されていた。コンクリートの建物でも、窓ガラスはすべて破壊され、中にはコンクリートなのに土台しか残っていないものもある。

 事前に約6千人が避難していたというタクロバンのホールも例外ではなく、何と半数の約3千人が押し寄せた海水に沈んで亡くなったそうだ。その建物では、今でも多くの人が避難生活を送っていた。

 膨大な数の避難者を前に、僕もどのような支援ができるのか、アメリア先生や現地の病院のディレクターと多くのディスカッションをした。

 これから、日本サイドでの調整も続け、2月には活動が開始できればと考えている。

 最後の日。フィリピン眼科学会の先生方と食事会をした。フィリピンでは、多くの女性が働いている。大統領にも既に2人も女性が就任しているし、食事会にも多くの女性医師が参加していた。みなさんとお話をしてみると、それぞれ子どもが3人か4人いて、子育てをしながら働いているそうだ。おいしいフィリピン料理を食べながら「お家でも、こんなお料理するのですか?」と聞いてみたところ、「もちろんシェフが作るわよ」と一笑に付された。女性が生き生きと社会で活躍するには、まだまだ日本にはリソースが足りないな、とも感じた視察の旅だった。

★今月のテイクホームメッセージ★

被災地に眼科旅を!

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

過密日程の高校サッカー選手権に必要な「戦い方改革」

[連載]二宮清純のスポーツインサイドアウト

二宮清純の「スポーツ羅針盤」

[連載]二宮清純のスポーツインサイドアウト

上位進出を狙う高い壁はW杯初戦のコロンビア戦

[連載]二宮清純のスポーツインサイドアウト

日馬富士の暴行事件で自らの手で首を絞めた相撲界

[連載]二宮清純のスポーツインサイドアウト

“ティア1”の強豪を相手に日本ラグビーは白星を挙げられるか

[連載]二宮清純のスポーツインサイドアウト

ハリルジャパンは「弱者の戦術」でどこまでブラッシュアップできるか

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第19回)

壮大な目標を立てると努力しない人材になる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

CEOのゴルフ

一覧へ
eyecatch_CEOgolf_new

[連載] CEOのゴルフ(第19回)

腰と肩を同じように回すから飛距離が出ない

[連載] CEOのゴルフ(第18回)

右足の力で飛ばすには左股関節の「受け」が必要

[連載] CEOのゴルフ(第17回)

直線的に振り下ろす感覚がスライスの原因

[連載] CEOのゴルフ(第16回)

切り返しで下へ力を加えることが飛距離の源泉

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

201710_KEIZAIKAI_P043_GLOBIS_CATCH

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年6月号
[特集]
なぜ、あの人についていくのか 求心力の秘密

  • ・松本 晃(カルビー会長兼CEO)
  • ・木股昌俊(クボタ社長)
  • ・迫本淳一(松竹社長)
  • ・水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・辻 発彦(埼玉西武ライオンズ監督)

[Special Interview]

 永守重信(日本電産会長兼社長CEO)

 売り上げ10兆円を目指す 働き方改革と人材育成の在り方

[NEWS REPORT]

◆不祥事続出でも企業が仮想通貨に群がる理由

◆通信事業親子上場に踏み切るソフトバンクの思惑

◆コーポレートガバナンスの呪縛〜お家騒動はなぜ繰り返されるのか〜

◆欧米名門大学への登竜門 ボーディングスクールが注目される理由

[特集2]

 働き方改革の闇

ページ上部へ戻る