政治・経済

7月の参院選で、選挙区最後の議席を勝ち取ったのが日本維新の会だった。今回の選挙は、長い安倍一強とそれに対してなかなか対立軸を出せない野党という構図に業を煮やした有権者が、第三極でもある維新や新興政党に票を投じたことが特徴とも言える。維新や音喜多氏自身が選挙期間中に訴えてきたことが、硬直した政治に対して有権者が求めていた政策だったとも言えるのではないか。音喜多氏の政策は今の安倍政権や野党にはない第三極としてのオリジナリティがある。Photo=幸田 森(『経済界』2019年11月号より転載

 

音喜多駿氏プロフィール

おときた駿

おときた・しゅん 1983年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループに入社。2013年6月、東京都議会議員選挙に北区から立候補し、初当選。「都民ファーストの会東京都議団」初代幹事長に就任し、17年7月、北区から都議会議員二期目に挑戦し、歴代最多得票でトップ当選。「都民ファーストの会」からは後に離党を表明。18年10月、地域政党「あたらしい党」を発足し、代表となる。19年3月、都議を辞職し、同4月に地元・北区長選挙に挑戦したが惜敗。同7月、日本維新の会公認、あたらしい党推薦で参議院議員選挙東京都選挙区で、大激戦の末に初当選を果たす。

 

参院選で最後に票が伸びた理由

 

―― 最後の最後に議席を取ったが、勝算はどうだったのか?

音喜多 相当厳しいと思っていました。東京で維新から出るということ自体もそうですし、(丸山穂高衆議院議員の)暴言問題とか除名処分がまだあったばかりだったので。維新は戦争する政党だろう? とか、何で維新なんだ? とか、大阪の政党が東京に来るなとか、かなり厳しい言葉を頂きましたね。

―― なぜ最後に伸びたのか。支持された理由をどう考えるか?

音喜多 ひとつはメッセージを徹底したことです。それは「先送りをしない」とか、「次の世代のための政治」ということです。

 今の与党も野党も、いわゆるバラマキや、目先のことだけ考えれば良いという政策が蔓延している中で、一貫して将来世代、子どもたちのために振り切ったことをやるんだと主張しました。

 僕はこの春の統一選で東京都の北区長選挙に挑戦しましたが、もちろん区長選ですから1人しか通らない選挙でした。それは同時にまんべんなく過半数の票を取らなければ勝てないわけで、そうすると訴えもどうしても総花的になって、どこかに振り切るということはなかなかしづらかったんです。

 しかし、参議院選挙の選挙区は中選挙区で6人当選するわけですから、1人が得票率8%取れば当選ラインに届くという計算です。

 例えば10人中9人は音喜多が大嫌いでも、維新が大嫌いでも、1人がこの人が良いという熱心な支持者がいれば通る選挙です。ならばメッセージはひとつに絞って、私たちは既得権とは関係ないから、子どもたちのための未来の政策を、特に若い人たちに絞って繰り返し訴えて8%を取りにいきました。

 それから若い世代を応援したいとおっしゃって下さる高齢者の方々からも頑張れと声をかけていただきました。

 

音喜多駿氏が考える社会保障と経済政策

 

誰かが痛みを負うことをはっきり訴える必要性

―― これからの時代の社会保障や経済政策をどう考えているか。

音喜多 若い世代の視点からも考えていく、若い世代にフリーハンドというか選択肢を与えることができる政策を考えていきたい。

 例えば、社会保障に必要な財源についてどうするか。消費税というのは高齢者の方からもいただくことができる税なわけです。であれば、あまりお金のない若い世代からすれば、所得税を大幅に下げてもらって、消費税上げてもいいよという選択肢もアリなんです。そことセットであれば、消費増税も一つの方法です。

 これまで消費増税そのものを正面から議論しにくい空気がありましたが、若い世代も含めた多角的なパッケージを提案していきたい。

 公平な税制とは何かという議論をしていかなければならないと思うんです。例えば維新の松井一郎代表も言っていますが、ストックに課税していくということです。

 若い人はお金も資産もない。一方で所得はないけど、資産をたくさん持っている高齢者の方はいらっしゃる。そこはやはり資産をちゃんと把握して、資産に課税するっていう方法ももう少し真剣に検討しなければならない。

