政治・経済

トマト農園で農業研修 運営は「あびこ型推進協議会」

農作業に精を出す「援農ボランティア養成講座」の受講生

農作業に精を出す「援農ボランティア養成講座」の受講生

 「援農ボランティア」というのをご存じだろうか。農業に関心の高い都市住民が、高齢化や後継者難で労働力の確保に悩む都市圏の農家に行って農作業を手助けする人たちのことだ。新鮮で安全な農産物を都市住民に供給する農家の役割は大きいが、取り巻く環境が厳しさを増す中で農家の悩みは深まるばかり。それを少しでも解消するボランティアの〝助っ人〟活動が農家に好評だ。活動の目立つ千葉県北西部では、官民がボランティア育成に知恵を絞っている。

 我孫子市役所から手賀沼ふれあいラインを通って車で約5分、手賀沼を間近に臨む古川農園。古川鉄夫さんが妻と2人で経営するトマト農園で、約3千平方㍍の農地に9棟のハウスがズラリと並んでいる。8月に定植し、11月から翌年6月まで収穫して量販店や直売所に出荷する典型的な都市近郊農家だ。

 ここに朝8時半集まったのが中高年の研修生男女8人。古川さんがまず、作業内容を事前説明する。有機肥料と低農薬が特色の農園だと話した後、「いいですか、今日の仕事は2つ。トマトの葉っぱかきと、伸びた枝をビニールひもに巻き付ける作業です。枝は弱いので、丁寧に扱ってください」と古川さん。

 作業場のハウスに入ると、1棟に長さ50㍍の床が数列あり、床には2列縦隊でトマトが整然と植えられていた。「1棟でその数は4千本」という。研修生は床に沿って作業する。葉っぱかきの班と巻き付け班に分かれて午前と午後の3時間、作業に没頭する1日だった。

 経験を積んだ作業員が見回り、研修生に作業のコツや注意点を実地で教える。休憩時間には「各農家で栽培方法が違う。うちのやり方は他所の農家に明かさないでほしい。お互い、ライバルだから」と古川さんは、研修生にお願いしていた。

 この日の作業は、あびこ型「地産地消」推進協議会(米澤外喜夫会長)が行う「援農ボランティア養成講座」の一環だ。2014年度は9月から7回、座学と実習を織り交ぜた研修を行っており、うち4回以上受講した者がボランティアに登録される。研修生は全部で15人いるが、悪天候でこの日は半数が欠席した。

援農活動家は62人 受け入れ農家で週4日働く

 協議会は我孫子の市民や農家、JAに市が加わって04年に設立した任意組織。低農薬で栽培した農産物を独自に認証して普及したり、直売所へのエコ農産物出荷を勧めたり、地場産の安全な野菜を学校給食に供給したりと、我孫子ならではの地産地消活動を展開中だ。

 要するに、「あびこ型の〝農あるまち〟づくりを進めるのが狙い」(事務局の伊吹宏氏)で、援農ボランティア事業も協議会活動の重要な柱だ。援農活動を希望する市民を募り、養成講座や体験事業を通じて農業の基礎知識や農作業の技術を習得してもらって農家に送り出している。

 04年秋に事業を始めてから13年秋で10年、毎年15〜20人のボランティアを育成し続けている。現在の登録者は62人で、30代の会社員が30%、リタイア組が70%という構成だ。

 受け入れ農家は20軒で、農家の希望日に合わせて週4日、午前と午後に分けて働く。苗の植え付けや施肥、草取り、収穫とパック詰めといった作業が多いが、対価は原則として無償だ。

 受け入れ農家からは「技術を言うとキリがないが、意識の高い人が多く感謝している」、「労働集約の仕事だから、労力として助かる」とボランティアを評価する意見が多い。援農する側からも「退職して暇があるが、没頭できるものが見つかって嬉しい」、「農業の楽しさが分かった」と好意的な声が挙がる。

 悩みは農家の派遣要請数を充たせないこと。「10月は農家の希望数240人に対し、143人しか派遣できなかった」と話す伊吹さん、充足率を高めるべくボランティアのさらなる育成が課題だと指摘する。

今は都市農業に厳しい環境 八千代市の援農ボランティア

 援農ボランティアが脚光を浴びる背景には、農に関心を寄せる市民が増える一方で、都市農業を取り巻く経営環境が厳しさを増す現実がある。

 都市農業には新鮮で安全な農畜産物を都市住民に届ける役割のほか、災害時には防災空間として役立ったり都市と農村との交流の場を提供したりと、多様な役割がある。それを担う都市農家も、高い技術と農業経営に強い意欲を持つ人が多い。

 そんな都市農家の意欲を揺さぶるのが、大きな課税負担と高齢化の進展、後継者難、輸入農産物との価格競争などだ。押し寄せる荒波に耕作放棄地は増え、耕地面積が急落する。我孫子市でも、10年までの20年間に耕地面積は17%減の915㌶へ、農家数は43%減の550軒へそれぞれ減少し、67㌶もの耕作放棄地を抱える始末である。

 東京都の調査では、都市農業の多様な役割を認めて「農業・農地を残してほしい」という都民が85%もいる。首都に接する千葉北西部でも意識は同じで、市民の援農意識が非常に高い。野田市(アグリサポート事業)や流山市(アグリサポート制度)、鎌ケ谷市(援農ボランティア)などの援農事業に、100人前後の市民が加わる事実が、そうした援農意識の高さを示す。

 中でもボランティア養成に熱心なのが八千代市だ。独自のカリキュラムを組んだ「農業ボランティア養成講座(年6〜8回開催)」を1999年度から毎年、開いている。講座を終えて認証されたボランティアが現在、370人(実働は124人)もいる。

 ボランティアは17軒の受け入れ農家で、無償で援農活動を行っている。水稲と野菜、果樹が主力の八千代市農業の一翼を、援農市民も担っているわけだ。

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