政治・経済

 2015年頃をめどに日本のすべての世帯におけるブロードバンド(高速大容量)サービス利用の実現を目指す「光の道」構想の包括的検証が今年スタートする。

 10年12月に決定した同構想は、ブロードバンドの全国普及に向けてNTTが保有する回線設備の開放問題が焦点となり、ソフトバンクの孫正義社長らが設備部門の分離・別会社化を主張。いわゆる「構造分離」も俎上に上ったが、結局は「不確実性」を理由に見送られ、設備保有部門については、他の事業部門から人事や会計などを切り離し、設備を借りる他の事業者と公平・公正に扱う「機能分離」に落ち着いた経緯がある。制度導入から3年後の検証が2月にも始まるが、再びNTT、ソフトバンク、総務省の三者三様の思惑がぶつかる見通しだ。

 10年の論議では、設備部門会社に負債1兆円に加えて5千億円を出資する提案も退けられ、一敗地にまみれた孫社長だが、検証論議に向けて巻き返しを虎視眈々と狙っている。ソフトバンクは構造分離が不可能ならばと、8回線を一括して契約する仕組みの光ファイバーを1回線ごとに細分化(8分岐)して貸すよう主張したが、この案もNTTの強い反対で却下。ソフトバンクは欧州の通信事業者の例をもとに、8分岐問題を再び強く求める方針だ。

 NTTは光サービスの都市部のシェア低下や設備部門の独立性を理由に機能分離の進展を主張。設備部門の現状維持だけでなく、さらなる規制緩和を求める見通しだ。一方、総務省は「いつまでもNTTをいじめる時代じゃない」と、規制緩和に踏み切る方針を示唆している。中でも、KDDIがNTT対抗で打ち出した携帯電話と固定通信のセット割引を条件付きでNTTにも認める可能性を検討している模様だ。

 包括検証論議では、回線設備を保有するNTT東西地域会社の規制の遵守状況や、料金の低廉化・市場シェアの動向、ブロードバンド全国普及に向けた取り組み状況を検討する。問題があれば構造分離を含むさらなる規制の可能性も示していたが、総務省の姿勢も微妙に変化するなか、政府の産業競争力会議で打ち出された規制改革方針に沿って新たな論客も参戦する模様。論議開始が当初予定の1月下旬からかなりずれ込んで込んでいるのも、荷が重い座長や委員の引き受け手が決まらないからとみられているが、さもありなん、である。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る