政治・経済

みずほ銀行の反社会的勢力との取引が明るみになり、同行は金融庁から業務改善命令を受けた。みずほ銀への世間的な批判が集中する一方、個人ローンの保証提携先であるオリエント・コーポレーションという存在の異色さも際立っている。 (ジャーナリスト/阿部貞弘)

甘かった初期のチェック体制

 今回、金融庁に問題視されたのは、合計で約230件、2億円超の中古車ローンなどの個人ローンだ。そのほとんどをオリエント・コーポレーション(オリコ)が保証した上で、みずほ銀行がローン資金を出していた。保証提携とは、オリコの保証によって銀行が資金拠出するものであり、ローン利用者の返済が滞ったりすれば、オリコが銀行に対して代位弁済し、その後、オリコが求償権に基づいて回収していく。

 今回の対象ローンのほとんどもオリコがローン実行段階の入り口審査を担い、その後、2010年12月にみずほが事後チェックする中で反社取引の存在が把握されたものの、みずほがオリコにその事実を伝えた経緯はない。業務改善命令以後、みずほの杜撰な内部体勢が批判を集めているが、初期段階の審査を行ったオリコの審査能力の乏しさはいまだ問われていない。

 信販会社は数年前、悪質な訪問販売などの企業を個品割賦の加盟店としていたことが厳しく批判された経緯がある。そのときも、加盟店への審査が不十分だったことが問われた。主要カード会社幹部は、オリコなど信販会社の姿勢に疑問符を投げ掛ける。今回も初期段階の審査が甘かったことは歴然としている。しかも、それは既に問題視されてきていたことが次の発言からうかがい知れる。

 「実は、信販会社などリテール分野のノンバンクに対して、警察庁は昨年、反社取引チェックの厳格化を要請していた。それは銀行に比べて、それらの金融会社の反社取引排除の態勢が不十分だったから」(社会部記者)

 今のところ、みずほ銀行の内部体勢の甘さが問われる陰にあって、オリコのこうした状況が隠れてしまっているとみる金融関係者は少なくない。今回の問題が発覚して以後、監督官庁の経産省は、オリコに事実関係の報告を求めると同時に、業界団体の日本クレジット協会に反社取引に対するチェック態勢の強化を要請したものの、そこにはなぜか、形式止まりの対応というムードもある。これも不思議といえば、不思議な状況だ。

 オリコはバブル時代に行った地上げ関連などの放漫融資が祟って、1990年代後半から2000年代初頭まで経営危機の渦の中に巻き込まれた経緯がある。それに対して、みずほグループが全面支援して、今は回復局面をたどってはいるものの、かつて、利益の源泉だった消費者ローンが過払い利息返還請求の増大と、上限金利の引き下げによって、大きく貢献度が後退してしまっていた。それに代わって、本来の個品割賦を強化していくという路線で、中古車ローンなどで反社取引を見過ごすことになってしまった。

 個品割賦機能を生かしたオリコの銀行提携ローンが8千億円台のローン残高に達しているのもこの間、最大の注力分野として強化してきたからにほかならない。だが、そこには「残高増強を最優先して、チェック態勢の強化を二の次にした」(同)という見方もなされ始めている。

餌食にされた〝もたれ合い〟の構造

 もともと、オリコは旧第一勧銀系の信販会社であり、歴代トップにとどまらず、役員陣の多くも旧第一勧銀出身者が占めている。経営危機回避の局面で、一時、旧興銀出身者がトップに就任したが、今は、やはり、旧第一勧銀出身者がトップとなり、役員クラスにも同銀行出身者がいる状況だ。

 こうした経営陣の顔触れからすれば、オリコは事実上、みずほグループの子会社と言えるが、資本面ではみずほグループの普通株出資比率は20%台。グループ会社のひとつではあっても、投資先として位置付けられる「持ち分法適用会社」という地位にとどまっている。いわば、みずほグループの中にあって、みずほ銀行などのチェックが十分に行き渡らない恐れもあるという見方ができる微妙な立ち位置だったのがオリコである。

 経営陣を送り込んだメーンバンクであり、実質的な親会社であるみずほ銀行が自らよりも反社チェック態勢が甘いオリコをパートナーとして選び続けたというのは、みずほとオリコの間に、もたれ合い的な状況が発生していたとみられても仕方がない。だが、それにしても、オリコはなぜ、それほどの甘いチェック態勢を続けてきたのか。場合によっては、そうした甘さを見透かされて反社勢力がオリコをターゲットしたという結論にもならざるを得ない。

 金融面における反社取引の最大の特徴は、「利息の返済をせず、ローンで購入した物件も返さない」(銀行関係者)ことにある。今回もローンで購入した中古車が回収できるかどうか。回収できなければ、既に物件は売却されて、売却資金がアングラマーケットに流れ込んでしまった可能性もある。そのことについて、今のところ、オリコからは何の説明もないのが実情だ。

 確かに、反社取引の存在を把握しながら2年間にわたって、それを放置し続けたみずほ銀行の体たらくは噴飯モノだが、みずほが放置すれば、そのまま、取引を続けてきたオリコに当事者能力があると言い切れるのか。あるいは、チェック態勢の甘さから反社勢力の餌食とされた構図があるならば、オリコはみずほ銀行とは違った意味での社会的な責任を問われかねない。

 中古車ローン市場では、オリコ、ジャックス、アプラスの信販3社がローン提供の御三家であり、近年は、ローン提供からローン保証業務へと舵を切って、銀行との提携を拡大していた。その中で、入り口の審査態勢が甘かったのはオリコだけなのか、それとも、信販会社に共通する問題なのか――。

 10月28日にみずほ銀行は金融庁に対して業務改善計画を提出することになるが、その次に控えているのは信販各社の問題とみることができる。その中でも、オリコは問題視されることが避けられない立場にある。メディアの焦点がみずほからオリコへと移る過程において、これらの問題が明白化され、審査態勢が強化されない限り、中古車ローンなど信販提携ローン市場の不透明感は払拭されない可能性すらある。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界11月号
[特集]
運の科学

  • ・北尾吉孝(SBIホールディングス社長)
  • ・江口克彦(江口オフィス社長)
  • ・畑村洋太郎(畑村創造工学研究所代表)
  • ・藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授・内閣官房参与)
  • ・角居勝彦(日本中央競馬会調教師)
  • ・桜井章一(雀鬼会会長)

[Interview]

 安永竜夫(三井物産社長)

 「やるべきことは2つ。方向性を指し示し、トップ同士の関係を構築する」

[NEWS REPORT]

◆東芝メモリ買収の影の主役 産業革新機構の収支決算

◆電気自動車がガソリン車を駆逐するまであと10年

◆60代を迎えた孫正義 ソフトバンク300年の計への足固め

◆出版不況の風向きは変わるか!? 常識を覆すオンリーワン作戦!

[政知巡礼]

 若狭 勝(衆議院議員)

 「自民党のしがらみ政治をぶった斬りたい」

ページ上部へ戻る