国際

人、モノ、サービスの移動がより自由に

アジア等各校のGDP金額などの比較 アジア各国の1人当たりGDPの推移

 1967年にインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国による地域協力機構として設立されたASEANは、現在、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアを加えた合計10カ国(ASEAN10)が加盟。東アジア全域をカバーする巨大な経済圏として躍進しつつある。

 ASEAN10の名目GDP総額は、2012年に約2兆3千億㌦に拡大した。これは世界に占めるGDPシェアの4・3%に当たる。1人当たりGDPではシンガポールの5万1千㌦を筆頭に、ブルネイ、マレーシアと続く。タイとインドネシアも自動車の販売が爆発的に増加する目安となるといわれている3500㌦を既に超えている。他の国々もペースの差こそあれ、着実な成長を遂げていく見通しだ。

 ASEANが注目される背景には、巨大マーケットとして期待をかけていた中国の成長に陰りが見え始めていることもある。特に日本企業にとっては政治的不安などの理由から、中国以外の有望な投資先を発掘する動きが出始めている。その意味で、成長のポテンシャルが高く、日本との政治的関係も良好な国が多いASEANは新たな投資先として魅力的に映る。実際に、11年以降は日本からASEAN向けの新規投資が中国向けを上回っている。

 日系企業をはじめ、現在、世界中の企業や投資家が大きな関心を寄せているのが、15年に控えるASEAN経済共同体(AEC)の発足だ。

 もともと先に加盟した5カ国にブルネイを加えた6カ国の間では、一部例外を除いて既に輸入関税撤廃などが実施されているが、この対象を10カ国すべてに広げるという構想だ。さらに非関税障壁の撤廃も加えて、物品、サービス、人、資本が自由に移動できる市場の実現を目指す。

 欧州連合(EU)と違って、AECの場合は域外に対する共通関税や共通通貨の導入が予定されているわけではない。経済、社会、文化などにおける東アジア諸国の多様性は欧州の比ではないほど大きいともいわれており、足並みを揃えるのは難しいとの見方もある。

 それでも巨大経済圏の誕生は、おおむねポジティブに捉えられている。タイ工業連盟(FTI)のパユンサック・チャートスティポン会長は、

「AEC自体は良いアイデアだと思う。マーケットとプロダクションベースの統合によって、世界で9番目に大きな経済圏が生まれることになり、そのメリットは大きい」

 と、強い期待を寄せる。

域内で産業構造の変化が進む

日本から主要ASEAN諸国への投資の推移 ASEAN諸国の所得

 EUの例を見るまでもなく、地域間の経済統合はメリットだけではなく、加盟国間の格差などに起因するデメリットも存在する。

 ASEANの中でも〝富めるグループ〟に属するシンガポール、マレーシア、タイなどはマーケットの拡大という果実を得る一方で、周辺諸国からの低価格品やサービスの流入によって、自国内での競争激化が必至。労働集約型産業が、周辺国に出ていくことによる労働者不足も懸念されるところだ。このため、今後はより高付加価値な製品・サービスへシフトしていかなければ生き残りは難しくなってくるだろう。

 その意味で、日系企業に対しては、これまで以上に技術移転などの要望が増えてくるのは確実だ。後進組のミャンマー、ラオス、カンボジアなどは、労働集約型産業の誘致を皮切りに、さらなる経済発展を遂げられるかが大きな課題となる。

 ASEAN諸国に対する日本企業のかかわり方も変化してきている。

 例えばタイの場合は、以前は自動車メーカーを中心に、生産拠点として安い労働力を求めて進出する動きが目立っていた。だが、最近では労働者の賃金水準が上昇している上、失業率も1%を切るなど労働者不足が深刻化。これに伴いタイ政府は、労働集約型産業の海外移転を促すとともに、国内では高付加価値産業への転換を促進する方針を打ち出している。

 一方、日系をはじめとする海外企業は、タイそのものへの投資に加え、それを足掛かりに他のASEANマーケットへの進出を狙う方向にシフトしつつあり、進出する業種も製造業だけでなくサービス産業などが近年は増加しているという。タイ工業大臣のプラスート・ブンチャイスック氏は、

「わが国にとってAECのメリットは市場拡大と原材料などの低価格購入が可能になること。消費者の選択肢が増えるのも良いことだ。経済統合することによって、中国やインドといった域外の市場に出ていく足掛かりもできる。そのためには自ら発展し、世界に通用するモノ・サービスづくりをしなければならない」と、語る。

 東アジアを起点として、グローバル経済に大きな波が押し寄せようとしている。

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