政治・経済

日本マクドナルドホールディングスが苦境から脱することができずもがいている。リーマンショック以降、価格競争に翻弄されてきた外食産業にあって〝一人勝ち〟の名を欲しいままにしてきた同社だが、今や業績低迷が常態化。果たして再生の処方箋は見つかるのか。 (本誌/大和賢治)

来店客数の激減

剣が峰に立たされた、原田泳幸・日本マクドナルドHD CEO

剣が峰に立たされた、原田泳幸・日本マクドナルドHD CEO

 日本マクドナルドホールディングスが2013年12月9日に発表した11月のセールスレポートが波紋を呼んでいる。同発表によると既存店売上高が対前年比10・4%と5カ月連続で、同客数に至っては7カ月連続の14・4%ものマイナス幅を記録したのである。

 特に注目したいのは同社の成長戦略の軸ともいうべき来店客数の激減だ。同社のビジネスモデルは既存客に対しては低価格商品の充実や携帯クーポン等で、並行して新規顧客に対しては無料コーヒーやマックカフェでそれぞれ集客を拡大し、粗利の高い商品への購買に誘導するという手法だ。しかし、客数の前年割れが始まった12年11月から昨年の11月までの1年間で対前年比を超えたのは昨年3月、4月のわずか2カ月だけ。数字だけを見ると〝外食一人勝ち〟と言われてきた同社の勝利の方程式が既に破綻をきたしているようにも見える。

 来店客数激減の要因に対し同社では次のように分析する。

「われわれの強さは例えばQSCの徹底や100円メニューの充実などに代表されるようにお得感や納得感を追求してきたことです。しかし、ここへきてIEO(手軽に食事をできる場を提供する)市場の中で、競合が多種多様な施策を展開し弊社とのギャップが縮まってきています。そういう外的環境からこれまでの優位性が弱まってきたと考えています。もうひとつは短期的なディスカウントキャンペーンの実施の有無がやはり大きく影響しています」(日本マクドナルド広報)

 なるほど敗因は競合との競争環境の変化にあるのかもしれない。特に近年、コンビニの中食市場の攻略には目を見張るものがある。主力の弁当にしても次から次へと新製品が投入され、顧客を飽きさせない工夫を凝らす一方で、価値訴求し、高価格商品も怠らず誘導にも成功している。さらに揚げ物等、ファストフードでも、店内調理が一般化し、その出来立て感が高い顧客満足度を実現している。最近、注目されている1例を挙げるとコーヒー。昨年1月にセブン︲イレブンが販売を開始した「セブンカフェ」。1杯100円で本格的なコーヒーが味わえることからセルフ式にもかかわらず、発売後7カ月で累計1億杯を突破したのは何よりの証左だ。

 「今や外食産業には、コンビニ脅威論が飛び交っています。特にコンビニの新設店舗にはイートインコーナーが設けられる傾向が見て取れます。これは明らかに中食だけにとどまらず、あらゆる時間帯で外食産業から顧客を奪う狙いがあるのでしょう。コンビニのイートインコーナーの売りは手軽さ、昼食はもちろん、残業で小腹がへった時などは好都合な施設です。今後、コンビニはイートインに対応するべく商品を続々と投入するはずです」(業界関係者)

 日本マクドナルドの苦戦は、これら外的環境の変化が大きく影響していることは確かだが、既に兆候は一昨年の11月あたりから顕在化していた。かなり以前より状況は認識していたにもかかわらず、今に至っても一向に状況は好転しない。対応が後手に回っているのではないか。

 前述した「セブンカフェ」の例を見ても、絶対的な需要はある。顧客の潜在ニーズをくみ取れていないと言われても仕方ない。

 「確かに顧客ニーズに対して、今後はもっと積極的にアプローチしていくべきなのかもしれません。しかし、数字的に苦戦しているのは短期的にディスカウントキャンペーンを抑制してるという背景があるのです。

 現状で言えば、弊社は長期的に成長というものを見据えてキャンペーン自体の改革に着手しているのです。これは次代の成長に向けたチャレンジであり、決して対応が後手に回ったというわけではありません。ディスカウントキャンペーンを実施していけば短期的には売り上げに大きく寄与します。しかし、現在、必要なのはむしろQSCを根本とする商品開発やサービスなのです。フォーカスはあくまでも、中長期の成長にあります。そういう意味では短期的な売り上げ減は織り込み済みなのです」(広報)と同社では強気の姿勢は崩さない。

起死回生の一手は?

 対策として同社では、13年12月11日に「クォーターパウンダー ホワイトチェダー」、「チキンフィレオ ホワイトチェダー」と「チーズポテトディップ」を発売してセールス強化を図る一方、ファミリー対策として13年11月に販売し好評だった、ハッピーセット「スーパーマリオ」の後継商品として同12月には「ポケモン」関連の商品を展開している。

 しかし、一方で同社の一連の商品戦略には「目新しさがなく、顧客満足度という点で今ひとつ」という厳しい指摘もある。

 記事執筆段階(12月19日)で内容は定かではないが、12月25日に事業会社である日本マクドナルドCEOであるサラ・カサノバ氏より「2014年度商品ラインナップ」と「新商品試食会」が実施される。同社広報いわく「大きなボリュームの商品」ということから期待したいところだ。

 カサノバ氏は、日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸CEOの意を受け、昨年9月に事業会社のCEOに就任した人物。そこで取り沙汰されるのが原田氏の進退問題。退任の可能性について、同社広報では、「そんな話は聞いたこともない」 ときっぱりと否定したが、株式の過半数を握るのは米国本社であるだけにドライな人事が遂行される可能性は否定できない。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る