政治・経済

日本が来たデフレ化の道をそのままなぞる南欧諸国

098_20140121_01 2013年はユーロ圏が「デフレ化」する1年になった。

 信じ難いことに、ギリシャのインフレ率は既に対前年比でマイナス1・9%に落ち込んでいる。また、アイルランド、スペイン、ポルトガルのインフレ率はゼロ、フランスやイタリアまでもが1%を下回っているのだ。

 特に、ギリシャのインフレ率の低下は驚異的だ。何しろ、ギリシャは国民経済の供給能力が不足し、慢性的な「高インフレ」と「貿易赤字」に悩まされ続けた国なのだ。ギリシャで物価が下落しているということは、同国の乏しい供給能力を下回るほどまでに、需要が縮小してしまったという話になる。

 当然ながら、ギリシャを始めとする南欧諸国、さらにフランス、オランダまでもが、失業率が悪化している。

 物価の下落とは、総需要の不足が主因である。総需要が不足しているとは、その分だけモノやサービスが「売れない」という話になるため、生産が行われない。

 生産が減少すると、当然ながら失業率は上昇する。特に、ギリシャの雇用環境は極端な水準にまで悪化し、最新データ(13年9月)によると、同国の失業率は27・4%だった(前月比0・1%の上昇)。13年は日本にとっては「デフレ脱却」に向かった1年だったが、ユーロは逆なのだ。

 ギリシャなど南欧諸国(および仏伊)がデフレ化しつつある理由は、簡単だ。バブル崩壊後に国民が借金返済や銀行預金を増やし、消費や投資を減らし、別の誰かの「所得」が減少している状況で、政府までもが財政均衡主義にとらわれ、消費や投資を減らしているためだ。

 すなわち、橋本政権以降の日本がたどった道を、そのままなぞっているようなものなのである。

 もっとも、現在のギリシャなどがデフレ化しつつあることは、ある意味でユーロとしては「正常なプロセス」と言えないこともない。

 南欧諸国は「互いに関税なし、通貨の為替レートの変動もなし」という、極めてフェアな条件で、ユーロ域内で競争を繰り広げ、貿易赤字を拡大させてきた。すなわち、国家間競争の負け組になったわけである。

 貿易赤字の拡大を主因とし、経常収支赤字になったユーロ加盟国は、過小貯蓄状態になり、政府は国債消化を「国際金融市場」に頼らざるを得ない。しかも、共通通貨であるため、自国の銀行すら国債を買ってくれるかどうかは分からない。

 ギリシャ国民の預金を集めるギリシャの銀行にとって、最後の借り手はギリシャ政府ではない。国民が預金してくる「ユーロ」は、ドイツ国債を買っても、オランダの企業に貸し付けても構わない。

 ギリシャの銀行の預金を借り入れるに際し、ギリシャ政府は他国の政府、企業と「競争」を強いられる。すなわち、ユーロ加盟国は、国債消化についても「フェアに市場競争」を繰り広げるというわけだ。

 貿易赤字が拡大した国は、国債金利を引き下げるために緊縮財政、構造改革といったデフレ化政策を採らざるを得ない。国民経済がデフレ化し、国民が貧困化していけば、やがては輸出競争力が回復する「はず」だ。競争力回復について、関税や為替レートに頼らない分だけ、「フェアではないか」という話なのだ。

 

ユーロの限界が露呈する

 

 上記が現状であるにもかかわらず、欧州委員会は14年の経済見通しについて、「実質GDP成長率が1・1%になる」と、随分と甘い見通しを立てている(13年の予想値は0・4%のマイナス成長である)。欧州委員会のレーン副委員長は、

「欧州経済が転換点に達したことを示す兆候が増えている。財政規律と構造改革が回復の基礎を作り出した」

 との声明を発表した。とはいえ、バブル崩壊後に「財政規律強化」「構造改革」を推進した日には、さらなるデフレ化、国民の貧困化を招くだけである。

「それでも、国際競争力が回復するのだから、いいではないか」と、欧州委員会は主張するだろうが、残念ながら日米英などが量的緩和を拡大しているため、ユーロ高により「ユーロ圏全体」の輸出競争力は14年も落ちていくことになるだろう。そして、ユーロ加盟国同士では為替レートの変動はない。

 13年をとおし、ユーロ加盟国の中ではほとんどドイツのみが気を吐き、失業率を押し下げて来た。

 とはいえ、ドイツは主要国の中では断トツで輸出依存度(財の輸出がGDPに占める割合)が大きい国だ。ドイツの12年の輸出依存度は41%に達し、ほとんど韓国並に外需への依存度を高めている。日本のアベノミクスによる円安について、欧州ではドイツのみが批判を展開したが、ここまで輸出依存が高い以上、当然と言えば当然だ。

 もっとも、日本は別に円安に誘導するための為替介入をしているわけではなく、単にデフレ対策として量的緩和を推進しているにすぎない。ドイツが通貨高を嫌うならば、自らも金融政策を拡大すればいいのだ。

 しかし、ユーロ圏の国は金融政策の権限を欧州中央銀行に委譲しており、各国が独自の量的緩和政策を推進することはできない。

 14年は、頼みのドイツまでもがユーロ高で輸出競争力を喪失していき、ドイツ以外の国々ではデフレ化が進行し、最終的にはユーロという共通通貨のシステム自体が行き詰る年になると予想している。

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