政治・経済

9月29日の堺市長選の敗北で、日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長が追い込まれた。「堺は1つ」と、都構想を拒否した現職の竹山修身氏(63歳)の勝利は、27年の都構想実施に向け大阪市民にどう影響するのか。 (ジャーナリスト/宮城健一)

完敗を認めた橋下市長

 「NHKの速報があまりに速く、まだ投票が終わらない午後8時前、都構想に反対の〝竹山現堺市長当選確実〟のテロップが流れ驚きました」と、ある堺市民は声高に語った。この速報は、構想実現を悲願とする橋下市長にとって屈辱だっただろう。

 大阪府と大阪市、堺市を「1つの大阪にして効率いい組織体をつくろう」と、訴えた大阪維新の会の前堺市議、西林克敏氏(43歳)と、「堺市と府には二重行政はない。堺は1つだ」とアピールした元大阪府職員で現市長の竹山氏の一騎打ち。「都構想が掲げられてから初めて市民の審判を受ける選挙だけに、単に首長選挙だけでなく、都構想の今後の行方をみる上で重要だった」と、若手の堺市議は語る。

 堺市は大阪市の南に接し、灘波からも電車で15分程度の距離で人口84万人の政令都市だ。自民、民主に共産までが竹山陣営に加わり、維新の会と対決。公明の動きが関心の的だった。当日の投票率は50・69%で前回より6・76ポイント上がり一般市民の関心を高めたが、現職市長の竹山氏=民主推薦、自民支持=が19万8431票、大阪維新の会の西林氏が14万569票という結果に終わった。

 あの負けん気の強い日本維新の会共同代表、橋下大阪市長が翌日「完敗でした」と認めた。「橋下さんに勢いを感じなくなったのは今春から。特に慰安婦発言の影響が、7月の参院選では顕著に表れました。その後も(橋下氏の発信力の弱さを)市民は肌で感じていた」と堺市議は語る。

 竹山氏の応援には、関西広域連合長の井戸敏三・兵庫県知事や矢田立郎・神戸市長、前大阪府知事の太田房江参院議員や民主党の辻本清美副幹事長らも駆け付けた。そうした中、注目されたのは公明党の動向。これまで大阪市議会で維新の会に協力的だった公明だが、最近は距離を置いているようだ。橋下市長の影響力と合わせ、参院選後は大阪都構想についても批判を強めてきており、堺市長選では自主投票を打ち出した。

 橋下市長が最大の課題として取り組んできた大阪都構想は、今後どうなるのか。橋下大阪市長は30日の記者会見では「大阪都構想は行政的には影響はない。進める」と引き続き意欲を見せ、スケジュールは変えないようだ。維新の会幹事長の松井一郎知事も投票翌日の同日、「影響はあるかもしれない」との判断を示したが、スケジュールは予定どおりだという。

 同構想は、府市の法定協議会で制度設計について議論され、24区ある大阪市を5区と7区に再編、どの区とどの区が統合するのか4通りの案を1つに絞る作業に入っている。大阪市議会で今後審議、承認され来年秋には大阪市民の住民投票というハードルを越えなければならない。平成27年度の制度導入をめざす。

 大阪市の住民投票は、大阪府、大阪市両議会の議決が必要となっており、大阪市議会では維新の会の議員数(33)は過半数(44)には届かず、そのためには第2会派の公明党(19)の協力が必要になってくるわけだ。

 公明党はこれまで維新の会に原則協力してきたが、9月の法定協議会では都構想実現までの工程票が示されていないことを不服として強い口調で批判。さらに7月の参院選後は、不透明な部分が多くなってきている。自民、民主、共産党は反対の意思表示をしている。

 先日発表された府市が発表した再編メリットについても当初、橋下市長が打ち上げた4千億円効果にははるかに及ばず実態は976億円にまで縮小。しかも、その中には統合とは直接関係のない地下鉄や市バスの売却などが含まれている。

 選挙結果は日本維新の会の内部にも動揺を与えた。早速、反応したのが石原慎太郎共同代表だ。

 今回、橋下共同代表の辞任発言までには至らなかったが、市長選後、石原氏は「負けても共同代表は務めていただく」と先手を打った。

 ある大阪市の幹部は「今後の各党の動きについて何ともいえないが、公明党は都構想に批判的な発言をしている。橋下市長の求心力、影響力が回復するのか、このまま退潮傾向をたどるのか。じっくりみたい」と語る。

各党の姿勢に変化も

 そこに各党の微妙な変化を示す事態も発生した。9月下旬に起きた大阪市議会議長、美延映夫氏の不信任案の可決だ。事の発端は8月に行われた美延議長の政治資金パーティーで市立高校吹奏楽部が演奏したことについて公明、民主、自民系の3会派が「教育の中立性が侵された」と、問題視したこと。不信任案の決議に法的根拠はなく、美延議長は続投を表明し「3カ月の報酬減額」で収めようとしたが、3会派の議員はこれに納得せず本会議での審議拒否をちらつかせて、辞職を迫っている。

 また、二重行政の象徴とされた水道行政の府市統合が5月の市議会で公明、自民、民主、共産の4会派の反対で否決。地下鉄、市バスの民間への売却はこれまた「NO」だった。今議会でも市営地下鉄・市バスの民営化に関して話し合いが行われるが、成立には3分の2の賛成が必要とされ維新にとって苦しい場面が続く。

 この他にも大阪市が公募している公立学校の校長や公募区長のセクハラといった不祥事が相次いで発生しており、これもまた選任者の橋下市長にとって頭が痛い。

 橋下市長は求心力の低下と周辺の環境変化に対して新たな戦略を打ち出せるのか。時間はあまりない。

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