国際

(写真:AFP=時事)

(写真:AFP=時事)

 南アフリカには1652年オランダ人が入植してきた。これらオランダ農民をボーアと呼んで戦争を仕掛けたのが英国人で、2回のボーア戦争を経て1910年、南アは英国連邦に組み込まれた。全アフリカGDPの8割を占める巨大な南アの富を14%にすぎないオランダ系と英国系の白人が独占し、人口の75%を占める黒人は植民地原住民以下の状況に置かれたわけだが、テンブ人酋長の息子で大学の法学部を出、弁護士事務所を開業したマンデラ(Nelson Rolihlahla Mandela)はアパルトヘイト(Apartheid)に対する反対運動を続け64年に国家反逆罪で終身刑の判決を受けた。投獄されていた期間は27年。

 出所して大統領になっても白人に復讐することはなく、人種の融和を繰り返し唱えた。

“No one is born hating another person because of the color of his skin, or his background, or his religion.

〈誰も生まれた時から肌の色や生まれや宗教の違いから憎しみを持つことはありません〉

People must learn to hate, and if they can learn to hate, they can be taught to love, for love comes more naturally to the human heart than its opposite.”

〈人は憎むことを学んでいくわけです。もし憎むことを学べるなら、愛することも学べるはずです。なぜなら、愛することはその正反対の感情を持つことより人間の感情としては自然だと思うからです〉

 この言葉がヒューマニストの大学教授の卓上から発せられたことなら、「先生、夢見ててください」となるが、国家反逆罪で27年間投獄された自由の闘士の口から出ると響いてくる。オバマもマンデラに勇気付けられた1人だ。

“I can’t fully imagine my own life without thinking of the example of Nelson Mandela.”

〈私はネルソン・マンデラのお手本なしには自分自身の人生を考えることはできないほどです〉

 とオバマはホワイトハウスで、他界したマンデラに関して言及した。オバマの学生時代の初めての政治的活動は、南アのアパルトヘイトに対する反対運動だったのだという。

 不屈の精神で戦い抜いたマンデラに比べ、最近のオバマは弱気である。ニュース専門局MSNBCのインタビューでオバマはこう言っていた。

“The interesting thing about having been president now for five years, is that it makes you humbler as opposed to cockier about what an individual can do.”

〈興味深いことは、5年も大統領をやっていると、自分がより謙虚になっているということです。それは、よりうぬぼれる、ということとは正反対に、です。一個人ができることの限界を知るからです〉

一個人と言っても、あんた、米国合衆国大統領だよ、オバマさん! どうしたの?

“You recognize that you are just part of the sweep of history.

〈自分が歴史の中の1コマにすぎないと知るようになるからです〉

And your job is really to push the boulder up the hill a little bit before someone else pushes it up a little further.

〈そして自分の仕事は山をロッククライミングして少々上がっていき、次の人がさらに上がっていく前にバトンタッチしていくことだと〉

The source of strength for any president was to stay close to the people.”

〈どの大統領もその強さの源泉は人々に寄り添うということでした〉

“The American people are good and decent,”

〈米国民は良き人々で慎み深いのです〉

“And yes, sometimes we get very divided.

〈そうです、時にわれわれは引き裂かれてしまいますが〉

As long as any president stays close to the people, I think they’re going to do all right.”

〈どの大統領も国民に寄り添っていれば、私は、うまくやれるのだと思っております〉

 オバマの議会共和党に対するアレルギーが、良き国民という抽象概念に逃避させているのだとすれば、よろしくない。マンデラに関する思いをオバマは語った。

“We’ve lost one of the most influential, courageous and profoundly good human beings that any of us will share time with,

〈われわれは最も影響力のある、勇気あり、崇高なまでに良き人を失いました〉

“He no longer belongs to us, he belongs to the ages

〈あの方はもうわれわれと共にはいらしてくださいません。時代の一部となったのです〉

His commitment to transfer power and reconcile with those who jailed him set an example that all humanity should aspire to.”

〈あの方の権力を変革していくという決意と自分を牢獄に送り込んだ人との和解は、人類すべてが切望することのお手本となることでした〉

 

[今号の英語]optimist

 optimistとは楽天主義者のことである。opというのはオペレーションという単語に代表されるように、働くとか、たくさん産むという意味の語根で、しっかり働いてどんどん産む、というようなイメージの人々である。マンデラは言っている。
“I am fundamentally an optimist.
〈私は基本的に楽観主義者です〉
Whether that comes from nature or nurture, I cannot say.
〈それが自然発生的なものか教育によるものかは分かりません〉
Part of being optimistic is keeping one’s head pointed toward the sun, one’s feet moving forward.
〈楽天的であるということは1つに頭を上げて太陽に向かうということであり、足を前に前にと運んでいくことなのです〉
There were many dark moments when my faith in humanity was sorely tested, but I would not and could not give myself up to despair.
〈私の人間性が痛々しくも試された暗黒の時期もありましたが、私は自分を絶望させることはできませんでしたし、しませんでした〉
That way lays defeat and death.”
〈その道、絶望は、敗退と死を意味したからです〉
 これらの言葉に比べると、今のオバマの苦難など屁でもない。
 頑張れ、オバマ! へこたれるな。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

家族葬のファミーユは家族や親族など故人の近親者だけで施設を貸し切って行う「家族葬」のパイオニアだ。創業者・高見信光氏は異端児と言われながらも旧態依然とした業界を変えてきた。その思いに共感し、異業種のリクルートから転じて社長を引き継いだ中道康彰氏も業界の常識を打ち破るため奮闘している。文=榎本正義(『経済界』2…

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年10月号
[特集] 進撃のスタートアップ
  • ・スタートアップ・エコシステムの活性化
  • ・[スパイバー]2万5千円のTシャツは完売 実用化が迫った人工クモの糸
  • ・[Rhelixa]エピゲノム関連の研究・開発で人類の役に立つ
  • ・[チャレナジー]台風発電でエジソンになる ビジネス展開は「島」から
  • ・[エイシング]エッジで動く超軽量AIでリアルタイムに予測制御
  • ・[キャディ]製造業に調達革命! 町工場は赤字から脱出へ
  • ・[Clear]目指すは日本酒産業のリーディングカンパニー
  • ・[空]「値付け」の悩みを解決するホテル業界待望のサービス
  • ・宇宙ビジネスに民間の力 地球観測衛星やロボット開発
  • ・71歳で環境スタートアップを立ち上げた「プロ経営者」
[Special Interview]

 荻田敏宏(ホテルオークラ社長)

 「The Okura Tokyo」をショーケースに海外展開を進めていく

[NEWS REPORT]

◆戴正呉会長兼社長を直撃! なぜ、シャープは復活できたのか?

◆アスクル創業社長を退陣させた筆頭株主・ヤフーの焦り

◆サービス開始から3カ月で撤退 セブンペイ事件の背景にあるもの

◆絶滅危惧種ウナギの危機 イオンが挑むトレーサビリティ

[特集2]

 富裕層は知っている

・富裕層の最大の使い道は商品ではなく次代への投資

・シンガポールからケイマン諸島まで 資産フライトはここまで進化した

・年間授業料100万円超は当たり前 教育投資はローリスクハイリターン

・最先端の人間ドックは究極のリスクマネジメント

・家事代行サービスで家族との時間を有効活用

ページ上部へ戻る