マネジメント

(『経済界』2019年11月号より転載) 

河野貴輝氏

ティーケーピー社長 河野貴輝(かわの・たかてる)

 

政府が推進する「働き方改革」をサポートするさまざまな取り組みの中でも、多様な働き方を実現するフレキシブルオフィスに注目が集まっている。創業時から「空間シェアリングビジネス」に取り組んできたティーケーピーは、このフレキシブルオフィス市場を牽引する存在として着々と事業基盤を固めている。

 

日本リージャス買収により成長戦略が加速

 

 今年4月、ティーケーピーがレンタルオフィス国内最大手の日本リージャスを傘下に収めると報じられ、約470億円という買収金額の大きさが話題を呼んだ。

 「経営の安定性を高めるためにも、以前から月貸しのレンタルオフィス市場に参入したいと考えていました。今回の案件では、年間の売上高を超える過去最高額の買収ということでさすがにしびれましたが、会社の将来性を考えた上での決断でした」と同社の河野貴輝社長は振り返る。

 働き方の自由度を高め、企業にとっても経費削減につながるフレキシブルオフィスは、ニューヨークやロンドンといった主要都市ではすでにオフィス市場の約4%を占め、2030年には30%に達すると予測されている。やや立ち遅れ気味の東京ではまだ1%にも満たないが、今後は確実に拡大することが見込まれている。すでに12万坪を超える貸会議室を展開するティーケーピーと、3万坪のレンタルオフィスを提供する日本リージャスが組むことによるシナジーは計り知れない。併せて407カ所の拠点で、時間貸しから短中期のレンタルオフィス、さらにサブスクリプション契約まで、きめ細かなニーズに最適化されたサービスの提供が可能になる。

 「当社のノウハウを注入し、受付や共有部分を含めたスペースを有効活用することでコスト削減につながります。また、新築オフィスから中古物件まで、不動産情報もこれまで以上に幅広く入手できるでしょう。さらに、国内の大手企業が多い当社の顧客と、約4割が外資系という日本リージャスの顧客に対するクロスセルやビジネスマッチングも手掛けていきたいですね」

 地価の高い東京では今後、大手企業のサテライト化が進むと見られており、まだまだ黎明期といえるわが国のフレキシブルオフィス市場も、同社がけん引することになるだろう。

 また8月9日には台湾のリージャス事業を約30億円で買収することを発表した。同社の本業である会議室事業とともに本格進出を果たす。すでに進出しているニューヨーク、ニュージャージーの事業を足掛かりに、アジアそして世界へとグローバルな拡大を目論む。

 

多様な働き方に対応するきめ細かなサービスを提供

 

 一方、好調なインバウンド需要を受けたホテル・宿泊事業も順調だ。フランチャイジーとして展開するアパホテルやビジネス用途の研修などに適したセミナーホテル「レクトーレ」は、いずれも高い稼働率を誇る。7月には、有名ホテルの宴会や結婚式に配ぜん人材を派遣する品川配ぜん人紹介所を子会社化。新たにホテル宴会場運営支援事業に本格的に参入すると発表した。

 「5千億円ともいわれる国内宴会場のマーケットは、来年開催のオリンピックに向けて追い風が吹いており、需要はまだまだ伸びます。品川配ぜん人紹介所のネットワークを生かし、まずは一流ホテルの料理を当社宴会場へケータリングできるようにしたり、当社の取引先企業をホテルへ送客する営業支援などの仕組みを構築したい」

 こうして着々と収益の柱が多様化していく中で、次に狙うのがハードとソフトの融合による新たなサービスだ。例えば、大手企業が社内研修などで同社の貸会議室を利用するケースは年間でも相当なボリュームに上るが、こうした研修サービスを自社で提供するといったコンテンツビジネスも視野に入れているという。

 相次ぐM&Aによって事業が多角化することに伴って、対応する社内人材の育成も急務となる。

 「創業当初は中途採用に頼っていた部分もありましたが、最初に新卒として採用した従業員が30歳を超え部課長クラスとして大きな戦力になり、徐々に層が厚くなってきました。フレキシブルオフィスは、単なるコストカットの手法ではありません。従業員が生き生きと働くことのできる環境を整えることが、結果的に固定費の削減につながります」

 6月には、サッカーJ1チーム「大分トリニータ」を運営する大分フットボールクラブとの資本業務提携を締結、筆頭株主となった。自身の出身地という縁もあるが「県民チームであるトリニータを支援しながら、地方であっても働きやすい環境を実現するコワーキングスペースやシェアオフィス、コールセンターといった機能をパッケージ化して、地方創生につなげるテストケースに」と意欲を見せる河野社長。都心部から地方、そして日本リージャスのネットワークを生かしたグローバル展開も積極的に進めながら、欧米型にとらわれない日本企業ならではの働き方改革を推進していく。

 

会社概要
——————————————————————————
設立 2005年8月
資本金 3億1,400万円
所在地 東京都新宿区
従業員数 2,894人
事業内容 フレキシブルオフィス事業、ホテル・宿泊研修事業、
料飲・バンケット事業、イベントプロデュース事業、BPO事業
https://www.tkp.jp/
——————————————————————————

 

総力特集 人材育成企業21に戻る

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る