政治・経済

スキー人気が復活している理由

スキー・スノーボード人口推移 今から20年前、日本は空前のスキーブームに沸いていた。

 直接的な要因は1987年に公開された映画「私をスキーに連れてって」だが、当時のバブル景気でレジャー産業全体が盛り上がっていたこともあり、若者がこぞってスキー場に押し寄せた。

 そのブームのピークが93年で、レジャー白書によると、日本のスキー・スノーボード人口は約1890万人に達した。その後は景気の悪化も影響し、スキー人気は低迷。長期的には右肩下がりの傾向が続き、2012年のスキー・スノーボード人口は約800万人。スキー人口だけなら約560万人で、ピーク時の3分の1にまで減っている。

 この間、スキー場の淘汰も進んだ。しかし危機意識の高まりから、数年前よりスキー業界全体で需要喚起策を展開。プリンスホテルと東急不動産との業務提携や、リクルートの「雪マジ!19」のキャンペーンなど、業界横断的な施策が行われている。

 こうした取り組みの成果で、スキー場の低迷に歯止めがかかり、一部のスキー場では、収益を改善。スノーリゾートの復権が始まろうとしている。

 その大きな牽引役は、かつてのブームの時にスキーに夢中になった世代だ。彼らが40代前後で親となり子どもを連れてスキー場に戻ってきている。

 子どもがスキーやスノーボードを楽しみ一生続ける環境を整え、参入人口を増やせば、マーケットは長期的に拡大することになる。業界全体で、こうした家族連れの取り込みを進めている。

 具体的な施策として、まずはスキー場に子どもを連れてきやすい環境を整える。スキー場を子どもが楽しめるように、子ども用のゲレンデやパークを用意し、雪に親しむところから始める。さらに子ども用のスキースクールを開講したり、子ども用のリフトを無料にするスキー場もある。

 次に子どもが楽しむだけでなく、親世代が楽しめる施策も整える。かつてスキーブームでゲレンデを訪れた親世代のスキーヤーの多くが、中上級者のレベルであるため、中上級者向けのゲレンデの整備を進める。さらに上級者向けにはパウダー滑走が体験できるスキー場もある。

 また、子どものスキーに祖父母が同伴する3世代の旅行が増え、スキーを滑らない人たちもスキー場に滞在するケースがある。そのためアフタースキーのアクティビティーとして、基本的なリゾートのサービスの拡充も進んでいる。

 親離れした子どもの世代、20歳前後の若年層に向けた施策も行われている。

 高校生までは学校行事や家族旅行でスキー場に行く機会もあるが、高校卒業後はスキー場に行く機会がなくなる若年層も少なくない。

 この若者層の取り込みとして、リクルートの雪マジ19!がある。19歳のお客にはリフト券が無料になるキャンペーンで、全国170以上のゲレンデが対応している。また、前年に雪マジ!19を体験した20歳のお客に対して、「雪マジ!20」のキャンペーンを企画。各ゲレンデがそれぞれ特典サービスを設けており、若年層が継続的にスキー・スノーボードを楽しみやすい環境を整えている。

 さらに「街コン」のゲレンデバージョンとも言うべき「ゲレコン」も行われている。情報サイト「SURF&SNOW」が主催。男女グループでスキーやスノーボードを楽しんだ後、ゲレンデ内やゲレンデ近隣のレストランでパーティーを開催し、親睦を深めるもの。若年層をゲレンデに呼び戻し、スキー場の活性化にもつながっている。

外国人に人気のスキーでインバウンドの開拓

 もう1つ、スキー業界が注目しているのが、インバウンドの観光資源としてのスキーリゾートだ。

 アジアに限ると、日本ほどスキー場に恵まれた国はない。アジアでは、寒冷地でなおかつ降雪の豊富な場所は少なく、仮にあったとしても大都市へのアクセスやインフラが整っていない場合がほとんどだ。日本の場合は、東北地方はスキー場を縫うように空港があり、また東京から新幹線で2〜3時間の場所にスキー場がある。交通アクセスやインフラと良質のゲレンデを併せ持つ日本のスキー場ではアジアでは稀有な存在だ。

 この利便性から、外国人のスキー客の受け入れが多くなっている。東急不動産が運営するニセコでは、半数以上がパウダースノーを求める外国人客だという。

 特に南半球のオーストラリアは日本と季節が逆となるため、夏に雪を求めてスキー客が日本にやってくる。また、東南アジアのように雪山がない熱帯地域からも観光客が雪を求めてやってくる。

 こうしたインバウンドの需要はまだまだ開拓の余地はある。成長産業の観光の1つとして、日本のスノーリゾートの可能性は大きい。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

家族葬のファミーユは家族や親族など故人の近親者だけで施設を貸し切って行う「家族葬」のパイオニアだ。創業者・高見信光氏は異端児と言われながらも旧態依然とした業界を変えてきた。その思いに共感し、異業種のリクルートから転じて社長を引き継いだ中道康彰氏も業界の常識を打ち破るため奮闘している。文=榎本正義(『経済界』2…

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年10月号
[特集] 進撃のスタートアップ
  • ・スタートアップ・エコシステムの活性化
  • ・[スパイバー]2万5千円のTシャツは完売 実用化が迫った人工クモの糸
  • ・[Rhelixa]エピゲノム関連の研究・開発で人類の役に立つ
  • ・[チャレナジー]台風発電でエジソンになる ビジネス展開は「島」から
  • ・[エイシング]エッジで動く超軽量AIでリアルタイムに予測制御
  • ・[キャディ]製造業に調達革命! 町工場は赤字から脱出へ
  • ・[Clear]目指すは日本酒産業のリーディングカンパニー
  • ・[空]「値付け」の悩みを解決するホテル業界待望のサービス
  • ・宇宙ビジネスに民間の力 地球観測衛星やロボット開発
  • ・71歳で環境スタートアップを立ち上げた「プロ経営者」
[Special Interview]

 荻田敏宏(ホテルオークラ社長)

 「The Okura Tokyo」をショーケースに海外展開を進めていく

[NEWS REPORT]

◆戴正呉会長兼社長を直撃! なぜ、シャープは復活できたのか?

◆アスクル創業社長を退陣させた筆頭株主・ヤフーの焦り

◆サービス開始から3カ月で撤退 セブンペイ事件の背景にあるもの

◆絶滅危惧種ウナギの危機 イオンが挑むトレーサビリティ

[特集2]

 富裕層は知っている

・富裕層の最大の使い道は商品ではなく次代への投資

・シンガポールからケイマン諸島まで 資産フライトはここまで進化した

・年間授業料100万円超は当たり前 教育投資はローリスクハイリターン

・最先端の人間ドックは究極のリスクマネジメント

・家事代行サービスで家族との時間を有効活用

ページ上部へ戻る