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運営権売却へ正念場を迎えた新関西国際空港

ニュースレポート

新関西国際空港が動き出した。今秋開港20周年を迎える関西空港は伊丹空港と経営統合、運営権売却に向けて、空港の価値を高めるアジア路線の強化とLCC(格安航空機)の増便を加速。1兆円を超す債務解消を目指した売却に向け正念場を迎える。 (ジャーナリスト/宮城健一)

アジア中心に市場拡大

売却額アップのため新関西国際空港は価値向上が至上命題だ

売却額アップのため新関西国際空港は価値向上が至上命題だ

 「関西空港と伊丹空港は統合されたが、(近い将来)神戸空港を入れていただきたいと思っている。LCCへの関心が高い今、受け入れ態勢を整え思いを実現したい」

 2013年11月の神戸市内のホテルで開かれた「関西全体の航空需要拡大について考えるフォーラム」で、神戸空港も視野に統合メリットと〝三位一体〟を強調する井戸敏三兵庫県知事(関西広域連合会長)の言葉だ。

 基調講演した新関西国際空港の安藤圭一社長は「国際航空ネットワーク拡大で、アジアの空港需要はさらに期待できる。関西、大阪、神戸の3空港の潜在能力とインフラ戦略を融合させいかに取り込むかが大切だ」と訴えた。

 安藤社長によると新関西空港の経営戦略は3つのステップからなる。第1段階は、民間手法による「(国の)補給金に頼らない自立経営」。第2段階は、成長戦略や経営効率化による「事業価値の最大化」。そして早期コンセッションによる「完全な民間運営化」の達成が第3段階だ。

 世界の航空旅客輸送予測によると、アジア太平洋圏は31年に11年比で約4倍に規模が拡大し、世界最大の市場へと成長が見込まれる。こうした中、14年度の新会社の目標は、発着回数が30万回以上(11年度実績23・1万回)、旅客数は3300万人以上(同2600万人)、貨物量は101万㌧(同82・5万㌧)、売り上げは1500億円以上(同1188億円)を設定。

 その柱となるのがアジア路線の強化とLCCだ。昨年はLCC元年、ピーチ・アビエーションをはじめエア・アジアジェットスターなどが就航し、専用ターミナルや新機種の787機を使ったLCCも誕生した。

 関西空港に就航するLCCはジェットスター航空(07年)、チェジュ航空(09年)、ピーチ・アビエーション(12年)、エアアジアX(11年)など、国際線9社、国内線2社の計10社。来年には香港エクスプレスが就航予定と話題に事欠かない。

 就航する都市も国内は札幌から仙台、成田、松山、福岡、沖縄など9都市、国際線ではソウル、釜山、台北、香港、マニラ、シンガポール、さらにはケアンズ、シドニー、ゴールドコーストなど、東南アジアからオーストラリアにまで至っている。

 さらに冬の国際線で旅客便数に占めるLCCの割合は年々増加。08年は1・6%だったのが13年の冬は19・6%と急成長し、14年は25%にまで伸びる予定だ。中でも関西空港を拠点にするピーチ・アビエーションは12年春に就航し、国内では8路線、国際線ではソウル、香港、台北、釜山など4路線を持つ。わずか9カ月で搭乗者が100万人を記録し13年9月には300万人を達成。さらに10月には関空︱成田を結び首都圏に進出するなどまさに「破竹の勢い」だ。

 アジアのハブ空港を目指して関西空港が誕生したのが1994年9月4日。今年はちょうど20周年になる。

 現在3500㍍と4千㍍の2本の滑走路を有し総発着回数は12・9万回、総旅客数は1680万人、貨物量は68万7425㌧。泉州沖にある海上空港で、国と地元自治体、財界が出資したが、膨大な建設費のため1兆2千億円の長期債務が大きな負担となっている。今回の統合もこれを返済するため考え出されたものだ。

 一方の伊丹空港は58年に開港し1828㍍と3千㍍の2本の滑走路がある。発着回数は12・8万回、総旅客数は1315万人、貨物量は12万㌧で、こちらは国が管理している。

 空港のパワーといえば、何といっても旅客数と貨物輸送量だ。「特に観光、ビジネス需要の多い関西圏では成長著しいアジアの成長力を取り込むためには、地理的に近い関空が優位。LCCは飛行距離が短く短時間で往来できるメリットは大きい」と、住田弘之・新関西国際空港執行役員は言う。

気になる売却額は

 「だが、運営権売却に向け越えるべきハードルは高い」と地元泉佐野市の職員は指摘する。1兆円を超える負債が重荷となっている関西空港を支援するため、黒字の伊丹空港と経営統合し「新関西国際空港」が統合されたのは12年7月だった。

 新会社は事業運営会社と関空の土地を管理する土地保有会社などから成り、事業運営会社はコンセッションで民間の企業、投資家などに運営権を長期で売却。また、土地保有会社は空港の使用料(地代)を受け取る図式で、「要するに運営会社が支払う地代で借金の返済を賄う」というものだ。

 「来年度あたりから売却相手を見つけたい」と安藤社長は積極的だが、そのために少しでも高い評価を得るために掲げたのが「アジアの風に乗れ」だった。

 関空の負債額に相当する1兆2千億円ともいわれる両空港の運営権の金額は、ある試算によると、1兆2千億円を最大限に下は8千億円までとその幅は広い。果たして皮算用どおりいくのかという心配もある。

 運営権の売却額は空港の年間の現金収入の10〜15倍といわれ、これに当てはめて新空港の現金収入を約600億円で換算すれば、6千億円から9千億円といったところだろう。もし、債務が解消できなければ30〜50年間の売却期間終了後に、再び同じような運営権売却の話や利子の処理問題が生じてくることも考えられる。

 だが、少しでも新会社の売却額アップを考えれば、売却に伴う体質強化とそれを支える観光資源の豊富な関西圏の資産活用、インフラ整備など周辺の価値を高める工夫が今以上に必要になってくることは確かだ。

 
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