 選挙的には大きなリスクがありますが、避けてはいけないところまで来ているんじゃないでしょうか。

―― 安倍政権や自民党は、厳しい時代の社会保障制度改革について高齢者だけが恩恵を受けるのではなく、若い世代もというアピールで全世代型という表現を使っている。

音喜多 全世代型という言葉は間違っていないとは思いますが、何かみんなが等しく楽でいられるような響きですよね。財源は有限だということから逃げてはいないでしょうか。

 再配分していくうえで、やはり困っていない方とか十分に資産がある方には、ある程度痛みをお願いしなければいけない場面がくると思います。高齢者すべてが犠牲になれという意味ではありません。すごく裕福な、例えば麻生太郎副総理みたいな人からはお金を頂いて(笑)、高齢者世代内の助け合いに回してもらうとか、新しい仕組みみたいなものを提案してもいいのではないでしょうか。

 いずれにしても、誰かが痛みを負わなければいけないということは、政治が正直にハッキリ言わないといけないと思います。

―― 女性政策や子育てなど若い世代の課題はどう考えるか。

音喜多 女性や子どもに対する投資が非常に不十分なので、各種手当や助成を増やすということもあるんですが、税制におけるインセンティブという考え方もあると思っています。

 例えばベビーシッター代も控除の対象にするとか、子どもが3人産まれたら免除額が増え、子どもが多ければ多いほど得になるとか。

 育休などもそうです。育休義務化などの議論がありますが、僕は強制することが必ずしも良いとは思いません。もっと取らせることにインセンティブを与えるべきであって、育休をたくさん取った企業、男性の取得率が高い企業にホワイト表彰のようなものを出したり、税制面で優遇したり。

 政治家自身が実践することも大事です。最近結婚された自民党の小泉進次郎氏が育休を取るのかどうかが話題になっていますけど(笑)、僕も子どもが産まれて結構育休取って、公務以外は仕事に行かず子育てを2カ月間していました。

おときた駿2

「育休を取ることにもっとインセンティブを」と語る音喜多氏

大阪以外で維新の主張が根付きにくい要因とは?

―― 大阪や近畿以外で維新はなかなか根付かなかった。この議席をどう次に展開していくのか?

音喜多 維新の強みというのはまずは大阪があることだと思うんです。大阪で実績を出して大阪で支持が広がる。痛みを分かち合う政策も実践している。

 例えばシルバーパス、敬老パスを50円上げて有料化して、それを子どもたちの財源に回すということも、大阪でできているというのは強みです。それを東京や全国にも広げていくということです。

 そして身を切る改革。大阪府知事も、国会議員たちも、2割、3割報酬をカットして返上し、言葉をちゃんと実行に移しています。

 議員の経費の公開もそうです。実際僕も国会議員になって、文書交通費の公開など正直大変な作業ですが、やり切ることが重要です。

 ただ東京と大阪の違いを感じる部分はあります。大阪で身を切る改革を実践すると、「報酬を減らしてでもあの人たちはやるんや、すごいな」となりますが、東京選挙区で身を切る改革を演説しても、「いっぱい仕事してるんだったら、いっぱい貰いなよ」とおっしゃる方が多いですね。

―― 東京都は税収だけでやって行けるいわばお金持ちの自治体で都議会議員も政務活動費など潤沢。改革しなければという危機感がない。

音喜多 そうですね。東京都は財政危機を経験したのも随分前。大阪府は橋下徹氏が登場する前は財政も大変で、いろいろなデータでワースト1位で、現実的に改革というものをみんなが意識した。

 逆に東京は改革の必要性みたいなものが分からないというか、別に今困っているわけじゃないのになぜそんな改革、改革と言うのかと言われましたから。でも、いま改革しないとそのツケが近い将来一気に来る。東京維新の課題は、改革を有権者にどこまで浸透させることができるかだと思っています。

