テクノロジー

世界最大の家電見本市「2014 International CES」は、ウェアラブルデバイスに注目が集まる一方で、一部には、「目新しい技術訴求はなかった」という厳しい指摘もあった。今年のCESは世界に何を発信したのか。 (ジャーナリスト/大河原克行)

各社がウェアラブルデバイスを提案

 世界最大の家電見本市「2014 International CES」(以下、CES)は、米国時間の14年1月7日から、米ラスベガスで開催された。

 東京ドーム4個分に当たる約200万平方㌳の会場に3200社が出展し、過去最大の展示規模となった今回のCESは、全世界から15万人以上が来場。4Kテレビやスマートテレビ、最新タブレットなどのほか、身につけて操作するウェアラブルデバイスを各社が展示。さらに、トヨタやゼネラルモーターズ、フォード、アウディといった世界の主要自動車メーカーが相次いで出展し、エレクトロニクス産業と自動車産業の結び付きの強まりを感じることができるイベントとなった。

 今年のCESでは、ソニーの平井一夫社長が基調講演に登壇したのも大きなトピックスだった。平井社長は、ベータマックスなど過去の失敗例にあえて触れながら、「失敗があるからこそ、成功を生み出せる」とし、「リスクを取ることが良いとされる風土が必要。むしろ、リスクを取ることが評価されなくてはならない」とソニーの体質転換の方向性について語った。そして、「ソニーは何をする会社なのか、という問いに対して、感動を伝える会社であり、好奇心を刺激する会社であるということを訴えることができた」と、基調講演の成果を自己評価してみせた。4Kの短焦点プロジェクターを利用し、壁に147型の映像を投影する「Life Space UX」など、ソニーらしい製品の創出を、世界に向けてコミットした講演とも言え、今後の同社のモノづくりへの期待が高まる内容だったといえよう。

パナソニックの4Kウェアラブルカメラ

パナソニックの4Kウェアラブルカメラ

 展示会場の中で注目を集めたのが、ウェアラブルデバイスだ。

 一口にウェアラブルデバイスと言っても各社の展示はさまざま。Google Glassが先行した眼鏡型、ブレスレットタイプを含む腕時計型、頭や耳、腕などに取り付ける装着型、ペンダントタイプなどのアクセサリー型などに分類することができる。また、用途に関しても、心拍数やカロリー消費などを測る活動量計として利用できる「ヘルスケア用途」、ネットワークに接続しさまざまな情報を表示したり、ビジネスアプリの操作、白物家電の制御を想定した「情報端末用途」、カメラ機能を搭載し、情報を記録する「ライフログ用途」のデバイスなどに分類することができるだろう。そして、これらの用途を組み合わせた提案を行っているウェアラブルデバイスもある。

 日本メーカーでは、ソニー、パナニック、東芝、セイコーエプソンなどがウェアラブルデバイスを展示しており、各社の特徴を生かしたものとなっていた。

 ソニーは、腕時計型および眼鏡型のウェアラブルデバイスを展示したほか、ヘルストラッキングデバイスと呼ぶ「Core」を発表した。Coreは指先サイズの端末で、これをブレスレット型の端末に装着することで、活動量計として利用できるという提案してみせた。

 パナソニックは、耳と腕部分に装着する4Kウェアラブルカメラを発表し、ハンズフリーで日常を撮影するといった提案を行った。パナソニックの津賀一宏社長は、「これまでのカメラの使い方は、撮られる側が撮られることを意識していた。ウェアラブルカメラによって、より臨場感がある、自然なシーンを撮影できるようになる」と語り、「ウェアラブルデバイスは、豊かな生活を送るために欠かせないツール。パナソニックにとっても重要な製品になる」と語る。

 具体的なソリューションを展示したのが、セイコーエプソンである。第2世代のスマートグラス「Moverio BT︲200」を発表し、エアコンの修理の際に、眼鏡型のディスプレー上に修理方法を表示したり、採血の際に血管の位置をディスプレー上に表示するといったデモストレーションを紹介した。ここまで実用性を展示した例はほかにはなかった。

 だが、多くの展示が試作品段階であり、まだ改善の余地が多いのも事実だ。ソニーの平井社長は、「腕時計をしているのにもかかわらず、もう一方の腕に腕時計型のウェアラブルデバイスをするのも不自然。しかし、気に入った時計を外してまでウェアラブルデバイスをつけてもらうことはできない」とする。今後は、アクセサリー業界やファッション業界との競合や協調といった環境が生み出される可能性もありそうだ。

ウェアラブルデバイスによる家電製品の制御等、韓国勢が先行

 一方で、4Kテレビが各社の花形製品となったのは昨年と同じだ。さらなる高画質化や、21対9による5K(5120×2160ドット)化への進化、さらには「カーブド」と呼ばれる湾曲したディスプレーが目玉となった。韓国サムスン電子やLG電子は、リモコンを使ってフラットからカーブドへとディスプレー形状を変化させる製品を展示。パナソニックは凹型と凸型のカーブドディスプレーを組み合わせて、曲線を描いたデジタルサイネージを提案した。

 こうした中、時代の変化を象徴する新たな技術展示や、将来の発展に期待を持たせる製品が少なかったのも事実だ。

 視察したパソナニックの津賀社長は、「今年のCESは、目新しい技術訴求があった年ではなかった」と総括。昨年、各社が有機ELディスプレーを展示して注目を集めたのに比べて、話題性のある技術展示はなかったことを指摘した。

 その点では、技術志向の強い日本勢よりも、マーケティング志向が強い韓国勢の奮闘ぶりが際立っていたこととも合致する。カーブドテレビの提案や、ウェアラブルデバイスによる家電製品の制御など、見せ方という点では韓国勢の先行ぶり感じたのは事実だ。技術進化のない年に、日本勢がどんな見せ方をするかが問われた今年のCESとも言えるが、その点では課題を残した展示になったといえそうだ。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る