マネジメント

(『経済界』2019年11月号より転載) 

百瀬義貴氏

学校法人明泉学園常務理事 百瀬義貴(ももせ・よしたか)


乳幼児教育の国際化を掲げ、改革を推し進める明泉学園では、運営する鶴川女子短期大学の新校舎がいよいよ完成する。設計したのは、世界的に有名な建築家・隈研吾氏。創立者・百瀬泰男が掲げ、建学の精神の基幹を成す「愛の教育」は、この新校舎にも体現されている。

 

隈研吾氏設計の新校舎での授業が後学期からスタート

 

 多摩丘陵の美しい自然環境の中に鶴川女子短期大学はある。四季の豊かさを味わう心を育みながら学ぶことのできる恵まれた立地を生かし、乳幼児教育・保育の現場で活躍できる人材の育成に取り組んでいる。新校舎の建設に当たっては「この鶴川の緑豊かな環境に調和する建物でなければならない」と、百瀬義貴常務理事はこだわった。

 「学生や職員だけでなく、地域の皆さまからも誇りに思ってもらえるような、鶴川のシンボルとなる存在になればいいと考えています」

 木材の良さを引き出し、日本的な「和」を美しく表現する隈氏も、鶴川の自然環境を気に入り、木をふんだんに用いた美しくも温かみのある校舎をデザインした。

 新校舎のさらなる特長として百瀬常務理事が挙げたのは、通学、通勤が楽しくなるようなワクワクする校舎であることだ。大人も子どもも美術や芸術、工作などを楽しめる「アトリエ」を設け、開放的な空間が広がる大階段はホールとしても使えて、滑り台を設置する遊び心も見せる。事業所内保育園や幼稚園の子どもたちがいつでも楽しめることを意図した造りは、時に大人も童心に帰れるような豊かさが感じられる。

 こうした設計思想の一つ一つに、明泉学園の心ともいえる「愛の教育」の精神が息づいていると、百瀬常務理事はいう。乳幼児教育・保育の現場では、十分な愛情を注ぐことが何よりも求められるからこそ、愛情が育まれる場である必要がある。

 「五感を養い、心にインスピレーションを感じさせる空間で、子どもたちや学生、職員、すべての人たちが愛情によってつながっているような教育を実践すること。まさに『愛の教育』を表現する場にしていきたいと思うんです」

 新校舎では、給食制度を採用し、学生たちに無料で食事の提供も行う。食育の観点から、栄養バランスの取れた食事の重要性を再認識してもらいつつ、学生らの健康をサポート。また、これまでは男女別だったトイレにLGBTの方にも配慮した「だれでもトイレ」を設置するなど、さまざまに目配りを施す。誰にとっても居心地の良い愛ある学び舎を目指し、いよいよ今年度後学期から、新校舎での授業がスタートする。

 

どれだけ時代が変わろうとも揺らぐことのない「愛の教育」

 

 その一方で、同学園は国際化の推進を掲げ、大きく舵を切り始めている。2017年には幼児教育学科を「国際こども教育学科」に変更し、その中に「国際こども教育コース」を新設。さらに専攻科として、「国際こども教育専攻」を設置し、グローバル人材輩出のための新たな教育モデルの構築を打ち出した。今年4月には改正出入国管理法が施行され、今後5年間で35万人余りの外国人労働者の受け入れが見込まれている。乳幼児教育・保育の現場においては、外国人の子どもたちの受け入れが増加していくことも予想され、外国語教育や異文化コミュニケーションの必要性はますます高まってきている。

 「今後さらにグローバル化が進展していく中で、私たちは単に英語教育を施すだけでなく、日本人としてのアイデンティティーを醸成した上で、異文化理解を深めた保育者を育成していく必要があります」

 従来の乳幼児教育から、英語・異文化教育を共に学ぶ国際乳幼児教育への転換を標榜する明泉学園だが、時代の変化に伴い、学びの形が変わろうとも、決して変わらぬものがある。それが、創立以来大切に受け継がれ、百瀬常務理事も繰り返し言葉にしている「愛の教育」だ。教育とは何より愛をもって成されるべきである。この想いは、職員一同が共有しているところである。

 「周囲への感謝と敬意を忘れず、時に語りかけ、時に傾聴しながら学生のために尽くすこと。学生一人一人の人生に役立っているという実感が得られるからこそ、働く喜びを感じてもらえるのだと思います」

 職員一人一人がこうした姿勢を絶やさぬようにしているからこそ、互いに同じ視点に立って考え、共に悩みながら愛の教育の実践を志すことができている。

 20年には、鶴川女子短期大学は「フェリシアこども短期大学」に名称が変わる。フェリシアは、可憐な青い花を咲かせるブルーデージーの別名であり、「幸せ」を意味する言葉でもある。本学で学ぶ学生たちに心から幸せになってもらいたい――。そんな想いを込めて、明泉学園はさらなる一歩を踏み出してゆく。

 

明泉学園

2019年10月に完成予定の新校舎(東京都町田市)

 

会社概要
——————————————————————————
設立 1960年7月
所在地 東京都町田市
事業内容 鶴川女子短期大学、鶴川高等学校、鶴川幼稚園、
鶴川フェリシア保育園などを運営
http://www.meisen.ac.jp/
——————————————————————————

 

総力特集 人材育成企業21に戻る

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る