政治・経済

 スノーリゾートへの回帰の動きが始まる中、着実にスキー客を戻しているのが西武グループのプリンススノーリゾートだ。昨シーズンは、子ども向けの施策を展開したが、今シーズンは、子ども向けに加え、親子・3世代、若年層、インバウンドの3つの層をターゲットにした施策を新たに展開する。

昨シーズンは子どもに着目した施策が成功

プリンスホテル事業企画部課長の安齋義直氏

プリンスホテル事業企画部課長の安齋義直氏

 現在、西武グループでは、苗場スキー場や富良野スキー場をはじめ、10カ所のスキー場を「プリンススノーリゾート」として運営している。そのうちの9カ所がプリンスホテルの直営で、多くのスキー場が宿泊施設を併設し一体運営を行っていることが特徴だ。単に滑るだけでなく、ホテルからすぐにゲレンデに出ることができる環境がプリンススノーリゾートの強みとなっている。

 スキー・スノーボード人口が減っていく中、今がまさに転換期だというのがプリンスホテルの認識。プリンスホテル 事業企画部課長の安齋義直氏は次のように語る。

「バブル景気の頃のスキーブームでスキーをやっていた世代が親となり子どもを持った今が、次の世代につなげるタイミング。ここで業態を変えなければいけないという意識から、昨シーズンより需要喚起の施策を打っていきました」

 まず業界全体として将来的なマーケット拡大を重視した。スキーは、大人になってから始める人が少ないスポーツであり、いかに早く始めるかで、その後の市場のボリュームも変わってくる。このため、できるだけ小さい年齢のうちからスキーを始めてもらおうということで、子どもに着目。昨シーズン(2012年〜13年シーズン)から、子ども向けの施策として「キッズフリープログラム」を実行した。

 具体的には、子どものリフト料金を無料にし、親が子どもをスキー場に連れて来るハードルを下げた。次に対象日を限り、レンタルの無料サービスや、無料レッスンを実施。また、子どもがゲレンデで滑るだけでなく、スキー場のスタッフとふれあい、スキー場での思い出をつくってもらうため、スキー場のパトロール体験や圧雪車の乗車体験などのプログラムも用意した。

 これらのことから、昨シーズンは子どもの集客が前年比約1・5倍に伸びた。プリンススノーリゾート全体の利用者数は前年比約104%に増加している。

現在の需要を喚起し、将来への線をつなぐ

子どもと親が一緒に楽しむ施策を展開

子どもと親が一緒に楽しむ施策を展開

 昨シーズンは子ども向けに集客し、一定のお客が集まる素地は固まったという。今シーズンは、子ども向け施策を継続した上で「親子・3世代」「若年層」「インバウンド」の3つをターゲットとした施策を展開する。

 昨シーズンは未来の需要を育てる意味合いがあったが、今シーズンは未来の需要を育てつつ現在の需要を喚起し、需要を点から線に結び付ける年と位置付けている。

 家族・3世代に向けての施策は、まず家族全員で楽しめるスキー場を目指す。40〜50代の親世代はスキーブームの最盛期にスキーを楽しんでいた世代であり、潜在需要は高い。また、祖父母世代は定年退職により余暇需要が拡大する世代である。さらに親・祖父母は子や孫と楽しみを共有したいと考える。親や祖父母のスキー熱を高めることが、子どものスキー需要、将来のスキー需要にもつながる。

 こうしたことから、「ファミリープログラム」として、子どもと大人が一緒に楽しめる企画を提供。親子が揃って受ける「プライベートレッスン」や「貸切ゲレンデ」、営業前に一番に滑っていただく「ファーストトラック」をファミリー向けに企画している。また、「物づくり体験」として、子どもが親や祖父母と民芸品などを一緒に作る企画を用意。こうした企画を通じ、スキー場を家族で楽しむ思い出づくりの場所にする。

 若年層への取り組みは、リクルートの「雪マジ!19」やSURF&SNOWの「ゲレコン」などの業界横断的なキャンペーンがあり、プリンスホテルも問題意識を共有し、これらの動きに参画している。プリンスホテル独自の動きとしては「20才リフト無料」を実施。前年に雪マジ!19の対象だった20歳のスキー客に対して12月と1月の平日限定でリフト券を無料にし、2月以降は半額にする。これにより、引き続きスキーを楽しんでもらおうという企画だ。

 ゲレコンについては、ホテルを備えるスキー場としては、顧客獲得の側面もある。ホテル業において、顧客を作ることは、ホテルを気に入ってもらって思い出の場所にすることである。ゲレコンで出会ったカップルが結婚すると、そのスキー場は思い出の場所になり、スキー場のホテルで婚礼を挙げる可能性もあり、ホテルの生涯顧客になる。こうなると、ゲレコンには単なる集客以上の効果を期待できる。

 インバウンドについては、訪日外国人が増加している現状で、今後はスキー需要も見込まれることから、今シーズンから積極的にPRしている。まず台湾市場へ積極的に展開。台湾には雪がないが、過去10年でスキーツアーの参加者が10倍になるなど、スキー熱は高い。昨シーズンのプリンススノーリゾートのインバウンドのうち、3割強が台湾からの顧客となっている。今シーズンの取り組みとしては、昨年9月に台湾の展示会に出展し、スキー場のPRと旅行商品の提案を行ったほか、ラッピングバスを走らせ、スノーリゾートの告知を行った。インバウンドの場合は、基本的に顧客は複数泊するため、宿泊が大きな意味を持つ。ここで、ホテルが付随する強みが生きてくる。

 今シーズンはこれらの施策に加え、外部環境も好転しており、プリンススノーリゾートの集客は昨シーズンよりもさらなる増加を目指す。今後も3つのターゲットの需要を喚起し、将来のスキー人口増大につなげていく。

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