政治・経済

新型iPhone発売で国内市場でキャリアが横並びに

 NTTドコモがついにiPhoneの販売を開始しました。

 産業競争戦略の視点から見ると、ドコモからの当面の顧客流出を防ぐという短期的な効果はあると思いますが、中長期的にはますます各キャリア間の差がなくなり、土管化(通信事業者がサービスや端末を提供せず回線を提供するだけの状態)が進んでいくと思われます。一方、これまでアンドロイド端末を供給してきたメーカーはドコモ向けを中心に展開してきたところが多いので、戦略の見直しが必要になってくるでしょう。

 ネットワークの「質」という点で見ても、昨年ソフトバンクにプラチナバンドが割り当てられたことで、キャリア間でつながりやすさの差がなくなってきています。

 こうなると、ユーザー数が多いキャリアのほうが逆に不利になる可能性すらあります。以前はエリアにおけるつながりやすさに差があることが問題でしたが、それが解消された今は、一定のエリアに多くのユーザーを抱えているほうがつながりにくくなるということもあり得るのです。この点でも、ドコモの圧倒的優位性というものはもはやなくなったと言えます。

 取り扱う端末でもネットワークの質でも差別化できないとなると、相対的にシェアが小さいキャリアが積極的に料金競争を仕掛けてユーザーを獲得しようとしてくるでしょう。こうしてユーザーのキャリア変更が進めば、いずれはドコモ、au、ソフトバンクの3社でシェアを仲良く3等分する形に収斂していくのは確実です。市場均衡に向かう流れには、抗えないように見えます。

 そういうわけで、今、各キャリアに問われているのは、競合との差がなくなった状態でどんな戦い方を選択するかということなのです。

 既に三者三様の戦略が実行されつつあります。例えば、ソフトバンクはスプリント買収によって、主戦場を米国まで広げました。つまり戦う土俵そのものを変えたのです。今後、ソフトバンクにとってドコモやauは、日本という1つのマーケットの中での競争相手にすぎず、AT&Tやベライゾンなどのより大きな敵と戦うことになります。

 ドコモは携帯端末周辺のサービスではもはや差別化が難しいので、周辺事業となるEコマースなどに進出しようとしています。また、auはケーブルテレビと端末に両方加入すれば料金が安くなるといったパッケージングサービスの強化に取り組んでいます。こうした取り組みはNTTグループでは実行しにくいため、1つの差別化と言えるでしょう。

 しかし、それぞれの戦略には課題があるのも事実です。

 ソフトバンクの場合は、これまで孫正義社長の強烈なリーダーシップのもとに動いてきましたが、海外まで市場が拡大した今は、1人ですべてをこなすのは不可能ですから、孫さん以外にマネジメントができる人材をどれだけ育成できるかが鍵となります。

 ドコモに関して言えば、新規事業は相当大きな覚悟で進めないと大きなビジネスには育てられないので、通信事業から離れたビジネスにどれだけ人材と資金を投入できるかが課題だと思います。auは単に価格面の優位性をアピールするだけでなく、消費者に分かりやすい商品のパッケージングが必要になってくるでしょう。

指紋認証システムは新型iPhoneよりガラケーが先だった

 一方、端末を提供するアップルの側も盤石ではありません。

 先日発売になったiPhone5sと5cを見ると、ユーザーインターフェースがかつてと違い、ちょっと平面的な印象を受けます。少なくともスティーブ・ジョブズが健在だった時は、アイコンの特殊性やお洒落さでは群を抜いていて、これがiPhoneの人気の理由でもありました。

 とはいえ、ユーザーインターフェースは慣れの問題なので、実際に使ってみるとあっという間に慣れてしまいましたが。

 1つ残念に思うのは、今回iPhoneに初めて搭載された指紋認証システムを、世界で初めて携帯端末に導入したのは実は日本のガラケーだったということです。

 ガラケーを作っていたから日本は競争に負けたなどと言われていますが、ガラケーのさまざまな技術を海外勢が参考にして、スマホに搭載しているという事実をもう一度考え直すべきではないでしょうか? iPhoneの絵文字もiモードの絵文字を参考にして作られていることを考えると、非常にもったいない話です。

 高い技術を持ちながら、それを世界的な競争に生かせなかった日本企業は大いに反省すべきでしょう。

 

【iPhone】関連記事一覧はこちら

【政治・経済】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年2月号
[第45回経済界大賞]
  • ・[大賞]新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・[特別賞]小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
  • ・[優秀経営者賞]水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・[優秀経営者賞]青野慶久(サイボウズ社長)
  • ・[ベンチャー経営者賞]及川智正(農業総合研究所会長CEO)
  • ・[ベンチャー経営者賞]山本正喜(ChatworkCEO兼CTO)
  • ・[グローバル賞]ハロルド・ジョージ・メイ(新日本プロレスリング社長兼CEO)
  • ・[100年企業賞]高松建設(高松孝年社長)
[Special Interview]

 新浪剛史(サントリーホールディングス社長)

 創業精神の共有から始めた米ビーム社との統合作業

[NEWS REPORT]

◆海外メーカーを次々と買収 キリンがクラフトにこだわる理由

◆売上高は前期比3割増 止まらぬワークマンの快進撃

◆第3の都市はどこに? 「スタートアップ拠点」争奪戦

◆寿司屋の大将は3Dプリンター? 電通が画策する未来の飲食

[特集]

 もっと眠りたい

 明日のパフォーマンスを劇的に高める

 一流の睡眠術

ページ上部へ戻る