テクノロジー

イラスト/坂木浩子

イラスト/坂木浩子

 あれだけの事故が起きたのにいったい何が変わったのか? とよく尋ねられる。実は大きな変化が起きていると私はみる。

 西欧諸国は28年前のチェルノブイリ事故以降不安の中にあった。このため、廃炉目標を立てたが実現できず、何度も廃炉計画を先延ばしにしてきた。

 しかし、再生可能エネ化を少しずつ進めてきた。値段の高い再エネ設備も大量購入すれば、量産で安くなるだろうと見込んだ。風力は大型化が功を奏し、発電単価が1㌔㍗時10円を切り、十分な競争力がついた。

 地上風力だけでは立地が限られるため、ここ数年、ドイツではバルト海の洋上風力開発に進んだ。太陽電池導入も2004年から本格化し、当初80円の買取価格が20円を切り、一般家庭の電力料金より安くなった年が11年であった。さらに、11年はドイツで再生可能エネによる発電量が原子力発電を超えた年となった。

 11年、福島事故を知ってドイツがなぜ10年後の脱原発が可能と判定したのかが分かる。再生エネの価格が手の届く範囲に下がってきていたからだ。

 地域主導型や市民風車方式が欧州で大きな効果を上げてきた。また、ドイツでは電力料金の値上がり分の大半は国民が引き受け、産業用電気料金ははるかに安く保たれている。改革は主に国民の負担で推進している。西欧大陸諸国の多くがドイツと歩調を合わせるようになった。

 設備価格の低化に連れ、再生エネ導入速度は全電力の毎年4%を超える国も出てきた。これまで遅れていた米中もこの3〜4年急速な再生エネ導入を開始し、12年にはこの両国だけで世界の6割の再生エネを受け入れた。特に中国の導入計画は非常に野心的になっている。

 自民党資源・エネ戦略調査会が省エネも含めれば30年までに35%の電力を再生エネで置き換えることはそれほどの負担なくできるとする試算を2月末発表した。西欧諸国が犠牲を払って高価な太陽電池を買い続け、値段を10年前の数分の1に下げてくれた。日本はこのお陰で数倍の速度でスタートできる。13年の日本の導入速度は瞬間導入速度が人口当たり世界トップクラスに達したとの観測もある。

 安倍内閣は原子力への「依存度を下げる」としている。地すべり現象が始まった。

 福島事故はこのように世界と日本を大きく変えつつある。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る