政治・経済

 2014年はIPOマーケットが昨年以上の盛り上がりを見せそうだ。取引所による上場基準の緩和が後押しする中、安倍内閣発足によるアベノミクス相場の恩恵を受けて日経平均が7年ぶりとなる1万6千円台に到達。その好環境と国内景況感の回復を受けて13年(暦年ベース)のIPO企業数は4年連続で増加した。市場関係者の話を総合すると14年は昨年を一段と上回る70〜80社程度が上場するとみられる。今年のIPO候補群の特徴は「高い知名度」「復活(再上場)組」「多彩な業種」といったキーワードが浮かび上がる。今年もIPOマーケットからは目が離せない。

 

IPO企業数は4年連続で増加

 まず、昨年までのIPO市場の動向を振り返ってみる。2008年9月に生じた「リーマンショック」による世界的な株式市場の下落から09年のIPO銘柄数(プロマーケット含む、REIT、ETF除く、以下同)は19銘柄に落ち込んだが、10年22銘柄、11年37銘柄、12年48銘柄、そして13年は58銘柄へと4年連続で増加した。

 景気回復期待感の上昇により、内需関連企業の業績回復を背景とする新規上場が増え、11年以降に東京証券取引所をはじめ各取引所が上場規程やガイドラインを緩和した結果、上場準備の事務負担が相対的に軽減され、過去に上場を目指した会社が上場準備を再開するケースが増加したことも寄与した。

 また、株式市場の回復により、IPO企業候補が前向きなファイナンスを実施する経営判断を下すことが可能になった環境が整ったことも増加のファクターだ。こうした好環境を受けて、14年は70社から80社程度のIPOが見込まれているとともに、15年には07年の121社以来となる100社の大台に回復するとの観測もある。

 

IT・ネット系がリード

オイシックスの髙島宏平社長

オイシックスの髙島宏平社長

 58銘柄が登場した13年のIPO企業群を振り返ると3月タマホーム、7月サントリー食品インターナショナル、12月足利ホールディングスといった知名度の高い企業や大手企業の登場があったほか、〝変わり種〟業種としてジェイエスエス(スイミングスクールの運営、指導業務の受託)、買取王国(総合リユース小売業としての古着、中古雑貨等の販売)が上場を果たした。

 また、近年増えている「バイオベンチャー・ライフサイエンス分野」では、メドレックス(医薬品製剤開発)、ペプチドリーム(特殊ペプチド創薬研究開発)、リプロセル(ヒトiPS細胞事業にかかわる臨床検査事業)、ヒューマンメタボロームテクノロジーズ(メタボローム解析試験受託事業等)、オンコリスバイオファーマ(がんや重症感染症を対象にした創薬事業)、「ネットサービス関連」で、オイシックス(インターネットを通じた食品の販売)、オークファン(オークション等の商品および価格情報の比較等が可能なメディアサイト運営)、ホットリンク(ソーシャルビッグデータ活用を支援するクラウドサービスの提供)、フォトクリエイト(インターネットを活用した写真販売サービス)、じげん(ライフメディアプラットフォーム事業)といった企業などがデビューした。

リプロセルの横山周史社長

リプロセルの横山周史社長

 この結果、業種的にはここ数年の傾向を継続して「サービス」「情報通信」「小売り」が全体の約3分の1を占めた。企業数ではIT・ネット系が含まれる「サービス」「情報通信」「小売り」がIPOの増加をリードした。一方、株価のパフォーマンスではここ数年続くバイオベンチャーが話題を席巻した。

 

IPO初値神話の復活

 登場企業社数の回復とともに13年のIPOの特徴は「IPO初値神話の復活」にある。

 13年のIPO第1号は東証マザーズに登場したバイオベンチャーのメドレックス。その初値は公開価格1千円の2・2倍に当たる2200円。さらに、上場から3カ月後には初値の3・4倍に株価水準を切り上げた。

 13年の年間でみたIPOの「公開価格から初値までの上昇率」上位銘柄では、6月にJASDAQに上場したリプロセルが公開価格3200円に対して初値1万7800円と約5・6倍の初値を形成。上場3日目でようやく初値が成立するという、過去10年間で見ても記録に残るIPO劇を展開した。iPS細胞の山中伸弥教授のノーベル賞受賞に加え、安倍政権によるバイオ(iPS)研究開発の国策化と材料がそろい、まさにバイオ・ベンチャーバブルを象徴する出来事だった。

 このリプロセルに続く「公開価格から初値までの上昇率」ランキングの上位は、ANAP(女性用衣料の販売)5・1倍、システム情報(ソフトウエア開発)4・7倍、ソフトMAX(総合医療情報システム)4・2倍、オークファン(価格比較サイト)4・0倍の驚異的なパフォーマンス。プロマーケットを除く昨年のIPO銘柄で初値が公開価格を下回ったのは12月に東証2部に上場したウィルグループ(公開価格2870円に対して初値2750円)のみ。株式公開前のブックビルディングで当選し公開価格をゲットできれば、初値で早くも大きく利益確定ができるというほぼ〝百発百中〟のIPO初値神話が復活したのが13年だ。

 

ページ:

1

2

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

家族葬のファミーユは家族や親族など故人の近親者だけで施設を貸し切って行う「家族葬」のパイオニアだ。創業者・高見信光氏は異端児と言われながらも旧態依然とした業界を変えてきた。その思いに共感し、異業種のリクルートから転じて社長を引き継いだ中道康彰氏も業界の常識を打ち破るため奮闘している。文=榎本正義(『経済界』2…

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年10月号
[特集] 進撃のスタートアップ
  • ・スタートアップ・エコシステムの活性化
  • ・[スパイバー]2万5千円のTシャツは完売 実用化が迫った人工クモの糸
  • ・[Rhelixa]エピゲノム関連の研究・開発で人類の役に立つ
  • ・[チャレナジー]台風発電でエジソンになる ビジネス展開は「島」から
  • ・[エイシング]エッジで動く超軽量AIでリアルタイムに予測制御
  • ・[キャディ]製造業に調達革命! 町工場は赤字から脱出へ
  • ・[Clear]目指すは日本酒産業のリーディングカンパニー
  • ・[空]「値付け」の悩みを解決するホテル業界待望のサービス
  • ・宇宙ビジネスに民間の力 地球観測衛星やロボット開発
  • ・71歳で環境スタートアップを立ち上げた「プロ経営者」
[Special Interview]

 荻田敏宏(ホテルオークラ社長)

 「The Okura Tokyo」をショーケースに海外展開を進めていく

[NEWS REPORT]

◆戴正呉会長兼社長を直撃! なぜ、シャープは復活できたのか?

◆アスクル創業社長を退陣させた筆頭株主・ヤフーの焦り

◆サービス開始から3カ月で撤退 セブンペイ事件の背景にあるもの

◆絶滅危惧種ウナギの危機 イオンが挑むトレーサビリティ

[特集2]

 富裕層は知っている

・富裕層の最大の使い道は商品ではなく次代への投資

・シンガポールからケイマン諸島まで 資産フライトはここまで進化した

・年間授業料100万円超は当たり前 教育投資はローリスクハイリターン

・最先端の人間ドックは究極のリスクマネジメント

・家事代行サービスで家族との時間を有効活用

ページ上部へ戻る