政治・経済

成長率で実質GDPが名目GDPを上回る

 内閣府が発表した2013年第1四半期の経済成長率は、実質GDPが前期比0・9%成長(年率換算:3・5%)だったのに対し、名目GDPは前期比0・4%成長(年率換算:1・5%)であった。実質GDPの成長率が名目値のそれを上回っているということは、GDPデフレータはマイナス。わが国がいまだにデフレ状態にあることを示している。実際、同四半期のGDPデフレータは、前年比マイナス1・2%であった。今回はGDP成長率ではなく、この「GDPデフレータ」について着目してみたい。

 GDPデフレータとは、「名目GDP÷実質GDP×100」で計算される物価指数だ。GDPデフレータがマイナスということは、わが国の経済がいまだに物価下落の局面にあるということを示している。すなわち、デフレ継続だ。

 筆者がGDPデフレータに着目している理由の1つは、同指標をわが国の「インフレ率」として用いると、実に美しいフィリップス曲線が描けるためである。日本の失業率とインフレ率(GDPデフレータ)をマッピングすると、

「インフレ率がマイナスの時期は失業率が高く、インフレ率がプラスになると、失業率が低下してくる」

 ことを示すフィリップス曲線が「綺麗に」描ける。他の国のフィリップス曲線は、日本ほど美しくならない。他国の場合、「インフレ率と失業率が共に高い」時期など、曲線から懸け離れた「例外」が存在してしまうのだ。ところが、1981年から10年までの日本の失業率、インフレ率をマッピングすると、ほぼ例外なく右下がりのカーブにデータが収まる。

 すなわち、わが国の失業率を引き下げたいのであれば、GDPデフレータを上昇させればいいわけだ。日本のインフレ率がGDPデフレータベースで2%になると、失業率が2%前半に下がってくる。そして、インフレ率が2%を超え、3%、4%と高まっていっても、失業率は2%を切らない。現在の日本にとって失業率2%とは「完全雇用状態」を意味する可能性が濃厚なのだ。

 別の書き方をするならば、

「日本を完全雇用にしたいならば、GDPデフレータを2%に引き上げればいい」

 という話になる。

 さて、図は現実の日本のGDPデフレータ(季節調整系列)を四半期ベースでグラフ化したものである。わが国のGDPデフレータは、98年のデフレ深刻化以降、わずかな例外期を除き継続的に下がり続けている。紛うことなきデフレーションだ。

 13年第1四半期のGDPに話を戻すが、実質GDPが前期比0・9%と、比較的高い成長率を示している。とはいえ、注意しなければならないのは、実質GDPの成長とは「生産量」の拡大を意味しているという点だ。そして、企業は生産性を高めることで、「雇用の拡大」なしに生産量を増大させることが可能だ。

 デフレで名目GDPが伸び悩む現在の日本にとって、重要なのは、生産「量」を意味する実質GDPよりも(これも大事だが)、GDPデフレータである。マクロ的にみれば、実質GDPは企業の「生産性向上」により上昇する可能性がある。GDPデフレータがマイナス(すなわち、デフレ)の環境下で企業が生産性向上に邁進すると、

「GDPデフレータがマイナスで、失業率が高止まりしているにもかかわらず、実質GDPは成長する」

 という現象が発生してしまうのだ。

増税のためには名目GDPの成長が必要

 繰り返すが、GDPデフレータがマイナスで推移している以上、デフレが継続していることになる。すなわち、実質GDPほど名目GDPが成長していない。

 名目GDPとは、国民の所得の「金額」である。実質GDPがどれだけ上昇しても、GDPデフレータがマイナスを維持し、名目GDPが拡大しなければ、われわれ国民は「所得の拡大」を目で見て確認することはできない

 さらに重要な点は、政府の税収は名目GDPから徴収されるという点である。当たり前だが、税収は粗利益、税引き前利益、給与所得などの「金額」的な所得に課せられる。

 別の言い方をすれば、

「実質的な生産が増えた(実質GDP成長)としても、名目的あるいは『金額』的な所得が伸びなければ、税収は増えない」

 のである。「生産が増えても、政府の税収が減る」という不思議な現象が発生するのが、まさにデフレ期だ。

 税収を増やし、財政を健全化させたいならば、名目GDPが堅調に成長していく環境をつくらなければならない。そのためには、とにかくデフレ脱却する、具体的にはGDPデフレータをプラス1%、2%程度に持っていくしかないのである。

 最後に、14年4月時点の消費税増税は「デフレ脱却」が条件の1つになっている。当然の話として、GDPデフレータがマイナス(もしくは1%未満)の場合、これは明確に「デフレ継続」である。消費税の増税は今年の10月頃「時の政権」により判断される。デフレ下の増税という愚行を回避するためにも、国民が「GDPデフレータ」といった各経済指標に対する知見を深める必要があると考えるわけだ。

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