マネジメント

ソニーのブランドを活かす戦略を

 

本業のエレクトロニクスが不振

  ソニーの凋落が止まらない。ソニーは、昨年10月に2013年度第2四半期連結業績を発表した。売上高は前年同期比10・6%増の1兆7755億円だったものの、営業利益は前年同期から155億円減となる148億円で、四半期純損益では193億円の損失を計上した。

 しかも、この営業利益には、医療関係者専用のソーシャルネットワークを手掛ける社内ベンチャー、エムスリー社株式の一部売却による売却益128億円や、タイの洪水による損害損失に対する保険収益48億円も含まれていた。

 本業とも言えるエレクトロニクス商品の成績はどうだったのか。

 テレビを含むホームエンタテ18インメント&サウンド分野は、売上高が前年同期比11・8%増の2638億円であったが、この増加は主に為替の好影響によるもので、液晶テレビの販売台数は減少していた。

 したがって、営業損益は前年同期に比べ37億円改善したとはいえ121億円の損失で、そのうちテレビの損失が93億円にも上っていたのであった。また、14年度の販売台数見通しも下方修正されている。何とか黒字化を達成してはいるが、結局エレクトロニクス分野は相変わらずの不振なのである。

 これに先立つ13年5月に発表された12年度の連結業績は、売り上げが6兆8千億円、営業利益は2300億円であった。これは前年度のマイナス673億円からみれば大きな黒字改善であったが、ソニーモバイルの連結子会社化、為替の好影響、金融ビジネスの収入増加などが寄与しただけで、本業と言えるエレクトロニクスでは1344億円もの赤字であった。

テレビの持つブランド力を捨ててはならない

 一方、2300億円の営業利益を事業分野別に検討すると、金融関連が1458億円、映画が478億円、イメージセンサーなどのデバイス事業が439億円、音楽事業が372億円と続いていた。

 こうした事実から、ソニーはエレクトロニクス部門と優良な金融やエンタテイメント部門を分離して、古いソニーは縮小か売却し、新しいソニーは金融やエンタテイメント分野で勝負すべきだという議論もある。

 確かに金融部門は大きな利益をもたらしてはいるが、それはソニーというブランドで売り上げたものではなく、低廉で高いサービスで達成されたものである。

 それはそれで素晴らしい成果だが、ほとんどが国内売り上げでありグローバルなものではない。保険等の規制緩和が進み、ネット生保が急拡大すればこの高い利益率も確実とは言えない。

 だが最大の問題は、この戦略ではソニー最大の資産である「Sony」という素晴らしいブランドを生かすことができないことだ。映画とてソニーというブランドが売り上げに貢献できるわけではない。

 その意味で、コンピューター部門の売却はスマートフォンやタブレットで代替できるとしても、テレビの分離はあってはならない意思決定だと思う。

 なぜなら、テレビの持っているブランド価値や将来の潜在力は想像以上に大きいからだ。世界中のどんな家庭やホテルに行っても、居間やベッドルームのど真ん中に鎮座できるのはテレビにほかならない。家族団欒の中心にあるのもテレビであり、ホテルに戻ってほっとする瞬間に手を伸ばすのもテレビだ。

 しかも、これからのテレビはインターネットの結節点になるだけでなく、家庭の電力需要や供給のコントローラーにもなり得る。これに携帯電話、タブレット、ゲームマシンが境目なしに同期化すれば、それは米アップル以上の価値を産むだろう。

 ソニーにはこれに加えて、映画、音楽、ゲームというコンテンツもすべてが揃っているのだ。

 

ソニーが再び世界を獲るために必要なこと

 

ライバルが最も嫌う手を打つ

  今、アップルが打とうとしている次の手は「スマートテレビ」だという。多分、iPhoneやiPadと自由に組み合わせたテレビを出してくるのだろう。

 そうならば、その前にソニーこそ持ち駒のすべてを繋ぎ合わせるテレビを出すべきだ。

 今、この手のことをやられて最も困るのはライバルであるアップルや韓国サムスン電子である。戦略の基本は無駄な「戦さを略す」ことであるが、天下分け目の決戦であれば相手が最も嫌がる手を打つことである。

 しかも、主戦場は30億とも40億人ともいわれる新興国、特にインド・中東・アフリカ・南米だ。これらの地ではまだソニーブランドが生きている。

負けている時こそ強みへの徹底的な投資を

 この地で安価なスマートフォン、タブレットそしてスマートテレビをトータルに提供できれば、世界は再びソニーの支配下に収まるだろう。ただし、価格はライバルたちの半額以下にしなければならない。高くていいものは、安くていいものに絶対に負けるからだ。

 負けが込んでくると往々にしてわれわれは弱いところを嘆く。しかし、負けが込んでいる時こそ、自分たちが持っている強いところに徹底的に投資することだ。

 戦後70年近く日本企業が営々と築いてきた「メイド・イン・ジャパン」を安易に捨ててはいけない。

 

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