政治・経済

阿見町に雪印の基幹工場 地域から新規採用300人

圏央道に近い阿見東部工業団地に新設された雪印メグミルク工場

圏央道に近い阿見東部工業団地に新設された雪印メグミルク工場

 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の沿線に新工場や物流拠点など産業立地が相次いでいる。都心から40〜60㌔圏、5都県を環状で結ぶ圏央道の魅力は、陸海空への交通利便性が格段に向上する立地条件の良さにある。2015年の全線開通をにらみ、企業立地は一段と活発化しており、早くも地域経済を活気づける起爆剤となってきた。受け入れ側の各自治体は久しぶりに訪れた好機をつかもうと、企業誘致に拍車を掛けだした。
 圏央道の阿見東IC(茨城県)を下りて県道を北へ2㌔ほど行くと、高さ30㍍級の白亜の工場が現れる。阿見東部工業団地内の用地13・4㌶に275億円を投じて新設された雪印メグミルクの阿見工場だ。工場棟(床面積3万6千平方㍍)を軸に物流棟(同2万1千平方㍍)、厚生棟(同3千平方㍍)の3棟から成る工場内ではトラックや乗用車が盛んに行き来する。
 この工場は雪印の横浜、伊丹、厚木の3工場を集約して造った同社最大の基幹工場。生産効率を上げるための新技術を導入するとともに、立地条件の良さを生かして物流機能を充実し、原料から製品までの一貫体制を敷いているのが特色だ。生産品目はマーガリン、プロセスチーズで、年産量は5万㌧。
 内田彰彦工場長は「14年3月から一部稼働し、15年度中に全面稼働したい」と話し、その段階までに3工場から200人規模の社員の転入が完了する。と同時に、地域から生産部門で200人ほど、物流部門で100人ほどを新規採用する計画だ。
 雪印の進出で合計300人規模の新規雇用が生まれるわけで、地元では「雇用創出効果と税収効果で、地域は大いに元気付けられる」(天田富司男・阿見町長)と雪印効果を期待する。
 約4万7千人の阿見町は人口を5万人以上に増やす町づくりを掲げている。天田町長は「雪印の進出は5万人人口への起爆剤になる」と話し、小学校の新設や住宅、子育てなどの環境を整えて、雪印の転入社員の定住化を図る考えだ。また、雪印に続く新規企業を誘致するため、進出奨励金制度も拡充した。

日野自は古河市に新鋭工場 地域経済に日野の進出効果

 JR古河駅から東へ約10㌔の古河名崎工業団地に大中型トラックを組み立てる新工場を建設しているのが日野自動車だ。日野工場の機能を移管して古河に集約するもので、現在稼働中のKD工場に続き、基幹部品をつくるアクスル工場やシャシー工場、キャブ工場が順次、加わって16年中に全面稼働する。
 日野工場からの全面移管は当初、20年までだった。それが4年も早まったわけで、地元では地域へのさまざまな経済効果や人口増への日野効果に期待する。
 その効果がいち早く現れてきたのが雇用の分野だ。全面稼働時の従業員数は新規採用を含め2千人規模といわれるが、現地採用のほうは着々と始まっている。菅谷憲一郎・古河市長は「新卒高校生の内定者が増え出した。10年から14年までの内定数が県内で155人、うち古河市で79人に上る」と打ち明ける。
 雇用のほか、税収や地元商工界への波及効果はこれから年を追って大きくなる見通しで、これをまちづくりにどう生かすかが今後の課題だ。菅谷市長は「高校生までの医療費免除制度を新たに設けるほか、住宅や教育などの環境を整えて定住化や人口増対策を進める」構えだ。
 自動車産業は裾野の広い産業で、日野の進出は周辺に多くの関連産業の集積をもたらす。圏央道沿いの周辺自治体間では、日野効果の恩恵を受けようと関連企業の誘致合戦が始まっている。古河市の川上幸男企画部長によると、これまでに結城、筑西、下妻の各市への関連企業4社の進出が内定したという。
 古河市も片田南西部に新しい工場用地を整備し、日野の関連企業誘致合戦に加わる意向だ。

物流拠点も新設ラッシュ 自治体、久しぶりの誘致合戦

 千葉県木更津市から横浜市まで総延長300㌔に及ぶ圏央道は東名や関越など5高速道に直結するほか、神奈川、茨城両県の港湾、成田や羽田の空港への接近を容易にし、物流の大幅効果が期待される。都心を通らずに東西の日本を行き来でき、原料調達や製品出荷を安価で円滑に実現できる意義は大きい。
 圏央道に企業が集まるのもそうした立地条件の良さが一因だ。加えて、産業界の置かれた状況や潮流変化も影響している。
 一例が食品業界だ。国内市場の成熟と設備の老朽化を背景に、事業分野の整理や生産拠点の集約統合を迫られている。集約した生産拠点の新規立地場所を求める際、好条件の圏央道沿線が適地として浮上してきたのだ。
 域外の3工場を集約して埼玉県北本市に大型工場を新設した江崎グリコ、茨城県五霞町に豆乳の新鋭工場を造ったキッコーマン、それに雪印の阿見進出はそうした事情を示すものだ。
 圏央道でもう1つ際立つのが、物流拠点の新設ラッシュだ。
 しまむら、ヤオコーが埼玉県東松山市に、コメリが茨城県稲敷市に自社店舗向け流通施設を新設したほか、米プロロジス社や米ラサール社、三菱地所や三井不動産など内外の企業が各所で超大型の物流賃貸施設を新設している。これら施設への活発な投資合戦はネット通販市場の急成長に対応した動きだ。
 工場や物流施設の相次ぐ立地に、自治体側は表情を崩す。これを千載一遇のチャンスととらえ、新たな企業誘致につなげようと狙っている。千葉、埼玉、茨城各県や市町村が一斉に受け皿作りに精を出し、工業団地の造成や優遇策の拡充策に乗り出した。
 企業進出は地域社会を明るくする心理効果を生むだけではない。雇用や税収などを通じてまちづくりの支援材料となる。

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