マネジメント

マーケティング開始時点がロードショー

  今回は米国「新規事業活性化法(JOBS法)」に関連した「新興成長企業(EGC)」についての解説の最終回になります。

 JOBS法に従って施行された米国証券法セクション6(e)は、発行体がロードショーを行う21日前までに極秘提供文書や補正文書を米国証券取引委員会(SEC)に正式に提出しなければならないと定めています。ロードショーという用語は「発行体の経営陣の1または複数の役員によるオファリングに関するプレゼンテーションを含むオファーを含み、かつ、発行体、当該経営者およびオファー対象の証券のうち1または複数についての説明を含む」と定義されています。広い定義のため、予備調査的コミュニケーションがロードショーとみなされ、その21日前に届出義務が発生するかしないかは疑問が残ります。

 一般に、米国証券法セクション5(d)に基づいて予備調査的コミュニケーションを行った場合、EGCがこれを米国証券法セクション6(e)のロードショーとして取り扱わなかったとしても、SECはこれを指摘しないと考えられます。さらに、EGCが従来型のロードショーを行わず、かつ、米国証券法セクション5(d)を遵守する予備調査的コミュニケーションを除き、ロードショーの定義に該当する活動をしない場合についてSECは、極秘提供文書や補正文書は登録届出書の効力発生予想日の21日前までに正式に届け出るべき、としています。

 SECは、EGCの目論見書の表紙にその会社がEGCであることを明記しなければならないとしています。さらに、EGCの登録届出書について以下の情報開示を求めています。

⃝会社がEGCの地位を喪失し得る状況と時期の説明

⃝サーベンス・オクスレー法のセクション404(b)上の要件や、「セイ・オン・ペイ」条項または「セイ・オン・ゴールデン・パラシュート」条項の免除など、EGCが利用できる各種免除の簡単な説明(ただし「外国民間発行体」として届け出る非米国会社は、EGCに該当するか否かにかかわらず、これらの要件の一部の免除を受けることができるため、別の情報開示が求められる)

⃝EGCがJOBS法セクション107(b)に基づき、米国財務会計基準審議会により12年4月5日以降に制定された会計基準への移行期間の延長を利用するか否かの選択

 SECは、EGCが延長された会計基準への移行期間の利用を選択しない場合、その選択が取消不能であることを記載するよう要求しています。SECはまた、EGCがこの選択の結果、EGCの財務諸表が公開会社への効力発生日を遵守する発行体と比較不能になり得ることをリスク要因として記載するよう求めています。同様の記載が、MD&AでのEGCの重大な会計方針の開示でも求められます。

 EGCがその新規上場(IPO)登録届出書で開示する必要のある監査済財務諸表は2年分のみで、EGCはそのMD&Aの対象を監査済財務諸表の対象期間に限定することができます。SECは、IPO登録届書に記載する主要財務データを2年分のみに限定することができる、としています。

IPO後に受けられる要件免除はさまざま

 JOBS法タイトルIは、IPO後にEGCが受けられるいくつかの要件の免除を定めています。EGCである発行体は、EGCとして適格である限り、ドッド・フランク法とSEC規則が求める「セイ・オン・ペイ」「セイ・オン・フリークエンシー」「セイ・オン・ゴールデン・パラシュート」条項上の決議を行う必要がありません。外国民間発行体として届け出る会社は米国委任状勧誘規制の適用がないため、EGCに該当するかしないに関らず、これらの要件の免除を受けられます。

 仮に、公開会社会計監査委員会(PCAOB)が、監査人のローテーションや会社の財務諸表の監査に関する追加情報を提供するための監査報告書の補足(監査人によるディスカッションと分析)を義務付ける潜在的要件を提案・採択したとしても、EGCはそのような規則や基準からも除外されます。PCAOBが採択する他の新監査基準は、SECがこの要件について投資家保護の目的上、必要で適切とみなさない限りはEGCの監査に適用されません。

 EGCは、サーベンス・オクスレー法セクション404(b)に基づく内部統制に関する監査人の報告書を取得する義務を負いません。その結果、通常の発行体の場合、IPO時からその要件の適用時期まで1年の経過措置期間が設けられるところ、EGCの場合は、最高5年間の経過措置期間が設けられます。また、前述のとおり新・改訂会計基準への移行期間に関しては、延長するのか否かの選択となります。EGCが利用できる縮小開示規定または緩和されたコーポレートガバナンス要件については、それを部分的に利用することが許容されています。

 

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