政治・経済

視点を変えると見えてくるものがある

 物事には始まりがあれば必ず終わりがある。終わりがあればその後に新たな始まりもある。1度限りの人生なのだが、案外、無限ループのような思いをすることがよくあるものだ。このたび筆者は44年間の大和証券での勤務を終え、東京証券取引所の社長に就任することになったがまさに終わりが来て新たな始まりが来たのだと思う。

 さて、私はSF小説やSF映画が好きである。たくさんの映画を見てきたがオープニングでは「2001年宇宙の旅」の音楽が忘れられない。また、ラストシーンでは、「猿の惑星」の見事なストーリー展開と衝撃的な結末が最も印象深かった。ご存じの方も多いだろうが地球に帰還中の宇宙飛行士がある惑星に不時着してみると、そこは猿が人間を支配している星だった。猿に追われ、チャールトン・ヘストン演じる主人公が命からがら追手から逃げて、サル社会で「禁断の地」と呼ばれる海辺にたどり着いてみると、そこに砂に埋もれた自由の女神像を発見し絶望の叫び声を上げて終わるのである。戻ってきたのが実は地球だったことが分かるというオチだ。一見、荒唐無稽にも思える物語が人気を博したのは、当時はベトナム戦争やエスカレートする米ソ冷戦による核戦争の恐怖が日常的に感じられる時代であったことも大いに影響していたと思われる。その後冷戦が終結し原子力の平和利用としての原子力発電所の建設が進み本当に人類が原子力をコントロールできるか否かについての議論は案外忘れられていたのかもしれない。今回、東日本大震災とそれに伴う津波で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、あらためて原子力エネルギーの安全性の議論が真剣になされていることは大変良いことではないだろうか。ぜひとも安心安全な原子力の利用技術を確立してほしいものである。

 ところで、この映画が日本で公開されたのは1968(昭和43)年4月で、筆者が大和証券に入社する1年前である。当時は証券会社といってもまだまだ〝株屋〟といわれた時代の名残が色濃く、営業現場での顧客利益よりも手数料収入を追求する営業姿勢には非常に抵抗を感じたものである。そうしたものに馴染めなかったことが米国への留学を目指すことへとつながり、そこで金利や為替、あるいはシステムについてより幅広く勉強することにもなった。米国で現在価値、将来価値、といった「複利」の概念を学び帰国後の商品開発に生かすこともできた。現在のように実質ゼロ金利では複利効果を考えても寂しい限りだが「複利」は人間関係にも似ている。計算づくで人とお付き合いをしているわけでは決してないが信頼が信頼を生む「複利」効果に何度助けられたか分からない。新しい会社ではどんな出会いを得られるか分からないが、日本取引所グループの皆さんと共にわが国資本市場の発展に少しでも役立つように取り組んでいきたいと思っている。

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