政治・経済

まずは投票の日時と場所を変えよ

 ネットによる選挙運動は解禁されることになりましたが、ではネットによる投票はどうすれば良いのか。ネット選挙に関する次の議題として挙がってくるのは確実でしょうから、今回はこの点について述べたいと思います。

 ネット投票の導入で期待されているのは投票率の向上です。現在は日曜日に地域の学校施設などで投票が行われていますが、ネット投票を可能にすることで利便性を高め、政治に関心が薄いとされる若年層の政治への参画意識も高めようという狙いがあります。

 しかしながら、僕はネット投票の早期実現を積極的には支持していません。意外に思われるかもしれませんが、これには2つの理由があります。

 まず、ネット投票の導入の前に、他にもやるべきことがあるということです。

 若い世代の投票率の低さの原因として、政治意識の低さという要素ももちろんあるとは思いますが、そもそも日曜日は若い世代にとって極めて重要な日であるという点を考慮すべきだと思います。

 投票日が日曜日になったのは、高度成長期には大半の人々が月曜から土曜日まで仕事ざんまいの日々を送っていたため、投票に行ける日がそこしかなかったという事情があります。でも、現在は休みが平日の人も多いし、家族で旅行に出掛けたり、ゆっくり家でくつろいだりする時間として日曜日は非常に重要です。

 そう考えると、投票はむしろ平日に行ったほうが投票率は上がるのではないかと思います。さらに、投票できる時間帯も朝7時から夜12時までとすれば、会社員も仕事帰りに投票所に行けるようになります。

 投票場所についても、小学校や中学校はむしろ不便な場所にあることが多いので、例えば大都市では駅で、地方ではショッピングモールなどで投票できるようにすることを提案します。これらを変えるだけで投票率はかなり上げられると思うし、企業によっては投票日をノー残業デーにするところも出てくるかもしれません。

 そして、これらと並行して投票場でタブレットPCによる電子投票を行えば、開票作業にも時間がかからなくなります。人手による開封作業と違い、12時に締め切れば12時1分にはすべての結果が出てくるというわけです。自宅からネット投票を行うのと違って、投票所で係員の指導の下に行われるので、セキュリティーの面からも導入は難しくないでしょう。

 もし、これらの施策により投票率が上がれば、あえて在宅でのネット投票はやらなくても済むわけです。

高価で使いにくいシステムが導入される

 2番目の理由は、システムへの過剰投資の懸念です。

 ネット投票のシステムを構築するとなると、非常に高いセキュリティーレベルが要求されると思いますが、こうした場合どうしてもオーバースペックになりがちです。しかも、選挙は年に何回も行われるものではないので、経済効率が非常に悪い。システムを提案するベンダー側も、できるだけ重装備のものを提案したほうが受注額が上がるため、必要以上に高いセキュリティーを実装する可能性が高くなります。

 さらに、こうしたシステムにはユーザーインターフェースの概念も入り込みにくいので、非常に使い勝手の悪いシステムが導入されることが予想されます。ユーザーにとってみれば、事前登録を行ったり、電子ID発行の手続きを踏んだりと、面倒なことが増えるため、かえって投票率は上がらない可能性すらあるのです。

 ですから、本来は第三者委員会のようなものをつくって、行政機関やシステムベンダーとは懸け離れた視点でスペックを決めるべきですが、実際には難しいでしょう。結果的に、とてつもなく高価でとてつもなく使い勝手の悪い、大企業のイントラネットのようなシステムが出来上がることが懸念されます。システムベンダーは儲かるかもしれませんが、これで果たして本当に国民の利益になるか、と言えば疑問を抱かざるを得ません。

 当面はまず簡単に手を付けられるところから変えていき、その上でネット投票の仕組みをどう構築するかという議論を行っていくほうが賢明でしょう。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る