文化・ライフ

小学校時代の夢を叶え、セリエAの名門に入団した本田圭佑選手

小学校時代の夢を叶え、セリエAの名門に入団した本田圭佑選手

 この1月、CSKAモスクワ(ロシア)からイタリア・セリエAの名門ACミランに移籍した日本代表・本田圭佑は、最近では珍しい〝有言実行の男〟である。

 彼は小学校の卒業文集で、セリエAへの憧れを、こう綴っている。

 〈ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる。

 世界一になるには、世界一練習しないとダメだ。だから、今、僕はガンバっている。今はヘタだけれどガンバって、必ず世界一になる。

 そして世界一になったら、大金持ちになって親孝行する。

 Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれて、ヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって、10番で活躍します。〉

 読んでいて、ふとイチロー(ヤンキース)のことを思い出した。彼も小学6年の時に、将来を暗示するような作文を書いている。

 〈ぼくの夢は、一流のプロ野球選手になることです。

 そのためには、中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。

 活躍できるようになるためには、練習が必要です。

 ぼくは3歳の時から練習を始めています。

 3歳〜7歳までは半年くらいやっていましたが、3年生の時から今までは、365日中、360日は激しい練習をやっています。

 だから、1週間中で友達と遊べる時間は、5〜6時間です。

 そんなに練習をやっているのだから、必ずプロ野球選手になれると思います。

 そして、中学、高校と活躍して、高校を卒業してからプロに入団するつもりです。(中略)

 そして、ぼくが一流の選手になって試合にでられるようになったら、お世話になった人に招待券をくばって、おうえんしてもらうのも夢の一つです。

 とにかく一番大きな夢はプロ野球選手になることです。〉

 夢は「願えばかなう」というほど単純なものではない。子どもの頃から、夢をかなえるためには「世界一」の練習や「激しい練習」が必要だと、2人とも覚悟していた。頂点を見据えつつも、浮ついたところが一切ないのも2人の共通項である。

 本田が幼かった頃、ミランは我が世の春を謳歌していた。

 1980年代後半、ミランを牽引していたのはルート・フリット、マルコ・ファンバステン、フランク・ライカールトのオランダトリオだ。3人の活躍で88〜89、89〜90シーズンはUEFAチャンピオンズリーグを連覇している。

 また89年から94年にかけて、日本開催のトヨタカップに4度出場し、2度「世界一」に輝いている。まさにミランの〝ロッソネロ〟(赤と黒)は強さの象徴だった。

 そして、その中心にいたのが背番号10のフリットだった。ドレッドロックヘアという独自のヘアスタイルとともに、その華麗なテクニックは世界中を魅了した。

 恐らく本田少年の網膜には、フリットの雄姿が焼きついていたはずだ。だから「10番」をつけるにあたり、こう語ったのである。

 「自信がないと要求しない。ダメなら反動がある。でも、10番をつけるチャンスがあるのに他の番号を選びますか?」

 それを受けて、Jリーグの生みの親である川淵三郎(現日本サッカー協会最高顧問)は次のような感想を述べた。

 「Jリーグをつくった20年前、世界で一番レベルが高かったのはイタリア。その中心であるACミランでエースナンバーをつける日本人選手が出てくるとは100年先、いや未来永劫出てこないと思っていた」

 ところが、出てきたのである。ミランのアドリアーノ・ガッリアーニCEOは、わざわざ「ケヴィン・プリンス(ボアテング)が(ミランを)退団した時、われわれは彼(本田)のために10番をとっておこうと考えていたんだ」と語った。

 しかし--。かつての名門も現在は低迷が続いている。直近5シーズンで獲得したタイトルは10〜11シーズンの〝スクデット〟(セリエAの優勝)のみ。チャンピオンズリーグでも11〜12シーズンはベスト8、昨季はベスト16と精彩を欠いている。

 エースナンバーを背負う本田には必然的に名門再建の役割も求められる。つまり、ただ点を取ればいいとか、アシストをすればいいという話ではないのだ。

 もちろん、本人は誰よりもそのことを自覚している。

 「自分ができること、やらなければならないことは山ほどある」

 目指すべきものが多いということは、それをクリアした時の達成感は、より大きなものとなる。有言実行の男にとって、それは望むところだろう。

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