政治・経済

 日本企業が競争力を落としている理由の1つにイノベーションが起こらなくなったことを挙げる学者、有識者は多い。かつてのソニーはアップルにとって代わられ、日本がイノベーションを起こせなくなっていると嘆く。そして、その対策とやらを提言する。政権もイノベーションを起こすための特区や政策を打ち出すと宣言する。

 すべてまやかしである。

 インチキとは言わないがまやかしである。イノベーションを起こすための提言とは、それと同じだ。

 現在成功している企業を絶賛し、そのやり方を適当に抽象化して、理論のようなものを提唱する。他の企業へ追随することを推奨する。成功している企業が沈没すると、失敗のメカニズムを鮮やかに分析してみせる。そして、新しく成功している企業を取り上げ、このやり方をやらないと駄目だ、他の企業は古いやり方に固執しているという。

 シャープは絶賛されていた。ソニーも20世紀には日本歴史上最高にイノベーティブな企業だった。そして、アップルももうすぐ駄目な企業として事例に取り上げられる日が来ることだろう。マイクロソフトは最もイノベーティブな企業だったはずだが、今や独占的利益に執着する過去の企業とカテゴライズされる。しかし、これらはすべて誤りだ。

 今日だけは真実を語ろう。真実は、イノベーションとはどうすれば起こるのか誰にも分かっていないのだ。すべてはほとんど偶然である。頑張っている研究者がいて、彼女または彼がたまたま発見するのだ。

 そもそもiPhoneやiPodがイノベーションと認定されるのは、それが売れたからであり、売れなければ、単なる一製品として記録されただけ、いや記録もされなかっただろう。

 イノベーションについてのコツはひとつだけ。どうやったら起こるか分からないのだから、イノベーションにカネを掛けてはいけない、ということだ。開発に人をたくさん雇うのはいい。成功したらインセンティブをつけるのはいい。しかし、社運を懸けて、装置を購入し、生産ラインに投資し、その研究開発、生産の中でイノベーションが生まれるという概念は誤りだ。生まれることもあれば生まれないこともある。必要なのは、カネをためておいて、イノベーションが起きた時に、それを成功したイノベーションとするために、死に物狂いで売ることなのだ。それはアイドルや人気タレントと似ているが、その話はまた次回にしよう。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る