マネジメント

米国市場における新興成長企業の地位の確定時期

 前回に続き、米国「新規事業活性化法(JOBS法)」に関連し、日本企業を含む「新興成長企業(EGC)」についての手続きなどを説明します。

 米国証券法ルール第401条(a)は「登録届出書および目論見書の様式および内容は、当該登録届出書や目論見書の当初提出日に有効なルールおよび様式に適合するものとする」と定めています。

 同項は「当初提出日」現在の登録届出書に適用されますが、非公開審査のため米国証券取引委員会(SEC)に対して「提供」される登録届出書のドラフトは「提出」とみなされず、ドラフトの提供時点は、当初提出日にはなりません。

 従って、非公開審査を終えた発行体が、登録届出書を提出する日にEGCに該当すれば、その地位は米国証券法ルール第401条(a)によって、当該登録届出書が登録されている間は保持されます。

 そのほか発行体は、登録届出書のドラフトを非公開審査のためにSECに提供する時点と、ドラフトの修正を提供する各時点で、EGCに該当する必要があります。米国証券法第5条(d)の下で認められた予備調査的コミュニケーションの使用に関しても、発行体がこれを行う時点でEGCに該当するかどうか判断する必要があります。

新興成長企業についての予備調査リサーチレポート

 発行体がEGCに該当する場合は、オファリングやその後の報告開示、コーポレートガバナンスに関連していくつかの規制緩和措置を受けられます。これらの措置は、公募プロセスの円滑化や新規上場(IPO)前後のコミュニケーションの促進、EGCの特定の開示要件の緩和を目的としています。

 日本企業を含め、米国でIPOを目指す多くの企業は、SECが規制するオファリング関連のコミュニケーションに対する制限に驚くことがよくあります。

 しかし、JOBS法に基づいて制定された米国証券法第5条(d)はEGCについて、登録届出書の当初提出の前後を問わず、EGCによるオファリング案の成功率を判断するために一定の適格機関買付人と認定機関投資家との口頭か書面によるコミュニケーションが柔軟にできるよう定めています。

 ただし従来通り証券の売り付けに関しては、米国証券法第10条(a)の要件を満たす目論見書が、投資家に対して同時か事前に提供されていない限り一切できません。

 この規定によってEGCは、投資家らと接触して当該オファリングに対する関心を判断し、オファリングの可能性を予備調査できます。このコミュニケーションには様式・内容に関する制約はなく、SECに対して書面で当該コミュニケーションを届ける義務も負いません。

 またJOBS法は、EGCが登録届出書を提出する前後でも、ブローカー・ディーラーがEGCについてのリサーチレポートを公表・配布することを認め、ブローカー・ディーラーがオファリングに参加もしくは参加予定の場合でも、リサーチレポートは米国証券法上のオファリング書類とはみなされません。 

 SECも自主規制機関も、ブローカー・ディーラーがリサーチレポートを公表・配布すること、またはオファリング後やロックアップ(売却禁止期間)満了前の期間にEGCの証券に関する開示を禁じる規則や規制を採択できません。

新興成長企業のIPO登録届出書は極秘に審査

 JOBS法タイトルⅠは、SECがすべてのEGCのIPO登録届出書のドラフトを極秘に審査しなければならないと規定しています。EGCは、IPO登録届出書のドラフトを極秘の扱いで提供して、非公開の審査を受けることができます。ただし、最初の極秘提供文書やその後の補正文書は、発行体によるロードショー開始の21日前までにSECに正式に届け出なければなりません。

 SECは、極秘提供文書や補正文書を、それぞれフォームDRSとフォームDRS/Aを使い、EDGARを通して提供するよう求めています。

 登録届出書のドラフトを提供する際、届け出料はかかりません。登録届出書のドラフトの極秘扱いによる提供には登録者や役員などの署名は必要なく、SECへの届け出は未了なので、非公開審査の終了後の登録届出書には添付される監査人その他の専門家の同意書も必要もありません。ただし、SECは、非公開審査用登録届出書のドラフトが、最初の提供の時点で、署名済みの監査報告書を含み実質的に完成していることを想定しているため、登録届出書のドラフトに重大な欠陥がある場合、審査を保留することにしています。

 JOBS法に従って施行された米国証券法セクション6(e)は、発行体がロードショーを開始する日の21日前までに極秘提供文書や補正文書をSECに正式に届け出る義務を定めているものの、SECは正式に届け出した場合、それ以前の極秘提供文書や補正文書は、署名も同意書も不要としています。

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