文化・ライフ

坪田一男

(つぼた・かずお)慶応義塾大学医学部教授。1955年東京都生まれ。慶応義塾大学医学部卒業後、日米の医師免許取得。米ハーバード大学にて角膜フェローシップ修了。角膜移植、ドライアイ、屈折矯正手術における世界的権威。再生角膜移植のほか、近視・乱視・遠視・老眼などの最先端の治療に取り組む。近年は研究領域を抗加齢医学=アンチエイジング医学に広げ精力的に活動。日本抗加齢医学会理事、日本再生医療学会理事など。著書に『老けるな!』(幻冬舎)、『長寿遺伝子を鍛える』(新潮社)、『ごきげんな人は10年長生きできる ポジティブ心理学入門』(文春新書)ほか多数。

 

レーシック手術は、NASAも安全性を公認

 あなたはレーシックにどんなイメージを持っているだろう?

 2013年12月4日、消費者庁は「レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を十分に受けましょう」という通達を出し、メディアに大きく取り上げられた。過去5年間で同庁の事故情報データバンクに危害情報が80件寄せられたほか、手術経験者へのアンケート調査で4割以上の人が何らかの不具合を感じているというのだ。この通達を受け、僕が代表を務めさせていただいている「安心LASIKネットワーク」は、即座に遺憾の意を表する声明文を発信した。

 確かに、モラルを欠いた非常識な石によるずさんな治療や、インターネットなどで安価な治療を提示している商業ベース重視の施設による治療については、その治療の質に僕たちも大きな懸念を抱き、ずさんな治療による、いわゆる「レーシック難民」の存在も、重大な問題ととらえている。特に、09年に報道された感染症が多数発覚した施設の事例は、その心配が現実となってしまったものであり、早期に正しい情報を発信しなければとの切実な思いから、「安心LASIKネットワーク」も誕生した。

 だが、「600人を対象としたアンケート調査の4割に問題があった」という消費者庁の発表やそれにともなう報道は、科学的根拠をともなわない不明瞭なものであると言わざるを得ない。

 そもそも、レーシック手術は既に20年以上の歴史があり、世界で何百万件も行われている。そんなに危ない手術であればこれほど多くの治療が行われているはずがない。アメリカ眼科学会でも、現存の手術の中でも「もっとも安全で満足度が高い手術」と位置付けているほどだ。

 米国では陸・海・空軍のパイロットもレーシックが認められている。NASAでも、昔はレーシック手術を受けた人は宇宙飛行士になれなかったが、今では安全性が認められ、レーシック手術を受けた人も宇宙飛行士になれる。

 ただし、どんなに優れた安全な技術にも、安全性の範囲というものがある。例えば、飛行機は安全な乗り物だが、飛行機で月には行けないし、東京から横浜へ行くときに飛行機で行こうという人はいないだろう。また、台風が来ていれば当然運休になる。同様に、レーシックにも適応する範囲というものがあるということを、ぜひ知っておいていただきたい。

適応検査や経過観察もレーシック技術のうち

「安心LASIKネットワーク」が発行している『安心レーシック完全ガイド~レーシックで後悔しないための必読書~』(保健同人社)

「安心LASIKネットワーク」が発行している『安心レーシック完全ガイド~レーシックで後悔しないための必読書~』(保健同人社)

 レーシックもひとつの技術だが、その技術は単に手術のことだけを指すのではない。術前に行う適応検査や、術後の定期検診などによる経過観察も含めてひとつの技術として成立している。

 例えば、適応検査では、角膜の厚みや形、眼圧、視神経などの状態がレーシックに適しているかどうかを調べる検査を何重にも行うため、中にはそれが面倒だ、大変だという人もおられる。だが、これがとても重要だ。その結果、検査を受けられた患者さまのうち、15〜20%にはレーシック以外の手術をおすすめしたり、「やはり、あなたはコンタクトのほうがいいですよ」とおすすめすることもある。

 しっかりとした眼科専門医や施設なら、こうした検査を十分に行わずに、受診してすぐ手術するなどということは、まずあり得ない。

 また、「よく本を読むから近くがよく見えるようになりたい」とか「ゴルフをするから遠くがよく見えたほうがいい」「近くも遠くも裸眼で見たい」など、術後の「見え方」の希望を明確にし、しっかり相談しておくことも大切だ。現在では、こうしたさまざまなニーズに応えられる技術が出てきたし、レーシック以外にもさまざまな屈折矯正手術の選択肢があるからだ。

 レーシックを検討されている方は、こうした術前の検査や相談、術後のフォローまで、トータルで医療としてしっかり行っている施設、眼科専門医を選んでいただきたい。そのために、ぜひ「安心LASIKネットワーク」ではHPやガイド本『安心レーシック完全ガイド』(保健同人社)でも、レーシックを受ける前の「10のチェックリスト」を提示しているので、ぜひご活用いただきたい。

 ちなみに、「坪田は眼鏡をかけているじゃないか」という報道もあるが、これはドライアイを防ぐための保護用ダテ眼鏡だ。僕の宝物である子どもたちもレーシック手術をしているので、そこはどうぞ誤解のないようお願いしたい。

★今月のテイクホームメッセージ★

 レーシックを検討中の方は、ぜひしっかりした信頼できる施設で!

筆者の記事一覧はこちら

【文化・ライフ】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年2月号
[第45回経済界大賞]
  • ・[大賞]新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・[特別賞]小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
  • ・[優秀経営者賞]水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・[優秀経営者賞]青野慶久(サイボウズ社長)
  • ・[ベンチャー経営者賞]及川智正(農業総合研究所会長CEO)
  • ・[ベンチャー経営者賞]山本正喜(ChatworkCEO兼CTO)
  • ・[グローバル賞]ハロルド・ジョージ・メイ(新日本プロレスリング社長兼CEO)
  • ・[100年企業賞]高松建設(高松孝年社長)
[Special Interview]

 新浪剛史(サントリーホールディングス社長)

 創業精神の共有から始めた米ビーム社との統合作業

[NEWS REPORT]

◆海外メーカーを次々と買収 キリンがクラフトにこだわる理由

◆売上高は前期比3割増 止まらぬワークマンの快進撃

◆第3の都市はどこに? 「スタートアップ拠点」争奪戦

◆寿司屋の大将は3Dプリンター? 電通が画策する未来の飲食

[特集]

 もっと眠りたい

 明日のパフォーマンスを劇的に高める

 一流の睡眠術

ページ上部へ戻る