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(写真:AFP=時事)

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オバマは君子か小人か

 君子豹変す。「君子」とは、学識も人格も優れた立派な人のことだ。その逆の、つまらぬ人間は「小人」である。豹の毛は季節によって抜け変わり、斑紋がはっきりと目立つ。易経の原文は「君子豹変、小人革面」とあり、「立派な人は、自分の過ちを認めれば、豹の皮の斑点が黒と黄ではっきりしているように心を入れ変え、行動も改める。逆に、つまらぬ人間は、表面上は変えたように見せかけて、中身は全然変わらない」となる。

 さて、オバマは君子か小人か。

 オバマは2006年、イリノイ州の新人上院議員だった時に債務上限の引き上げに反対していた。

“The fact that we are here today to debate raising America’s debt limit is a sign of leadership failure.”

〈今ここで米国の債務上限の引き上げを議論すること自体、リーダーシップの失敗だと言えましょう〉

 とブッシュ大統領を責めている。

“It is a sign that the U.S. Government can’t pay its own bills.”

〈これこそ米国が自分のツケを払えないということの証しです〉

“It is a sign that we now depend on ongoing financial assistance from foreign countries to finance our Government’s reckless fiscal policies.”

〈これこそわが政府の無軌道な経済政策によって諸外国からの経済的支援無しには立ち行かなくなっている現状の証しです〉

 ここまで債務上限の引き上げに反対していた新人上議員は、やがて大統領になり、債務上限引き上げの法案に自らサインする立場となった。

 連邦政府が国債などで借金できる債務の上限は、連邦議会(United States Congress)が定める。議会が上限の引き上げを認めないと資金繰りが困難になり、米国債はデフォルトに陥る可能性がある。

 今回、その引き上げ期限は2月末に迫っていた。もし引き上げが認められないと、5年前のリーマンショックから回復途上にある世界の金融市場、経済の混乱は避けられない。

 米上院で多数を占める与党民主党と下院で多数を占める野党共和党はネジれ、この問題では厳しく対立し、決着は先送りが繰り返されてきた。しかし11月の中間選挙を控えて一時休戦ムードが広がり、下院と上院は「上限法案」を相次いで賛成多数で可決した。

 連邦議会は少し前には14会計年度(13年10月〜14年9月)と15会計年度の予算の大枠も認めている。これで暫定予算の不成立による政府機関の一部閉鎖という昨秋の悪夢再来の恐れも遠のいた。

 もし8年前ならこの引き上げに反対しただろう新人上院議員だったオバマは今では賛成に回り、2期目の大統領として法案に署名した。

President Obama signed legislation that raises the U.S. debt limit through March 2015, taking the politically volatile issue off the table with congressional elections coming up this November.

 連邦政府の借り入れが認められるのは15年3月までで、オバマ政権にはこの1年余りの猶予期間に、財政の懸念材料をどう取り除くかが問われる。

 

債務上限引き上げに反対していたオバマ

 

[今号の英語]The buck stops here.

 この英語は米国が起源だが、今では英国人も使うほど常套句となっている。トルーマン大統領の机にはThe buck stops here.というプレートが置いてあった。

 「責任は俺が取る」という意味だ。Pass the buck to〜というのは「〜に責任転嫁する」という意味だが、buckとは元来ポーカー(poker)の親のことである。

 Buck passingというのは親になりたくない時にほかのカードプレーヤーに親をパスしていくことで、ここから責任転嫁、という意味になった。

 どこまでも転嫁されていく責任は大統領執務室(Oval Office)の大統領のところ、最高責任者のところで止まる。これ以上、どこにも行きようがない。だから、The buck stops here.なのである。ちなみにルーズベルトが死んで副大統領から繰り上がったトルーマンは米国大統領史上最低の支持率22%だった。これはジョージ・W・ブッシュと並ぶ数字だ。
 われわれ日本人が覚えておくべきは、原爆投下の最終責任者はトルーマンだということだ。
 The buck stops here. 極東の島国の非戦闘員を焼き殺す決断は大統領執務室で下された。
 さて、新人上院議員時代のオバマはこのトルーマンのモットーを援用している。
“Increasing America’s debt weakens us domestically and internationally.”
〈米国の負債は国内外でわれわれの力を弱めていきます〉
“Leadership means that ‘the buck stops here.’”
〈リーダーシップとは元来、「責任は俺が引き受ける」ということを意味するはずです〉
“Instead, Washington is shifting the burden of bad choices today onto the backs of our children and grandchildren.”
〈ところが、ワシントンは今日の悪い選択に起因する重荷をわれわれの子どもや孫の世代の背中に背負わせようとしています〉(中略)
“I therefore intend to oppose the effort to increase America’s debt limit.”
〈でありますから私は、ここに米国の債務の限度引き上げに反対する者であります〉
 8年後、立場の変わったオバマは債務の上限引き上げに署名した。全くコメントは出さなかった。

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