今の規制緩和では全く不十分

―― 経済政策はどう考えるか。

音喜多 アベノミクスで全く不十分なのは規制緩和です。分かりやすい例で言えば、Uber(ウーバー)などは日本ではなかなか本格化しない。

 一方で、いまだにタクシーに行列が並んでいる。シンガポールやニューヨークでは、スマホひとつでライドシェアできる車を呼んで、パッと乗って行くというのが当たり前になっている。そういうサービスも各種規制やタクシー業界の反発で、あれは白タク行為だとなっているわけです。

 それでは生活も便利にならないし、産業は活性化するわけがない。高い参入障壁を取っ払って、世界最先端のビジネスモデルをどんどん日本に呼び込んでいくことをしなければ、人口減少していく日本はジリ貧になります。

―― 規制緩和で具体的に考えていることはあるか。

音喜多 例えば仮想通貨です。暗号資産とも呼ばれていますが、日本だとかなりハードルが高くて、分離課税でなく、税率が50%を超えているために仮想通貨をうまく使って何かしようというインセンティブが働かない。中央銀行に頼らず経済圏を回していくという、かつてない世界が見える可能性があると思いますが、日本では全銀行が慎重姿勢で、高い税率を設けて、金融庁も規制によって小さく押し込めようとしています。

 もっと自由にやらせてあげると、地方を含めてさまざまな経済圏ができて、自立した面白いものが出てくるんじゃないかと思っています。

―― 規制緩和については現行の特区ではダメなのか。

音喜多 特区は限界があると思います。政府がやはり、権限を地方に大胆に移していないからです。例えば法人税を各地域によって変えるとか、そこまで当たり前にできなければいけないと思っています。それぞれの地域で「うちは東京には負けるけど法人税は5%です」「うちは消費税がゼロです」といった、それくらいの税制競争が起きなければ、日本全国を底上げして経済活性化なんてできないと思っています。

 中途半端な特区ではなく、権限をどんどん移譲させて、自由な経済活動をさせることが次の世代には重要です。消費税の地方税化というのは、もともと維新が主張してきたことです。

 

維新の会の存在意義とは

 

―― それは、維新の設立の原点でもある道州制との関連か。

音喜多 そうですね。ただそう簡単に道州制へは移行できない。明治維新からずっと続いてきた中央集権型の都道府県制度で、霞が関だってそう簡単に権限は手放さない。

 そこで段階的に自律分散型社会というのを進めたい。全国に自律して分散した社会がいくつもあって、その集合体が日本というような形です。

 今は中央集権で、総務省が全部を決めて、中央銀行しかなくて日本銀行券しか使えない。でも仮想通貨などが緩和されれば、ある経済圏ではその通貨と日本銀行券の両方が使えるとか、ワクワクするような競争が起きる。まずは実際に自立分散型社会を作って成功を体験して、それから道州制などへ移っていくということです。

―― いよいよ国会で最初に質問に立つとき何を質すか。

音喜多 選挙前に飛び出した「老後は2千万円必要」という話題もありましたから、やはり30代の議員なので、将来世代の意見を代弁して社会保障の在り方や金融資産の在り方などを財務省にぶつけていきたいと思っています。

 維新の存在意義は、是々非々野党であるということだと思うんです。自民党と協調できて進められれば進めていくし、反対すべきものには毅然と反対していく。かつてのみんなの党がそうだったように、第三極最後の砦と言うか、自民党にできない改革をやっていくということを大事にしたいと思います。

 

インタビューを終えて

参院選の各種世論調査すべてで、有権者が今最も重要と考える政策テーマは「少子高齢化社会の中での社会保障」だった。痛みの伴う改革になるかもしれないが、そのときに必要なのは政治家や政党が信頼できるかどうかであり、定数削減や報酬カットなど、身を切る改革は絶対条件である。維新がそこを貫けるかどうかも見極めたい。さらに維新は第三極として次期総選挙に候補を積極的に擁立するとしているが、野党統一の流れと組むのか、独自路線で行くのか。かつてみんなの党が与党寄りになり存在意義を見失った歴史もあるので、そこも注視すべき点だ。(鈴木哲夫)

 

 
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