政治・経済

2020年以降の人口減少が日本経済に与える影響

 新年を迎えるにあたり、今回はこの2014年から20年までの期間が、いかに日本にとって大事になるかという話をしたいと思います。

 現在、1億2700万人いる日本の人口は、20年までに300万人減る見通しです。全体からすれば2・5%程度の減少ですから、それほど大きな影響はないようにも見えますが、四国三県がなくなるのと同じレベルなのです。ただし、その段階では人口が大きく減ってきたことを実感できるほどではないでしょう。

 特に、今はアベノミクス効果で景気が上向いていることもあるし、東京オリンピックも控えているので、これから20年までの6年間は日本経済が縮小しているという感覚はあまりないと思います。

 しかし、20年以降、30年までの間には、さらに700万人が減る見通しとなっています。つまり、14年から30年までの16年間で、1千万人近く人間が減るということ。こうなると、かなり人が減ってきたと実感することになると思います。

 一方で、日本の個人金融資産は1670兆円、上場企業の内部留保も300兆円あって、ものすごいカネ余り状態。この先6年間で、どのようなものに投資するかということが今問われているのです。

 生産性が向上し、社会的な効率が良くなり、将来に実を結ぶような有効な投資を、この期間にどれだけできるかが、20年以降の日本の将来を大きく決めてしまうと思います。

 その大切な6年間の幕開けとなるのが14年なのです。20年以降に行う投資は、恐らく現状維持のための投資で精いっぱいになるでしょう。

 しかし、国土強靭化の名のもとに、昔のようなバラマキ公共事業を復活させるような動きが政府には見えるし、社会保障改革や税制改革にしても、若い世代にますます負担が大きくなることが分かっていながら、大規模な痛みを伴うような改革は全くプランに上がっていません。

 このままバラマキ投資を続け、改革の遅れが深刻になると、20年以降の日本は、急激にしぼんでいく経済環境と共に、世界の中で埋没していくことになるでしょう。

日本経済の縮小に合わせた施策を今すぐ始めよ

 R&D投資も含めた戦略投資を進め、なおかつお金のあるうちに痛みの伴う社会改革も断行できれば、その後の日本はたとえ少子高齢化に見舞われても、世界で生き残れる可能性が高いのです。

 例をいくつか挙げるとすれば、まず必要なのは都市部へのインフラ投資の促進と過疎地への投資の抑制です。これは一種の過疎地切り捨てになってしまいますが、人口が減っていく状況では仕方がありません。

 全体の人口が減るということは、今のように分散して生活することがどんどん非効率的になってくるからです。できるだけ人々が集約して住むことで、公共サービスのコストを上げることを考えなければなりません。

 送電コストなどのエネルギーコストを抑えることができるし、水道や道路といった公共インフラも、分散して住む場合よりも低く抑えられます。ある一定の人口密度を切るような地域に対しては、公共サービスの停止も含めて考えるべきです。

 地方からは反発もあるでしょうが、こうしたことを2010年代に始めないと、後になればなるほど実現しにくくなってしまいます。

 今でも都市部と比べると住民1人当たりに使われる税金の額は、地方の方が恵まれています。それが、人口が減ることによって維持できなくなるということです。この現実を真摯に受け止めて、都市化を進めていくべきです。

 次に、年金および高齢者に対する医療費の大幅カットが考えられます。個人金融資産1670兆円のうち、約8割を60歳以上が保有していますが、年金をフルにもらえるという状況を変えなければなりません。

 そして、世代や職業に関係ないセーフティネットの確立が必要です。これからは、高齢者だから年金をあげるということではなく、貧しい人に対してセーフティネットを張らなければならない。年金システムとセーフティネットをは分類するのです。

 その他、過去からの延長線上にある規制の全面的撤廃や、IT時代に合わせた社会制度の見直しなども求められます。医薬品のネット販売規制など、便利さを損なうような制度や法体系は今のうちに見直していくべきです。これも縮小経済になっていけばいくほど、既得権益を手放したくない側からの反対がどんどん強くなってしまいます。

 これらのことをできるうちにやっておかないと、日本はこの先50年間、大変なことになってしまうでしょう。

 

夏野剛氏の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る