政治・経済

国会に参考人招致されて思ったこと

 先日、衆議院で開かれた「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」に参考人として招致され、インターネットを使った選挙活動などについて意見陳述する機会がありました。その時の様子は「ニコ生」で動画配信されたので、ご覧になった読者もいるかもしれません。

 そこで僕に質問したある国会議員が、この『経済界』の連載コピーを束で持っていまして、「『夏野さんはITが分からないリーダーは去れ』とコラムで書いていますが、ITが分からなければ政治家としての資質もないとお考えですか」と尋ねられたんです。その時は「リーダーの資質がないとは言えますが、政治家の資質については分かりません」と答えておきました(笑)。

 それで思い出したのが、以前この連載でも触れた医薬品のネット販売に関する問題です。ご存じのとおり、ネット販売を禁止する省令は違憲との判決が最高裁で出たので、この問題は終わりと思っていました。すると今度は「省令だから駄目なのであって、国会で立法化してしまおう」との動きが国会議員の中から出てきたのです。それが「医薬品のネット販売に関する議員連盟」で、現在約60人の議員が名を連ねています。

 この件は、いかに政治家が特定勢力や圧力団体の要請に左右されやすいかを端的に示しています。政治家のもとには、陳情や誰かの紹介などで日々さまざまな案件が上がってくるわけですが、政治家にパイプがある時点で、既に多くの一般国民とは視点が違う人たち、つまり権力に近い側から話が上がってくる可能性が極めて高いと言えます。

 議員の耳に届く声は、そうした勢力に有利なものに偏るので、政治家も知らぬ間に彼らをサポートする側に回ってしまう危険性が高いということです。特に反証する材料を持たない議員は、薬剤師の団体などが主張する「ネット販売が解禁されると、国民の安全が脅かされる」という意見を、大多数の国民の声と錯覚してしまう。ですから、一般国民がどう思っているかについては、政治家自らの手で情報を集める努力をしなければいけないのです。

Eコマースも使ったことがない議員

 そのために一番有効なのは、やはりネットの活用ということになります。日ごろからネットで情報収集したり発信したりしている議員の多くは、国民の声に近いところにいるので、医薬品の問題についても、ネット販売賛成派と反対派の両方の声を聴けるチャンスが多くなります。

 反対派議員のリストを見ると、やはりITを積極的に活用していない議員が多いようです。少なくとも、ツイッターのフォロワーがたくさんいるような人は見受けられません。最高裁の違憲判決が既に出ているのに、法制化で強引に事を推し進めようという姿勢を国民がどうとらえるかが分かっていない。政治家に入ってくる情報と大多数の国民の意識のズレにこそ、現在の政治が抱えるジレンマがあるように思えます。

 議員連盟に名を連ねている人々は、本当に賛成派と反対派両方の意見を聞いているのか非常に疑わしい。以前の記事で触れたように、普通に考えてみれば薬の対面販売のメリットというものに実効性がなく、ネット販売だけ規制するのが実態に即していないことは普通の生活者であれば分かるはずです。

 薬をネットで大量購入して副作用を起こすといったレアケースを針小棒大に主張する人はいますが、経験上言わせていただくと、規制すべきと主張する議員たちの多くは、ネットで薬はおろかEコマースそのものを利用したことがありませんでした。だから最初から議論になりません。

 こうした問題を考えるにつけ、今、冒頭の政治家の資質に関する質問に答えるとするならば、やっぱり政治家もITを使いこなせないとダメだという結論になるのです。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

「消費者が電力の供給者を自由に選択できる時代へ」―― 再エネ主体の「顔の見えるでんき」をコンセプトに掲げるみんな電力が目指すのは、富が一部の人々に独占されないフェアな世界だ。法人顧客を中心に、同社への支持が集まっている理由を大石英司社長に聞いた。(吉田浩)大石英司・みんな電力社長プロフィール 消費者が発電事業…

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る