政治・経済

過去とは違う局面を迎えた韓国経済

 2013年。この1年ほど、過去に「日韓関係」が悪化した年はなかったのではないだろうか。

 筆者は何しろ『本当はヤバイ!韓国経済 ︱迫りくる通貨危機再来の恐怖︱』(彩図社 07年6月)で作家デビューを果たしたため、韓国や日韓関係の状況は常に情報収集、分析を続けてきた。とはいえ、13年ほど日韓関係が袋小路に突入した年は記憶にない。

 11月29日、東京で日韓議員連盟総会が2年ぶりに開催された。韓国側から約30人、日本側から約100人の議員が参加したのだが、韓国サイドは日本の国会議員たちの「冷たい態度」に慄然となったという。

 総会に出席した韓国の姜昌一議員は「日本国内のムードがこれほど悪いとは驚かされた。日韓関係は最悪の時期と言って間違いではない」と、発言している。朴槿恵大統領本人が、日本を貶めるべく世界で「悪口」を言って回っている状況である以上、当たり前と言えば当たり前だが。

 さて、大統領自ら日本国民の神経を逆なでする言動を続けている韓国であるが、経済がいよいよ「断末魔」の局面に入りつつある。断末魔とはいっても、韓国政府がデフォルト(債務不履行)に陥るという話ではない。それよりも、さらに恐ろしい事態、すなわちデフレーションが始まろうとしているのである。

 11年前半の韓国は「インフレ率上昇」に悩んでいた。何しろ、李明博大統領(当時)が年明け早々に「物価との戦争」宣言をしたほどなのである。

不動産バブル崩壊で韓国のデフレ化が進行

 それが、今や韓国の消費者物価指数は1%を切り、アジア通貨危機後のIMFによるデフレ化政策に苦しめられていた1999年9月以来の水準に下がってしまった。なぜか。もちろん、韓国政府がデフレ化政策を採っているためではなく、単に「デフレになるイベント」が発生したためだ。すなわち、不動産バブル崩壊である。

 日本の例からも明らかなとおり、デフレ化した国では国民の実質的な所得はもちろん、名目賃金も下がっていく。国民が働き、稼ぐ所得の「額面」が減っていくのである。

068_20140107_01 意外に知られていないが、現在の韓国は賃金水準が名目金額、実質金額共に下落している状況にある(経済のデフレ化が始まった以上、ある意味で当然なのだが)。韓国の雇用労働部によると、13年1月時点の韓国の1人当たり月平均賃金総額(常用勤労者5人以上の事業場)は対前年同月比で6・6%の下落であった。さらに、消費者物価上昇分を考慮した実質賃金総額は、対前年同月比で7・9%下落した。

 12年1月時点の賃金総額は、対前年同月比で名目、実質共に10%前後の増加だった。明らかに、12年以降の韓国経済は「過去とは違う」局面を迎えているのだ。

韓国が「3度目の通貨危機」に陥る可能性

 韓国のデフレ化は、国内の名目賃金を引き下げ、内需を縮小させる上に、大手輸出企業にとっても厳しい経済環境となる。何しろ、現在の米国は量的緩和を継続している。

 米国のFRBが発行した「あふれかえるドル」は、ユーロや新興経済諸国に流れ込み、各国で株価を押し上げている。ユーロでは現在、失業率が12・2%に上昇している「大不況」下にもかかわらず、「ユーロ高(ドル安)、株高」が発生している。明らかに、投資先を求める米国・ドルがユーロに両替され(ユーロ高・ドル安)、各国の株式市場に向かっているのである。

 同じ現象が、韓国でも見られる。韓国の物価上昇率は、日米欧といった先進国を除けば、最も安い水準にある。物価が上がらないとは、「通貨価値が落ちない」という話だ。ドルの運用先を求める投資家たちは、新興経済諸国で最も「通貨価値が落ちない」ウォン建ての投資を先行し、ドルが韓国ウォンに両替され、ウォン高・ドル安が発生しているのだ。今後、米国の量的緩和が終了すると、ドルの巻き戻しが発生する可能性が濃厚だ。下手をすると、FRBが量的緩和の終了を「示唆」するだけで、各国に投じられたマネーがドルへと両替されていくことになる。

 韓国の場合は、アジア通貨危機、リーマンショックと、過去に2度の通貨危機を経験している。少なくとも韓銀などの通貨当局は、現在の「ウォン高・ドル安」が、何らかのきっかけで反転し、一気に通貨が暴落する「3度目の通貨危機」に陥る可能性を考慮しているように見える。

 韓国は13年10月、UAEとマレーシア、そしてインドネシアと通貨スワップ協定を締結し、さらにオーストラリアともスワップ協定締結を目指すという。これら4カ国に共通する特徴は「資源国」であることだ。要するに、韓国は次なる通貨危機時に、最低限の資源を一定の為替レートで輸入するための「保険」をかけているわけだ。

 日米との関係が悪化する中、韓国は「さらなるデフレ化」もしくは「○○ショックによる3度目の通貨危機」と、2つの危機に備える必要があるのだ。デフレ化と通貨暴落は、危機の方向性としては真逆だが、いずれにせよ韓国は経済的に「最も依存している」日本との関係を悪化させて構わない状況にはない。

 この冷徹な真実を大統領が認識しない限り、14年の韓国は2つの危機のいずれかに向けて転げ落ちていくことになるだろう。

筆者の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

家族葬のファミーユは家族や親族など故人の近親者だけで施設を貸し切って行う「家族葬」のパイオニアだ。創業者・高見信光氏は異端児と言われながらも旧態依然とした業界を変えてきた。その思いに共感し、異業種のリクルートから転じて社長を引き継いだ中道康彰氏も業界の常識を打ち破るため奮闘している。文=榎本正義(『経済界』2…

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年10月号
[特集] 進撃のスタートアップ
  • ・スタートアップ・エコシステムの活性化
  • ・[スパイバー]2万5千円のTシャツは完売 実用化が迫った人工クモの糸
  • ・[Rhelixa]エピゲノム関連の研究・開発で人類の役に立つ
  • ・[チャレナジー]台風発電でエジソンになる ビジネス展開は「島」から
  • ・[エイシング]エッジで動く超軽量AIでリアルタイムに予測制御
  • ・[キャディ]製造業に調達革命! 町工場は赤字から脱出へ
  • ・[Clear]目指すは日本酒産業のリーディングカンパニー
  • ・[空]「値付け」の悩みを解決するホテル業界待望のサービス
  • ・宇宙ビジネスに民間の力 地球観測衛星やロボット開発
  • ・71歳で環境スタートアップを立ち上げた「プロ経営者」
[Special Interview]

 荻田敏宏(ホテルオークラ社長)

 「The Okura Tokyo」をショーケースに海外展開を進めていく

[NEWS REPORT]

◆戴正呉会長兼社長を直撃! なぜ、シャープは復活できたのか?

◆アスクル創業社長を退陣させた筆頭株主・ヤフーの焦り

◆サービス開始から3カ月で撤退 セブンペイ事件の背景にあるもの

◆絶滅危惧種ウナギの危機 イオンが挑むトレーサビリティ

[特集2]

 富裕層は知っている

・富裕層の最大の使い道は商品ではなく次代への投資

・シンガポールからケイマン諸島まで 資産フライトはここまで進化した

・年間授業料100万円超は当たり前 教育投資はローリスクハイリターン

・最先端の人間ドックは究極のリスクマネジメント

・家事代行サービスで家族との時間を有効活用

ページ上部へ戻る