政治・経済

シャープが髙橋興三社長をはじめとする新体制に移行してから半年がたった。構造改革により業績は回復基調にあるが、現体制で2年目を迎える今年は再生に向けた正念場となる。インタビューに応じた髙橋社長に今年の意気込みを聞いた。 (本誌/村田晋一郎)

14年度は事業拡大に舵を切る

行動変革宣言カードを手に語る高橋興三・シャープ社長

行動変革宣言カードを手に語る高橋興三・シャープ社長

 シャープは、昨年5月に3カ年の中期経営計画を策定し、今年は同計画の2年目となる。初年度の2013年度を「構造改革ステージ」、14年度を「再成長ステージ」と位置付けているが、髙橋興三社長は、13年度を3カ月残した14年1月の段階から、再成長ステージに入っていく方針を打ち出した。

 もちろん構造改革は企業にとって永遠のテーマであり、シャープとしても構造改革を継続していくが、それと並行して事業を伸ばしていくことに注力するという。

 再成長ステージへの展開を急ぐ理由としては、外部支援による財務基盤の改善がある。昨秋の公募増資に加え、一昨年からの米クアルコム、韓国サムスン電子、マキタ、デンソー、LIXILグループを引受先とする第三者割当増資により、総額約1500億円の資金提供を受けた。シャープの財務体質はまだ十分とは言えないが、1年前と比べると、ある程度は改善されてきている。外部からの支援を受けた以上は、早急に再成長を果たすことが求められる。その意味で、14年度の始まりを待たずに次のステージに移行する方針だ。

 再成長にあたって、髙橋社長は「事業の入れ換えが重要」だと語る。近年のシャープは「液晶一本足打法」と揶揄されるほど、液晶事業に傾倒し、その失敗が近年の苦境を招いた。その反省を踏まえ、事業の入れ換えにおいても、「いきなり液晶事業すべてと入れ替わるような大きなタマを狙うつもりはない」という。例えば、ソーラー事業のような巨大市場は参入企業が多く、あっという間にレッドオーシャンになってしまうからだ。

 そこで、中期計画発表時に示した新規事業が鍵を握る。具体的には、ヘルスケア・医療、ロボティクス、スマートホーム/モビリティ/オフィス、食/水/空気の安心安全、教育の5つ。中期計画では15年以降と発表したが、既に始まっている事業もあり、例えばヘルスケア・医療分野では微生物検出センサを製品化している。また、昨年、第三者割当増資を受けたマキタ、デンソー、LIXILともスマートホームなど新規事業の領域でさまざまな議論を進めているという。

 新規事業については、シャープが持つ基本技術をどれだけ広げていくかがポイントだという。新規事業の1つ、ロボティクスについて言うと、ロボティクスに必要なリアルタイムOSの技術を、シャープはもともと複写機で持っていた。また、画像処理技術やディスプレー技術、メカトロニクス技術、化学系の技術もある程度持っている。こうした根幹の技術を生かして、新規事業の製品化を進める。

 また、製品開発は、14年の市況を睨んでいる。日本市場では4月に消費税が引き上げられるため、1〜3月は上振れするものの、4月以降はその反動で落ち込むことが予想されている。単純に増税前は増税後より製品価格が3%安いため、極端な話、4月までに必要とされる商品は全部売れると考える。このため、4月以降には、新しい機能を有する新しい製品を出さなければいけない。それが国内の落ち込みに対するポイントだという。この新しい製品には新規事業領域の製品もいくつか加わってくる見込みだ。

行動変革宣言で新たな文化を創造

 髙橋社長は、社長就任時に、「今日・明日・明後日」の3つのタイムラインで仕事をすることを求めた。「今日」は2年後までの事業で具体的には中期計画の遂行、「明日」は3〜5年後の事業で新規事業の展開が該当する。そして「明後日」は5〜10年後の事業となるが、今年は「明後日」に向けた取り組みを強化する。それが文化の変革だ。

 髙橋社長はこれまでも、「シャープの会社の風土、文化を変えていかなければいけない」と訴えてきた。シャープの経営信条、経営理念は素晴らしいものがあるが、それが形骸化し、「けったいな文化」になっているため、変えていきたいという。

 14年の年頭にあたり、その文化の変革をさらに進めていくことを強調した。シャープが再生と成長を実現するためには、社員一人ひとりのマインドと行動を変革することが必要であるとし、具体的な行動規範として「行動変革宣言」を制定。全社員が行動変革宣言を記した名刺大のカードを携行するが、このカードに社員各自の行動変革宣言を記し、今年どのように行動を変えていくかを明らかにし、個々の意識の変革を求めている。

 髙橋社長の「行動変革宣言」は「『文化を変える』から『良い文化を創る』へ」というもの。髙橋社長は自身の意気込みを次のように語る。

「昨年は文化を変えると言ってきたが、考えてみると、良い文化もあり、それは別に変えるのではなく、伸ばしていく必要がある。また、悪い文化を変える一方で、足らない文化もある。そういう部分で、良い文化を創っていく」

 社長に就任してから半年が過ぎたが、髙橋社長が今思うことは、「社長の仕事は基本的に駅伝のランナー」だという。今の社長が次の社長に襷をつなぐ、そして次の社長がその次の社長に襷をつないでいく。

「自分の寿命の間にすべてが終わるものではなく、また、自分の寿命よりも永く会社を保っていきたい。そのために、今の社長がするべきこととして、今伸びる事業をやるだけでは駄目です。もちろん今伸びる事業をしないといけないが、それだけでなく、次の100年くらい続く会社の一番の礎を作りたい。そしてそれを次の社長が継いでいってくれれば非常にありがたい」

 シャープが「明後日の会社」となるための文化的な基盤の強化も並行して注力していく。

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